海洋エネルギー発電の資源量が分かる「海洋エネルギーポテンシャルマップ」、九州大学など公開
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2018年06月20日
一般社団法人エネルギー情報センター
九州大学は6月、みずほ情報総研や鹿児島大学と協力し、日本の海洋エネルギー発電に資する資源量分布図「海洋エネルギーポテンシャルマップ」を開発したと発表しました。公開されたポテンシャルマップは、「波力発電・潮流発電・海流発電・海洋温度差発電」の4種類が対象となっています。
「波力発電・潮流発電・海流発電・海洋温度差発電」の4種類が対象となるポテンシャルマップ
日本の海洋エネルギー発電技術は、1980年前後から2000年前後まで大規模な実証試験が行われましたが、発電コストや安全性、評価手法などの点で産業化には未だ課題が残ります。しかし、四方を海に囲まれた日本は、世界6位の広大な排他的経済水域を有しており、地波力発電や潮力発電について早期に実用化を図ることが重要です。
そのため日本では、海洋基本法に基づく「海洋基本計画」(2013年4月閣議決定)において、「海洋エネルギー(波力、潮流、海流、海洋温度差等)を活用した発電技術として、40円/kWhの達成を目標とする」旨が記載されています。
こうした海洋エネルギー発電の活用可能性については、NEDOが2009年度に実施した「新エネルギー等の未利用技術・未利用エネルギー等の現状と課題に関する調査」により分析が行われています。
調査の中では、欧米を中心に盛んな研究開発がおこなわれており、新たな産業が創出される可能性が指摘されています。ただし、海洋エネルギー発電技術は未だ実海域での運転実績が少なく、発電原価も高コストという欠点を持ちます。そのため、既存の基幹電力レベルまでコストを低減するには、中長期的な研究開発および実証研究が必要であることが明らかとなりました。
こうした中、九州大学は6月、みずほ情報総研や鹿児島大学と協力し、日本の海洋エネルギー発電に資する資源量分布図「海洋エネルギーポテンシャルマップ」を開発したと発表しました。公開されたポテンシャルマップは、「波力発電・潮流発電・海流発電・海洋温度差発電」の4種類が対象となっています。
みずほ情報総研の役割
今回の「海洋エネルギーポテンシャルマップ」において、みずほ情報総研は調査の企画を行っています。海洋エネルギー発電の資源量評価方法等に関して国際動向を調査するとともに、国内の有望海域に面する自治体と調整を行いました。
また、詳細な海上風データを再現しています。既存波浪観測データの波浪スペクトルとの比較を通じて、銚子沖における波力発電のポテンシャルマップを作成しました。
九州大学の役割
九州大学は、長崎県五島列島周辺の海域等において、潮流発電に関して高分解能のシミュレーションを実施しています(図1)。これにより、潮流観測データによる検証に基づき詳細なポテンシャルマップを作成しました。
また、海流発電に関して高分解能のシミュレーションを実施しています。鹿児島大学の取得した海流観測データ等による検証を行い、詳細なポテンシャルマップを作成しました。
併せて、海流エネルギー推定と同等のシミュレーションを実施し、水温観測データ等による検証を行っています。これにより、海洋温度差発電のポテンシャルマップを作成しました。
鹿児島大学の役割
鹿児島大学は、黒潮を利用した海流発電について、海流エネルギーの時間変動・空間分布を観測しました。特に、潮岬沖では、黒潮の長期的な変動を把握するため、約1年間の長期定点観測を実施し、海流エネルギーの資源特性を把握しました。
NEDO事業の一環として2014年度から2017年度に実施
日本においては、海洋エネルギー発電として、主に波力発電・潮流発電・海流発電・海洋温度差発電の技術開発が行われています。また、一部の発電装置は、実海域に設置され実証試験が行われつつあります。
これら実証試験などにおいて、今回の「海洋エネルギーポテンシャルマップ」が、日本における海洋エネルギー発電の導入促進に貢献することが期待されます。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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