丸井グループがRE100加盟、ブロックチェーンで再エネ電源のトレーサビリティー確保
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2018年07月19日
一般社団法人エネルギー情報センター
7月10日、丸井グループは国際的イニシアチブ『RE100』に加盟したと発表しました。みんな電力の提供する「ENECT RE100 プラン」のトライアルに参加することで、ブロックチェーン技術により供給元の再エネ発電所の特定を実現するとしています。
丸井グループがRE100加盟、ブロックチェーン活用
丸井グループは1931年の創業以来、小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルを時代の変化、消費者の変化にあわせて進化させ続けてきました。CSRレポートについては2008年から発行しており、2016年から「共創サステナビリティレポート」に改め、未来志向のサステナビリティ経営への第一歩を踏み出しました。
その中の重点取組として、「グループ一体ですすめる環境負荷の低減」があります。再エネの購入等については2014年度までは0であったものの、翌年2015年度には78千kWhと増加しています。その後も数値を伸ばし、2017年度は386千kWhとなりました。
CO2など温室効果ガス排出量については、丸井グループでは2014年3月期より従来のScope1&2に加え、Scope3による算定をスタートしています。これにより、丸井グループは自らの排出量(Scope1&2)だけではなく、原材料の調達~輸送などを含む排出量(Scope3)も把握できるようになり、サプライチェーン全体での環境負荷の見える化を実現しています。なお、2014年3月期から2017年3月期まで、4期連続で減少させる成果を残しています(図1)。
このように環境経営を進める丸井グループが、国際的イニシアチブ『RE100』に加盟したと発表しました。みんな電力の提供する「ENECT RE100 プラン」のトライアルに参加することで、ブロックチェーン技術により供給元の再エネ発電所の特定を実現するとしています。
RE100について
国際的なNGO団体である「The Climate Group」がCDPと連携して推進する国際イニシアチブです。加盟した企業は、遅くとも2050年までに、事業活動で使用される電力の100%を再エネ源から調達するという目標を宣言し、公表することになっています。
ブロックチェーンで非化石証書の電源由来証明を獲得できる可能性
今回、丸井グループはみんな電力の新たなサービス「ENECT RE100 プラン」のトライアルに参加し、再エネ電力サービスの導入を推進します。このサービスは日本で初めて、ブロックチェーン技術により供給元の再エネ発電所の特定を実現するものです。
みんな電力が開発を行うP2P電力取引プラットフォームでは、バランシンググループにおける各発電所の発電量(30分値)をリアルタイムにトークン化します。これを予め定めた優先順位に従って、ブロックチェーン技術を活用して信頼性の高い形で、電力ユーザーの電力消費に配分した結果を記録します。
これによって、各発電所の電力がどのユーザーに消費されたかを個別にトレースできるようになります。また、ブロックチェーンへの記録により、高い信頼性も獲得できます。
プラットフォームでは、「電気トークン」の電力ユーザーへの配分が記録されることとなります。こうすることで、特定の電源で作られた電力をユーザーが消費したことの確認が可能となります(図2)。
ただし、電力そのものは系統に流れ込んで混ざるため、あくまで仮想的に電力消費量と発電量がマッチしていることを確かめる仕組みとなります。みんな電力は、RE100企業が非化石証書の利用に合わせて、電源の由来証明を発行することも可能であると想定しています。今後、非化石証書(再エネ指定)を、FIT電気の再エネ価値を取り戻す手段として有効活用することを検討するとしています。
今回の件について、丸井グループの店舗施設への供給元は、エコ・パワー社が運営する青森県にある3箇所の卒FIT発電所(合計2000kW)が中心です。卒FIT発電所を個別に受給マッチングして供給することで、ゼロエミッション価値を含む再エネ電力としての電力供給が実現します。今回の取り組みにおいて、丸井グループは『RE100』が重視する再エネ電力調達の原則に沿うものと分析しています。
RE100を主宰するCDPの高瀬シニアマネジャーは、今回の取り組みについて「RE100 に加盟している先進企業の多くは、ただ再エネであるということだけでなく、どこの発電所の再エネなのかを重視します。買っている再エネが本当にいい再エネなのか、情報が開示されていることが必須です。みんな電力の今回の取り組みは、日本で電気を選んで買うことについて、電力と別れた証書ではない、リアルな取り組みとして、欧米からみても先進的と言えると思います。」とコメントしました。
RE100以外でP2Pプラットフォームの想定する機能①「個人、企業間での電力直接取引」
販売価格を相対(P2P)で自由に設定して電力を売買することが可能になります。これにより、例えば2019年以降に発生するFIT期限切れ太陽光発電について、所有者はトークンの価格を決めて電気を販売することができます。つまり、電力シェアリングが実現することとなります。
ほかにも蓄電池の所有者によるトークン売買や、EVユーザーのトークン利用による低コスト電気購入などの活用が想定されます(図3)。
RE100以外でP2Pプラットフォームの想定する機能②「電源価値の売買」
電源のKW価値をトークンとして売買することで、将来その電源が発電する電力価値を裏付けに、電源価値そのものを売買できるようになります。これによって、発電事業者は電源の資金調達が容易になると考えられます。
また、電力ユーザーは「電源トークン」を保有することで、将来的に電力購入を一定額で受け取る権利を取得することも可能です。
RE100だけではなくSBT認定も取得
丸井グループは今回のRE100だけではなく、「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」にも認定されたと2018年3月に発表しています。認定された目標は、2030年度までに2016年度比でグループ全体のScope1とScope2の合計を40%削減、Scope3を35%削減するものです。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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