日立造船、国内最大の水素発生装置を開発、メガ級の発電所の余剰電力を貯蔵可能に
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

日立造船は6月、国内最大となる200Nm3/hの水素を製造できる固体高分子型水素発生装置を開発したと発表しました。これにより、メガワット級の発電施設において「Power to Gas」による余剰電力の貯蔵を可能とします。今年度に実証実験を開始し、来年度の販売開始を目指すとしています。
メガクラスの再エネ発電所で「Power to Gas」
大規模なメガソーラーや風力発電所になると、わずかな出力変動でもMWレベルになり、蓄電設備もその規模に対応できる性能が必要とされます。大容量向けとして期待されている蓄電池には例えば、NAS電池、レドックスフロー電池といったものがあります。
NAS電池は、エネルギー密度が高く、電解質が固体のため自己放電がない等の特徴を持ちます。一方で、モジュール電池内部は約300℃となり、火災事故が発生した事例もあるため、特に安全性に対して対策をとるべき蓄電池の1つです。
レドックスフロー電池は、エネルギー密度が低いため小型化は不向きなものの、サイクル数が1万回以上と圧倒的に高いです。また、バナジウムやクロムなど燃焼性の低い物質を使うため、安全性にも優れています(図1)。

図1 各種二次電池の比較 出典:電気学会
再エネの余った電力を貯めておく手段として、蓄電池を使うほかにも「Power to Gas」があります。「Power to Gas」は、再生可能な電力から水素や合成メタンを製造する技術であり、例えば水電解は電力エネルギーにより水を分解して水素を取り出します。
この取り出した水素は、燃やしても水しか生成しないため、クリーンエネルギーとして利用が注目されています。こうした中、日立造船は6月、国内最大となる200Nm3/hの水素を製造できる固体高分子型水素発生装置を開発したと発表しました(図2)。これにより、メガワット級の発電施設において余剰電力の貯蔵を可能とします。今年度に実証実験を開始し、来年度の販売開始を目指すとしています。

図2 装置が入った40フィートコンテナ 出典:日立造船
可搬式のため設置コストが安価
水素発生装置は、風力発電など、再エネによって生み出された電力の余剰分を、水の電気分解により水素として貯蔵することができます(図3)。今回の装置は、国内最大となる200Nm3/hの水素製造能力を有し、メガワット級の電力変換に対応した国内初の製品です。また、高純度の水素(純度99.999%-dry)を製造可能です。
日立造船によると、心臓部である電解槽の大型化に関しては、同社の持つ電解技術とフィルタープレスの技術を融合させることにより、開発に成功したとしています。また、40フィートコンテナに収納した可搬式であり、ボンベの運搬・保管・交換が不要のため、設置コストが安価というメリットを持ちます。

図3 (左)水素製造の仕組み、(右)固体高分子型電解槽 出典:日立造船
2019年度から販売開始の予定
日立造船は、1974年のサンシャイン計画から一貫して水素発生装置の開発に取り組んできました。2000年には水素発生装置「HYDROSPRING」の販売を開始しています。そして今回、水素需要の増加を見据えて大型固体高分子型水素発生装置を開発しました。
今後の予定については、本年度、柏工場において性能確認試験や耐久性試験などの実証実験を行います。そして2019年度から、本格的に販売を開始する予定です。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年10月29日
前編では、ペロブスカイト太陽電池の特性と政策的背景、そして中国・欧州を中心とした世界動向を整理しました。 中編となる今回は、社会実装の要となる耐久性・封止・量産プロセスを中心に、産業戦略の現在地を掘り下げます。ペロブスカイト太陽電池が“都市インフラとしての電源”へ進化するために、どのような技術と制度基盤が求められているのかを整理します。特に日本が得意とする材料科学と製造装置技術の融合が、世界的な量産競争の中でどのように差別化を生み出しているのかを探ります。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年10月27日
中小企業が入れるRE100/CDP/SBTの互換ともいえるエコアクション21、GHGプロトコルに準じた「アドバンスト」を策定
GHGプロトコルに準じた「エコアクション21アドバンスト」が2026年度から開始される見込みです。アドバンストを利用する企業は電力会社の排出係数も加味して環境経営を推進しやすくなるほか、各電力会社側にとっても、環境配慮の経営やプランのマーケティングの幅が広がることが期待されます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年10月18日
日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 【第1回】背景と技術概要 — 何が新しいか/政策・投資の全体像/海外動向との比較
本記事は、2024年公開の「ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット」「ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望」に続く新シリーズです。 耐久性や鉛処理、効率安定化といった技術課題を克服し、いよいよ実装段階に入ったペロブスカイト太陽電池。その社会的インパクトと都市エネルギーへの応用を、全3回にわたって取り上げます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年10月17日
非化石証書(再エネ価値等)の下限/上限価格が引き上げ方向、脱炭素経営・RE100加盟の費用対効果は単価確定後に検証可能となる見込み
9月30日の国の委員会で、非化石証書の下限/上限価格の引き上げについて検討が行われています。脱炭素経営の推進を今後検討している企業等は、引き上げ額が確定した後にコスト検証を実施することが推奨されます。また本記事では、非化石証書の価格形成について内容を見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年09月29日
【第3回】電力小売に導入が検討される「中長期調達義務」とは ——料金・市場構造・投資への影響と導入後の論点—
第1回では制度導入の背景を整理し、第2回では設計の仕組みと現場課題を取り上げました。最終回となる本稿では、中長期調達義務が導入された場合に、料金や市場構造、投資意欲にどのような影響が及ぶのかを展望します。
制度の目的は電力の安定供給を強化し、価格急騰のリスクを抑えることにあります。ただし、調達コストの前倒し負担や市場流動性の低下といった副作用も想定されます。今後は、容量市場や需給調整市場との整合性、データ連携による透明性、新規参入環境の整備といった論点への対応が、制度の実効性を左右することになります。




























