FIT買取終了後のPVとEVの連携、蓄電池の自宅への利用量はEV走行エネルギーの約2倍に
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2018年06月22日
一般社団法人エネルギー情報センター
積水化学工業は6月、VtoH(Vehicle to Home)搭載住宅の実邸における利用実態調査を実施したと発表しました。FIT期間終了後のPV余剰電力の活用策としてEVへの期待が高まる中、EV単体の導入だけでなく、VtoHとあわせて導入することがより有効であるとしています。
積水化学工業、VtoH搭載住宅の実邸における利用実態調査を実施
EVを一般家庭の自家用車として採用した場合、走行のみでは蓄電池の機能をフルに使うことは難しく、大容量蓄電池が十分に活用されているとは言えない状況です。しかし、VtoH導入により住宅とEVの双方向の電力融通をすることで、走行だけでは使い切れなかった電力を住宅で利用することが可能になります。
また、EVは家庭用蓄電池と比べ大容量の蓄電池を搭載していることから、住宅と組み合わせることで経済性の向上が可能です。加えて、災害時の安心安全を確保できるなどのメリットが期待されます。
このVtoHに太陽光発電を組み合わせることで、さらなる経済価値、安心価値の向上が期待できます。太陽光発電については、2019年から発生するFIT期間終了後の設備により、大量の余剰が発生すると目されています。これら大量に発生するFIT切れ太陽光発電については現在、有効な活用策が模索されている所です。
こうした中、積水化学工業は、VtoH搭載住宅の実邸における利用実態調査を実施したと発表しました。FIT期間終了後のPV余剰電力の活用策としてEVへの期待が高まる中、EV単体の導入だけでなく、VtoHとあわせて導入することがより有効であるとしています。
64件の実邸を対象に調査実施
今回の調査は、PVとHEMS、そしてVtoHを搭載している64件の実邸を対象に実施されています。また、「経済モード」と「グリーンモード」といった2種類の運転モードによる検証が行われています。
経済モード
電力単価の安い深夜に充電して、電力単価の高い朝夜に放電することで経済メリットが出る。現時点でほとんど全てのユーザーが利用している。
グリーンモード
PVの余剰電力を充電し、夜間に自宅放電することで電力自給率を高めることができる。PVのFIT買い取り終了後には余剰電力活用策として多数のユーザーの利用が想定される。
まず、「経済モード」運転時のEVの蓄電池の電量利用量は、走行による利用に比べ、自宅での利用が約2.3倍となっています。また、EVが走行しない日が3~4割となる結果になりました。これらから、積水化学工業はVtoHの導入によって、EVの大容量蓄電池をより有効に活用することができるとしています。
また、年間平均では、蓄電残量は容量全体の40~60%となっていますが、これは非常時のバックアップ電源として活用できます(図1)。このようにEVが搭載する大容量蓄電池の能力を十分に活用できることが、VtoHのメリットと言えます。
PVから充電を行う「グリーンモード」運転でも、EV走行による電力利用量の約1.7倍のエネルギーを自宅で利用できる試算結果となりました(図2)。積水化学工業は、FIT期間終了後のPV余剰電力の活用策として、EV単体の導入だけでなくVtoHとあわせて導入することがより有効であるとしています。
ただし、「グリーンモード」運転では、年間平均すると約15~35%の充電機会損失が発生すると予測しています。それは、「悪天候でPVの発電量が不足する」、「EVが昼間不在でPVから充電できない」という要因によるものです。また、蓄電容量が大容量になるほど、機会損失も大きくなる傾向があります。
電力自給率は平均48%、最大では84%に
「グリーンモード」運転では、昼間にPVから充電した電力をEV走行にも利用するため、電力自給率がその分低く算出されます。今回の調査における平均的なモデルでは、電力自給率が48%となりました。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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