太陽光発電で成層圏への到達を目指す有人航空機「SolarStratos」、米SunPower社が参画発表

2018年07月05日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

太陽光発電で成層圏への到達を目指す有人航空機「SolarStratos」、米SunPower社が参画発表の写真

近年、再生可能エネルギーを航空分野に応用する技術への期待が高まっています。こうした中、米国SunPower社は、「SolarStratos」プロジェクトに参画し、航空機に使用する全ての太陽電池セルを供給すると発表しました。

化石燃料を一滴も用いない有人航空機

国土交通省の航空輸送統計年報によると、2016年度の日本における航空燃料使用量は約100億リットルとなっています。CO2排出量に換算すると約1000万トンとなり、日本全体のCO2排出量の約0.8%となります。また、2011年度の使用量は約76億リットルであり、5年前と比較すると30%ほど使用量が増えています。

国際航空輸送でのCO2排出量は2015年には530百万トンで、全世界で排出されるCO2総排出量の約1.6%となります。これまでも排出量は増加傾向にあり、今後、航空輸送量の伸びに伴ってさらに増加すると予測されます(図1)。

国際航空輸送におけるCO2排出量の推移

図1 国際航空輸送におけるCO2排出量の推移 出典:日本航空機開発協会

航空機のCO2に係る基準の策定については、国際民間航空機関(ICAO)において、段階的に検討が進められてきました。ICAOは、2010年の第37回総会で、先進国も途上国も含めた目標として、2050年まで燃料効率を年率2%改善し、2020年以降CO2排出量を増加させないというグローバル削減目標を決議しました。

2013年の第38回総会では、市場メカニズムを活用した排出量削減制度を2016年中に構築し、2020年から適用する目標を定めました。2016年の第39回 ICAO総会では、191カ国が、国際線の温室効果ガス排出規制の枠組みに合意しました。この合意は、航空機から排出されるCO2を2020年以降増やさない内容で、超過分は各エアラインに排出権購入を義務づけます。

国土交通省の資料によると、日本のエアライン合計の排出権購入量は、2021年の年間十数億円程度から、2035年には年間数百億円程度に増加する見込みです。

こうした背景もあり、再生可能エネルギーを航空分野に応用する技術への期待が高まっています。こうした中、米国SunPower社は、「SolarStratos」プロジェクトに参画し、航空機に使用する全ての太陽電池セルを供給すると発表しました。

「SolarStratos」は、太陽光発電のみで成層圏への到達を目標とする有人航空機です(図2)。2020年までの実現を目指しており、達成すれば世界初の事例となる見込みです。化石燃料を一滴も用いず、民間航空機の標準巡航高度の2倍の高さを飛行することとなります。

プロジェクトの企画者でパイロットでもあるRaphael Domjan氏は、スイスの冒険家です。2012年に太陽光エネルギーだけで世界一周を成し遂げた史上初の船舶である「プラネットソーラープロジェクト」の発起人であり、探査リーダーでもありました。

Domjan氏は、2018年9月に「SolarStratos」の試作機で、高度33000フィートに達する世界記録飛行に初挑戦する予定としています。

SolarStratos

図2 SolarStratos 出典:SunPower

太陽光発電、宇宙服の加圧にも利用

成層圏到達プロセスにおいて、任務は約5時間必要と想定されています(上昇に2時間、高度維持に15分、降下に3時間)。その間、機内は軽量化の関係上で加圧されないため、パイロットは宇宙服の着用が必須です。宇宙服の加圧には、太陽光発電エネルギーが利用されます。

有人飛行のため、エンジンの推力だけではなく、パイロットのコンディションを整えるエネルギーにも太陽光発電は利用されます。

全長 8.5m
翼長 24.8m
重量 450kg。最軽量化のため機内を加圧しないため、パイロットは太陽光エネルギーで加圧される宇宙服の着用が必須。
エンジン 32kWの電気エンジン。EVのエンジンの約1/3のサイズ
エネルギー 22m2のSunPower社Maxeon(R)太陽電池セルを使用。セル当たり22~24%の効率を実現
バッテリー 20kWリチウムイオンバッテリーを1個搭載
自律性 太陽光で自家発電を行うことで、12時間以上にわたり航空機に電力を供給可能

「SolarStratos」の概要

SunPower社の取り組み

SunPower社には、今回のプロジェクトだけではなく、幾つもの先駆的な太陽光プロジェクトで電力供給を行った経験があります。前述の「プラネットソーラープロジェクト」においても、SunPower社のソーラーテクノロジーが搭載されています。

そのほか、1993年に、SunPower社の高効率太陽電池セルがホンダ社のソーラーカーに搭載されています。このソーラーカーは、オーストラリアのダーウィンからアデレードまで走る「ワールドソーラーチャレンジ」において優勝しました。

また、NASAと共同でヘリオス無人ソーラー航空機を開発しており、高度96863フィートへの飛行を実現しました。この無人ソーラー航空機への電力供給にも、SunPower社の高効率太陽電池セルが用いられました。

加えて、1人乗りソーラー航空機である「ソーラーインパルス2」の支援を行い、無燃料での世界一周飛行に成功しました。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

トヨタ自動車、船舶向けの燃料電池を初開発、再エネによる世界一周の航海を支援の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2020年02月13日

新電力ネット運営事務局

トヨタ自動車、船舶向けの燃料電池を初開発、再エネによる世界一周の航海を支援

トヨタ自動車は2月、トヨタの欧州事業を統括するToyota Motor Europeと共同で、燃料電池技術を初めて船舶向けに応用し、再エネで世界一周航海を目指しているフランスの「エナジー・オブザーバー号」向けのFCシステムを開発したと発表しました。

環境省が「木から作る自動車」を公開、2016年に世界初始動したNCVプロジェクトの成果の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年11月11日

新電力ネット運営事務局

環境省が「木から作る自動車」を公開、2016年に世界初始動したNCVプロジェクトの成果

環境省は「東京モーターショー2019」にブースを展開し、木から作る軽量化したコンセプトカーを展示しました。同時に、世界初となるGaNを用いた超省エネルギーコンセプトカーも同時公開しています。

旭タンカーなど4社、EV船の開発に向けe5ラボ設立、2021年半ばまでに「世界初」のゼロエミッションタンカーを目指すの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年08月07日

新電力ネット運営事務局

旭タンカーなど4社、EV船の開発に向けe5ラボ設立、2021年半ばまでに「世界初」のゼロエミッションタンカーを目指す

8月6日、旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井、三菱商事の4社は、電気推進(EV)船の開発、およびEV船を中心とした新しい海運インフラサービスの構築に向けた戦略的提携に合意し、新会社「株式会社e5(イーファイブ)ラボ」を設立したと発表しました。

太陽光の逆潮流をEVで抑制、入札で充電時間シフト、PV出力抑制量を約半減、電力コストは約2割減の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年07月29日

新電力ネット運営事務局

太陽光の逆潮流をEVで抑制、入札で充電時間シフト、PV出力抑制量を約半減、電力コストは約2割減

科学技術振興機構(JST)は、早稲田大学と東京大学の研究グループにより、電気自動車保有者の充電時間帯に着目したオークション式エネルギーマネジメント手法が開発されたと発表しました。

日本初、CO2ゼロの都市型通勤電車が実現、世田谷線の運行が再エネ100%にの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年03月28日

新電力ネット運営事務局

日本初、CO2ゼロの都市型通勤電車が実現、世田谷線の運行が再エネ100%に

東急電鉄は、東北電力、東急パワーサプライの協力により、水力および地熱のみで発電した再生可能エネルギー100%による世田谷線の運行を2019年3月25日から開始すると発表しました。東急電鉄によると、都市型鉄軌道線における、日本初の再エネ100%の電力による通年・全列車の運行になるとしています。