法人向け 家庭向け

自然エネルギー財団、「企業や自治体による自然エネルギー調達ガイドブック」を発行

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

自然エネルギー財団、「企業や自治体による自然エネルギー調達ガイドブック」を発行の写真

近年、欧米の有力企業を中心に再エネ電源の調達が活発化しており、日本でも同様の動きが広がりつつあります。今回、「自然エネルギーの電力を効率的に調達するためのガイドブック」をまとめた自然エネルギー財団の石田雅也氏に、ガイドブックを作成するに至った背景や、日本における再エネ調達の現状をお伺いしました。

ガイドブックを執筆したきっかけを教えてください

自然エネルギー財団 自然エネルギーグループ マネージャー 石田雅也氏

自然エネルギー財団 自然エネルギーグループ マネージャー 石田雅也氏

私共は、自然エネルギーをいかに日本に増やしていくかを念頭に日々活動を展開しています。その中で、企業による自然エネルギーの取り扱いは重要なテーマの一つです。

このテーマに関して、これまで企業や団体に対して再エネ調達手法の提案をするほか、お互いの情報共有も続けてきました。このように長年蓄積してきた情報を整理し、体系的にガイドブックにまとめることによって、より多くの方が自然エネルギーの調達に関心を持つと考えました。これがガイドブック作成の理由の一つです。

もう一つの理由は、複雑多岐にわたる「自然エネルギー電力」の利点や課題、定義などの情報を整理したいと考えたからです。これら2つの理由が、ガイドブック作成のきっかけになっています。

ガイドブックを作る上で、注力したところはありますか

難しいところをなるべく分かりやすく記載し、煩雑にならないよう心がけました。それは、このガイドブックは電力会社向けではなく、企業や自治体向けに作っているからです。電力に関して高度な専門性を有していない方に活用していただくという意識の下、作業を進めてきました。

例えば、グリーン電力証書を使ったときに、CO2排出量はどのように計算するのかという点で、日本では温対法という法律で決まっています。そういったことを厳密に説明すればいくらでも書けますが、厳密にするほど読者の理解が遠のくと考えました。そのため、趣旨を変えない範囲で、できるだけシンプルに書くよう心がけました。

ただ、企業等の環境部門・CSR部門や、エネルギー調達部門を対象にしているため、全く素人という訳でもなく、簡潔すぎると情報不足になります。そのバランスを取ることは、このガイドブックをまとめる過程で非常に注意しながら進めました。

全体としては、できるだけ基本的なところから、実践的なところまで網羅できるよう工夫し、少しずつ発展的に理解していただけるような構成にしました。

自然エネルギー電力の要となる証書やクレジットが不足気味になっていますが、今後も供給が追い付かない市況になるのでしょうか

グリーン電力証書が増えない理由は、FIT適用を受けた発電所が対象にならないからです。ただ、来年度からFITの対象から外れる発電所が増えてくるため、徐々にグリーン電力証書の適用可能性は広がると考えられます。

Jクレジットも同様に、FITの期限が完了した発電所はクレジット化の対象になり得ます。そのため、グリーン電力証書とJクレジットの双方とも、最終的には非FIT電源がどれだけ増えていくかによって、今後の市況が決まると思います。

今後、小売電気事業者はFITを対象にした非化石証書を取り扱うことができるようになりますが、グリーン電力証書やJクレジットと異なり、電源を特定できないといったデメリットを持ちます。そのため、非化石証書を利用した電力の購入に慎重になる企業も多いと考えられます。

Jクレジットとグリーン電力証書の違いを教えてください

グリーン電力証書は、個々の発電設備を認定して、発電量の下で認定書を出す仕組みです。一方でJクレジットは、CO2削減した分をクレジット化し他に売却できる制度です。

例えば、ある企業がCO2を100削減した場合、100のクレジットが売却できるようになります。その100のクレジットを購入した者は、自分たちが排出したCO2 から100削減できるという取引の流れとなります。自然エネルギーで発電し自家消費すると「購入する電力」が減りますが、その購入削減分をクレジットにしていいというルールになっています。

一方で、グリーン電力証書は発電量ベースとなります。つまり、算定法がグリーン電力証書は発電量ベースであるのに対して、Jクレジットは削減量ベースということになります。このような違いはありますが、グリーン電力証書とJクレジットの双方とも、再エネ電源として活用可能であり、CDPも使って良いと認めています。ですから、使い方としては両方とも同じように利用することができます。

グリーン電力証書とJクレジットの両方を使っている企業もあります。それは、発行する方法に差はあるにせよ、自然エネルギーの持つ環境価値の観点では、グリーン電力証書とJクレジットで違いはないからです。

グリーン電力証書とJクレジットの使い分けとしては、例えば地域性のすみ分けが考えられます。特定の地域をターゲットとしている場合、グリーン電力証書では購入できないとしても、Jクレジットであれば対応できるケースも考えられます。

自然エネルギーの調達を考えている企業や団体に求めることはありますか

一番は、難しく考えず自然エネルギーをどんどん使っていってほしいという事です。自然エネルギーを全く使わないのではなく、多少でも自然エネルギーを使っていただきたいです。

例えば、米Appleであれば、環境負荷や追加性を非常に重視しています。ですから、例えば大型水力はアップルの基準からするとNGになります。このような自社ならではの調達基準は、再エネ電力を運用していく中で調整していき、まずはハードルを下げて始めの一歩を踏み出してほしいと思います。

自然エネルギーの調達におけるメリットは、どのようなものがありますか

企業の姿勢をアピールできる部分がメリットの根幹です。もちろん温対法やCDP等に報告する数字が改善するという視点も大事です。ただし欧米の企業は表面的な数値より、「企業としての姿勢」を見せること自体が企業の責任であり、ステークホルダーへの高い評価につながるという考え方がより強いように思われます。

気候変動や環境に配慮しない企業は長期的な成長が難しいという考えの下、ESG投資は運用されます。このESG投資は、世界市場において近年、存在感を増してきています。そのため、環境への配慮度合いは、投資や企業の評判にも影響してきます。

そのほか、今後は企業間の取引を進める過程で、自然エネルギー調達が考慮される可能性があります。例えば、米アップルは自社だけではなく、取引先にも自然エネルギーを使うよう要求するようになりました。

ビジネスは顧客だけではなく、取引先や投資家等との関係の下成り立っています。そうした関係者が、企業に対して自然エネルギーをもっと使うべきだという風潮が高まってきています。そのため、CO2排出係数などの直接的な数字よりも、むしろ企業姿勢のアピールに係る影響のほうが大きいと考えます。企業として、気候変動に対する積極性を社内外に示していくことが一番重要だと考えています。

日本における企業、自治体の自然エネルギー調達を発展させるためには、どのような取り組みが必要でしょうか

日本で一番欠けているのは、自然エネルギーを認証する統一された制度がないことです。グリーン電力証書や、Jクレジット、非化石証書などがありますが、電力を買う側からすると、どれを選択するべきか理解が難しいです。

一方でヨーロッパの場合、EU指令で必ず発電源証明を発行することが義務付けられています。1000kWh発電するごとに、発電所の所在と期間が証明書として残ります。そのため、電力を買った側も、その証明書を得ることで、発電所の情報が分かる仕組みになっています。現状のところ、日本に類似する仕組みはありません。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

統計情報

統計情報(Excel含)

エネルギー関連の統計情報をExcel等にてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 実装課題と産業戦略【第2回】 — 耐久性・封止・量産(ロールtoロール、封止樹脂の要諦)/コスト学習曲線と標準化(NEDO等)/素材・装置のサプライチェーン再構築の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月29日

新電力ネット運営事務局

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 実装課題と産業戦略【第2回】 — 耐久性・封止・量産(ロールtoロール、封止樹脂の要諦)/コスト学習曲線と標準化(NEDO等)/素材・装置のサプライチェーン再構築

前編では、ペロブスカイト太陽電池の特性と政策的背景、そして中国・欧州を中心とした世界動向を整理しました。 中編となる今回は、社会実装の要となる耐久性・封止・量産プロセスを中心に、産業戦略の現在地を掘り下げます。ペロブスカイト太陽電池が“都市インフラとしての電源”へ進化するために、どのような技術と制度基盤が求められているのかを整理します。特に日本が得意とする材料科学と製造装置技術の融合が、世界的な量産競争の中でどのように差別化を生み出しているのかを探ります。

中小企業が入れるRE100/CDP/SBTの互換ともいえるエコアクション21、GHGプロトコルに準じた「アドバンスト」を策定の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月27日

主任研究員 森正旭

中小企業が入れるRE100/CDP/SBTの互換ともいえるエコアクション21、GHGプロトコルに準じた「アドバンスト」を策定

GHGプロトコルに準じた「エコアクション21アドバンスト」が2026年度から開始される見込みです。アドバンストを利用する企業は電力会社の排出係数も加味して環境経営を推進しやすくなるほか、各電力会社側にとっても、環境配慮の経営やプランのマーケティングの幅が広がることが期待されます。

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 【第1回】背景と技術概要 — 何が新しいか/政策・投資の全体像/海外動向との比較の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月18日

新電力ネット運営事務局

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 【第1回】背景と技術概要 — 何が新しいか/政策・投資の全体像/海外動向との比較

本記事は、2024年公開の「ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット」「ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望」に続く新シリーズです。 耐久性や鉛処理、効率安定化といった技術課題を克服し、いよいよ実装段階に入ったペロブスカイト太陽電池。その社会的インパクトと都市エネルギーへの応用を、全3回にわたって取り上げます。

非化石証書(再エネ価値等)の下限/上限価格が引き上げ方向、脱炭素経営・RE100加盟の費用対効果は単価確定後に検証可能となる見込みの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月17日

主任研究員 森正旭

非化石証書(再エネ価値等)の下限/上限価格が引き上げ方向、脱炭素経営・RE100加盟の費用対効果は単価確定後に検証可能となる見込み

9月30日の国の委員会で、非化石証書の下限/上限価格の引き上げについて検討が行われています。脱炭素経営の推進を今後検討している企業等は、引き上げ額が確定した後にコスト検証を実施することが推奨されます。また本記事では、非化石証書の価格形成について内容を見ていきます。

【第3回】電力小売に導入が検討される「中長期調達義務」とは ——料金・市場構造・投資への影響と導入後の論点—の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年09月29日

新電力ネット運営事務局

【第3回】電力小売に導入が検討される「中長期調達義務」とは ——料金・市場構造・投資への影響と導入後の論点—

第1回では制度導入の背景を整理し、第2回では設計の仕組みと現場課題を取り上げました。最終回となる本稿では、中長期調達義務が導入された場合に、料金や市場構造、投資意欲にどのような影響が及ぶのかを展望します。
制度の目的は電力の安定供給を強化し、価格急騰のリスクを抑えることにあります。ただし、調達コストの前倒し負担や市場流動性の低下といった副作用も想定されます。今後は、容量市場や需給調整市場との整合性、データ連携による透明性、新規参入環境の整備といった論点への対応が、制度の実効性を左右することになります。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス