年々と減少していくガソリンスタンド、EV充電器や水素ステーションのメリットとは

2018年08月13日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

年々と減少していくガソリンスタンド、EV充電器や水素ステーションのメリットとはの写真

国内需要減少が続く中、燃料供給インフラの効率的な維持と次世代化が課題です。「次世代燃料供給インフラ研究会」では、化石燃料や電気、そして水素といった燃料供給インフラの在り⽅について検討が進められており、今回の記事では各々の特徴をまとめます。

年々と減少していくサービスステーションとLPガススタンド

国内の石油製品需要の減少に伴い、ガソリン等を販売するサービスステーション(以下SS)の数は減少傾向にあります。1994年の60421ヵ所をピークに、2016年度末では31467ヵ所と、約半数にまで減少しました。

これらにより、自動車への給油等に支障を来す、いわゆる「SS過疎地問題」が全国的課題となっています。この「SS過疎地」とは、同一市町村内に存在するSSが3ヵ所以下の地域のことです。

2017年度末時点で、「SS過疎地」は全1718市町村のうち、312市町村(約18%)にのぼっています(図1)。SS過疎地化が一層深刻となるのを阻止するため、より根本的な対策を立案・実施していくことが求められています。

SS過疎地市町村数の推移

図1 SS過疎地市町村数の推移

LPガスについても、年々と需要が減少しています。2016年度は10年前と比較し、販売量が約37%減(1570千トン→985千トン)、LPG自動車数は約28%減(291529台→207657台)、LPガススタンド数は約14%減少(1713ヶ所→1458ヶ所)しています(図2)。

LPガス自動車及びLPガススタンド等の推移

図2 LPガス自動車及びLPガススタンド等の推移

SSの減少は、需要減少等の需要側の要因だけでなく、供給設備のコスト負担、人材不足等の供給側の要因によるものも大きいです。全国的な人手不足により、燃料供給の現場においても、人員の確保が困難となっています。

「平成29年度石油製品販売業経営実態調査」によると、SSの廃業理由として供給サイドの要因(設備、人材など)が約6割であり、半数以上を占めています(需要サイドの要因(販売量減少など)は約4割)。そのため、販売量減少だけではなく、供給体制側の要因にも着目し、インフラ維持コストを抜本的に低減していくことが必要です。

SSは災害時における燃料供給拠点として活用でき、東日本大震災や熊本地震においては、災害対応力の高さを発揮し、被災地における住民生活や復旧作業を支えるエネルギー供給の「最後の砦」としての役割を果たしました。これは、分散型であるが故に大規模な供給途絶リスクを回避しやすく、また、燃料による自家発電機などにより一時的に系統による供給を代替できるという機能を有するためです。

また、LPガスはタクシーの主燃料として運輸部門の燃料多様化を担っています。加えて、地方を中心に熱源として大きな役割を持ちます。こうした燃料を最終的に消費者へ届ける燃料供給インフラは、国民生活・産業活動を支えています。

燃料供給事業者が事業の継続を図っていくためには、事業経営の効率化や多角化を進め、生産性を向上させていくことが重要です。IoT等の技術を活用しながら幅広い分野と連携していくことが求められます。

また、IEAの見通しによると、2040年においても内燃機関の世界の乗用車販売台数に占める割合は8割を超えています(ハイブリッド含む)(図3)。この見通しは不確実なものですが、化石燃料の燃料供給インフラを維持していくことの必要性は明らかです。

しかしながら、中長期的には電気、水素等の次世代燃料の普及が見込まれることから、現状のインフラを効率的に維持しつつ、将来の変化に対しても切れ目なく対応していく視点が重要です。

パワートレイン別長期見通し

図3 パワートレイン別長期見通し

SSよりも安価に建設・運営できる急速充電気

JCN(Japan Charge Network Co.,Ltd)によれば、全国には急速充電器が約7000基、普通充電器が約14000基あるといわれています。SSは2016年度末で31467ヵ所のため、既にEV充電器はSSの65%以上もの数が設置されていることとなります。

EVやPHEVの累積販売台数は、2015年~2017年の間、各年度の平均で毎月1.4%~2.5%程増加しており、2017年12月時点の比較では、前年同月比35%増の20.7万台となっています(図4)。

パリ協定などを受け、各国でCO2削減の取り組みが進められており、今後ますますEVの販売台数は増加していくものと考えられます。また、そうした社会の流れに応じ、欧米系カーメーカーを中心にEV、PHEV車種の発売が控えており、魅力的な車両が増えるため、ますますの販売台数増加が見込まれています。

日本におけるEV、PHEVの販売台数累計推移

図4 日本におけるEV、PHEVの販売台数累計推移

電気自動車の充電インフラは設置コストが比較的安価であり、住居、商業施設・公共施設等、人が集まる場所に設置されています。次世代自動車振興センターの資料によると、急速充電器の本体価格は76万円~640 万円程度で、200万円から250万円程度の機種が最も多いです。

急速充電器の設置には、この他に電気配線、電力供給対応、充電器本体据付、充電スペース整備、付帯設備等の項目に渡る設置工事費がかかります。受電設備関連を除いた設置コストは400万円から1000万円超までの開きがあります(図5)。エネルギービジネス戦略研究会の資料によると、通常のガソリンスタンドの建設費が7~8千万円と言われており、急速充電気は10分の1ほどの価格であることが分かります。

ランニングコストでは、電気料金が年間数10万円から100万円程度、保守・保安・保険等が年間30万円程度となっています。特に電気料金では、高圧になるほど固定費(基本料金)の割合が大きいです。

充電器の保守費は主に充電器メーカーやその提携先が提供し、年間20万円程度とされています。電気主任技術者による電気保安業務は、年間数万円程度となります。動産保険の費用は対象や補償額によって異なりますが、年間数千円から1万円程度のサービスが提供されています。

一方で、農協流通研究所の資料によると、SS当りの月間平均総経費は約250万円とされており、年間では3000万円ほどとなります。1ステーションあたりの対応できる車両数やサービスに差はあるものの、急速充電気は年間30万円程度のため、SSの3000万円/年と比較すると、ランニングコストに大きな開きがあることが分かります。

急速充電器設置コスト試算

図5 急速充電器設置コスト試算 出典:次世代自動車振興センター

このように安価な運営が可能なEV充電器ですが、電気はガソリンと比べ安価なため、SSのように電気代のみで収益を得るビジネスモデルは成立が難しいです。

JCNは、現状の補助金及びNCSからの提携利用料では、充電のみのビジネスは成り立たないモデルとしています(図6)。実際、昨年度に新規設置された充電器は、商業施設や道の駅、自治体、大病院など、カスタマーサービスの一環として、設置されているケースのみとしています。そのため今後、急速充電インフラ整備をより一層促進するためには、充電器を設置する事業者側のインセンティブを確保していくことが重要と考えられます。

充電器運用ビジネスモデルの概略図(NCSと一般提携契約をされた場合)

図6 充電器運用ビジネスモデルの概略図(NCSと一般提携契約をされた場合)

建設費用の高い水素ステーション

2016年に発表された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、燃料電池自動車(FCV)と水素ステーションの普及・整備目標数が示されており、水素ステーションは現状、全国で100ヵ所ほどであるものの、2030年には900基程度必要とされています(図7)。

水素ステーションについては、現状では整備コストが高いことなどから、比較的大きな需要が見込まれる四大都市圏等を中心として整備が進んでいます。また、燃料電池自動車は充填時間が短い上、燃料である水素はリチウムイオン電池等の蓄電池に比べて単位当たりのエネルギー密度が大きいため、より大型・長距離輸送向けのモビリティ領域で比較優位性があります。

しかしながら、水素ステーションは建設費用が1カ所で4億~5億円と、ガソリンスタンドよりも5倍ほど高価であり、加えてFCV自体の台数もまだ少なく、事業者も参入しづらい現状があります。そのため、「水素・燃料電池自動車関連規制に関する検討会」で保安監督者やセルフ充填に関する制度設計等の見直しが検討されており、運用合理化が進められていくと期待されます。

「水素基本戦略」(政府方針)のポイント

図7 「水素基本戦略」(政府方針)のポイント

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

韓国初のPMSM搭載車両が運行開始、東芝インフラシステムズが納入、30%以上の省エネにの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年08月01日

新電力ネット運営事務局

韓国初のPMSM搭載車両が運行開始、東芝インフラシステムズが納入、30%以上の省エネに

7月31日、東芝インフラシステムズは、同社が納入したPMSMを採用した新型車両5編成(40両)の運行が、韓国にて開始されたと発表しました。東芝インフラシステムズによると、韓国として初めてのPMSM搭載車両になるとしています。

業界初、フォルクスワーゲンが電気自動車の「充電使いたい放題」プランを提供開始の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年07月13日

新電力ネット運営事務局

業界初、フォルクスワーゲンが電気自動車の「充電使いたい放題」プランを提供開始

フォルクスワーゲン グループ ジャパンは7月、NCS充電ネットワークが使える『Volkswagen 充電カード』を提供開始すると発表しました。NCSネットワークの充電ステーションをお得な料金で利用できるサービスであり、プレミアムプランでは業界初の使い放題プラン(充電)を利用することができます。

太陽光発電で成層圏への到達を目指す有人航空機「SolarStratos」、米SunPower社が参画発表の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年07月05日

新電力ネット運営事務局

太陽光発電で成層圏への到達を目指す有人航空機「SolarStratos」、米SunPower社が参画発表

近年、再生可能エネルギーを航空分野に応用する技術への期待が高まっています。こうした中、米国SunPower社は、「SolarStratos」プロジェクトに参画し、航空機に使用する全ての太陽電池セルを供給すると発表しました。

電気のF1「フォミュラーE」とは、2018年から日産が日系自動車メーカーとして初参戦の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年06月26日

新電力ネット運営事務局

電気のF1「フォミュラーE」とは、2018年から日産が日系自動車メーカーとして初参戦

「フォミュラーE」は、ファンが積極的に参画することのできる、100%電動パワートレインの性能を競い合うグローバルレースです。これまで「フォミュラーE」には、日系自動車メーカーの参戦はありませんでしたが、第5シーズンから日産自動車が初めて参戦すると発表しました。

帝人、創立100周年記念、ソーラーカーによる南極点到達プロジェクトを支援の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年06月15日

新電力ネット運営事務局

帝人、創立100周年記念、ソーラーカーによる南極点到達プロジェクトを支援

帝人は6月、欧州においてソーラーカーにより南極点到達を目指すプロジェクト「Clean 2 Antarctica」(C2A)を支援すると発表しました。本年6月に迎える創立100周年記念プロジェクトの一環であり、5種類の素材・製品を提供しました。