韓国初のPMSM搭載車両が運行開始、東芝インフラシステムズが納入、30%以上の省エネに
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2018年08月01日
一般社団法人エネルギー情報センター

7月31日、東芝インフラシステムズは、同社が納入したPMSMを採用した新型車両5編成(40両)の運行が、韓国にて開始されたと発表しました。東芝インフラシステムズによると、韓国として初めてのPMSM搭載車両になるとしています。
韓国初のPMSM車両が運行開始
鉄道統計年報によると、JRにおける平成27年の電力利用量は約100億kWhであり、その代価として1500億円以上の費用が発生しています。また、運転用の原料として電力は金額ベースで95%近く(軽油約93億円、その他約7千万円)を占めており、鉄道運営において省エネ推進は重要な要素であると考えられます。
鉄道車両の主電動機は,日本では1990年前後から誘導電動機(IM:Induction Motor)が主流となっています。それまで使用されていた直流電動機と比較し、小形・軽量化できるというメリットがあり切り替えが進められてきました。
2000年代後半からは、IMよりも高効率な永久磁石を利用した永久磁石同期電動機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)が採用され始め、東京メトロなどの車両に搭載されています。なお、こうした電車用としてのPMSMは東芝が世界で初めて開発しており、今なお高い技術力を有しています。
こうした中、東芝インフラシステムズは、同社が納入したPMSMを採用した新型車両5編成(40両)の運行が、韓国にて開始されたと発表しました。運行を開始するのは、韓国釜山市の南北を約40kmにわたって縦断する地下鉄1号線の新型車両です(図1)。東芝インフラシステムズによると、韓国として初めてのPMSM搭載車両になるとしています。

図1 釜山地下鉄1号線新型車両 出典:東芝インフラシステムズ
30%以上の消費電力量削減に
東芝インフラシステムズは2006年にPMSMを実用化して以降、海外においてはシンガポールの鉄道事業者であるSMRT(Singapore Mass Rapid Transit)社に既に納入しています。そのため今回の納入は、海外事例としては2件目となります。
今回の件で同社は、車両を製作した現代ロテム社に、宇進産電社経由で納品しています。納品物は、PMSMおよびそれを制御する牽引インバーター用主要部材です(図2)。
同社は、電動機内部の発熱量が減ることから、「全閉自冷式」を採用しています。この結果、低騒音化と内部への塵埃侵入が防止されることによる低保守化を実現しています。なお、今回の主回路システムは、従来のシステムに対して30%以上の消費電力量削減が見込まれています。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年01月13日
ソニー、EVの新会社を設立。モビリティ―とエネルギー、通信業界の融合へ
年始にソニーがEVの新会社を設立することを発表しました。かつて家電メーカーであったソニーは、これまでの事業の特徴や技術を活かしたEVを開発しています。今回は、モビリティ産業を進展させ、エネルギーや通信業界と融合する新しい動きとして、「ソニーモビリティ」に注目していきたいと思います。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年11月05日
活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。
欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界各国によるEVシフトの動きは加速の一途をたどっています。欧米メーカーだけでなく、中国勢もコスト力で存在感を見せています。ASEANやインドなどの新興国市場でもEVで先手を取ろうと各国のメーカーが積極的な動きを示しています。今回は、国内市場で動きが活発化している商用車の電動(EV・FCV)化について最新動向をみていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年03月15日
循環型社会、脱炭素社会を目指す時代の流れとともに、近年、ガソリン車に比べて、参入障壁が低いことから、世界の名だたるIT・ハイテク企業がEVシフトを本格化させようとしています。こうした企業はEVと親和性の高い自動運転の分野で自社の技術を活かすことができます。“新しいモビリティ”としてスマホからEVへのシフトチェンジが起きており、EV市場の覇権争いが激化しています。今回は、世界の動向から日本の異業種参入の事例、そして日本のEV化の課題について考えていきたいと思います。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月31日
2020年9⽉22⽇、米テスラ社が開いた株主総会に伴うイベントで、CEOであるイーロン・マスク氏は、「家庭⽤エアコン事業を来年始めるかもしれない。「より静かで効率が⾼く、省エネ性に優れたエアコンを作れると思う」と発言したことが注目されました。HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入した背景について考えます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月13日
アップル社、2024年に電気自動車(EV)の生産開始を目指す
2020年12月、ロイター通信は米アップルが2024年の電気自動車(EV)の生産開始を目指し、車載電池技術の開発を進めていると報じました。実現すれば、既存の自動車大手にとっては脅威的な存在となるかもしれません。