自然エネルギー財団、「企業や自治体による自然エネルギー調達ガイドブック」を発行
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2018年05月14日
一般社団法人エネルギー情報センター
近年、欧米の有力企業を中心に再エネ電源の調達が活発化しており、日本でも同様の動きが広がりつつあります。今回、「自然エネルギーの電力を効率的に調達するためのガイドブック」をまとめた自然エネルギー財団の石田雅也氏に、ガイドブックを作成するに至った背景や、日本における再エネ調達の現状をお伺いしました。
ガイドブックを執筆したきっかけを教えてください
自然エネルギー財団 自然エネルギーグループ マネージャー 石田雅也氏
私共は、自然エネルギーをいかに日本に増やしていくかを念頭に日々活動を展開しています。その中で、企業による自然エネルギーの取り扱いは重要なテーマの一つです。
このテーマに関して、これまで企業や団体に対して再エネ調達手法の提案をするほか、お互いの情報共有も続けてきました。このように長年蓄積してきた情報を整理し、体系的にガイドブックにまとめることによって、より多くの方が自然エネルギーの調達に関心を持つと考えました。これがガイドブック作成の理由の一つです。
もう一つの理由は、複雑多岐にわたる「自然エネルギー電力」の利点や課題、定義などの情報を整理したいと考えたからです。これら2つの理由が、ガイドブック作成のきっかけになっています。
ガイドブックを作る上で、注力したところはありますか
難しいところをなるべく分かりやすく記載し、煩雑にならないよう心がけました。それは、このガイドブックは電力会社向けではなく、企業や自治体向けに作っているからです。電力に関して高度な専門性を有していない方に活用していただくという意識の下、作業を進めてきました。
例えば、グリーン電力証書を使ったときに、CO2排出量はどのように計算するのかという点で、日本では温対法という法律で決まっています。そういったことを厳密に説明すればいくらでも書けますが、厳密にするほど読者の理解が遠のくと考えました。そのため、趣旨を変えない範囲で、できるだけシンプルに書くよう心がけました。
ただ、企業等の環境部門・CSR部門や、エネルギー調達部門を対象にしているため、全く素人という訳でもなく、簡潔すぎると情報不足になります。そのバランスを取ることは、このガイドブックをまとめる過程で非常に注意しながら進めました。
全体としては、できるだけ基本的なところから、実践的なところまで網羅できるよう工夫し、少しずつ発展的に理解していただけるような構成にしました。
自然エネルギー電力の要となる証書やクレジットが不足気味になっていますが、今後も供給が追い付かない市況になるのでしょうか
グリーン電力証書が増えない理由は、FIT適用を受けた発電所が対象にならないからです。ただ、来年度からFITの対象から外れる発電所が増えてくるため、徐々にグリーン電力証書の適用可能性は広がると考えられます。
Jクレジットも同様に、FITの期限が完了した発電所はクレジット化の対象になり得ます。そのため、グリーン電力証書とJクレジットの双方とも、最終的には非FIT電源がどれだけ増えていくかによって、今後の市況が決まると思います。
今後、小売電気事業者はFITを対象にした非化石証書を取り扱うことができるようになりますが、グリーン電力証書やJクレジットと異なり、電源を特定できないといったデメリットを持ちます。そのため、非化石証書を利用した電力の購入に慎重になる企業も多いと考えられます。
Jクレジットとグリーン電力証書の違いを教えてください
グリーン電力証書は、個々の発電設備を認定して、発電量の下で認定書を出す仕組みです。一方でJクレジットは、CO2削減した分をクレジット化し他に売却できる制度です。
例えば、ある企業がCO2を100削減した場合、100のクレジットが売却できるようになります。その100のクレジットを購入した者は、自分たちが排出したCO2 から100削減できるという取引の流れとなります。自然エネルギーで発電し自家消費すると「購入する電力」が減りますが、その購入削減分をクレジットにしていいというルールになっています。
一方で、グリーン電力証書は発電量ベースとなります。つまり、算定法がグリーン電力証書は発電量ベースであるのに対して、Jクレジットは削減量ベースということになります。このような違いはありますが、グリーン電力証書とJクレジットの双方とも、再エネ電源として活用可能であり、CDPも使って良いと認めています。ですから、使い方としては両方とも同じように利用することができます。
グリーン電力証書とJクレジットの両方を使っている企業もあります。それは、発行する方法に差はあるにせよ、自然エネルギーの持つ環境価値の観点では、グリーン電力証書とJクレジットで違いはないからです。
グリーン電力証書とJクレジットの使い分けとしては、例えば地域性のすみ分けが考えられます。特定の地域をターゲットとしている場合、グリーン電力証書では購入できないとしても、Jクレジットであれば対応できるケースも考えられます。
自然エネルギーの調達を考えている企業や団体に求めることはありますか
一番は、難しく考えず自然エネルギーをどんどん使っていってほしいという事です。自然エネルギーを全く使わないのではなく、多少でも自然エネルギーを使っていただきたいです。
例えば、米Appleであれば、環境負荷や追加性を非常に重視しています。ですから、例えば大型水力はアップルの基準からするとNGになります。このような自社ならではの調達基準は、再エネ電力を運用していく中で調整していき、まずはハードルを下げて始めの一歩を踏み出してほしいと思います。
自然エネルギーの調達におけるメリットは、どのようなものがありますか
企業の姿勢をアピールできる部分がメリットの根幹です。もちろん温対法やCDP等に報告する数字が改善するという視点も大事です。ただし欧米の企業は表面的な数値より、「企業としての姿勢」を見せること自体が企業の責任であり、ステークホルダーへの高い評価につながるという考え方がより強いように思われます。
気候変動や環境に配慮しない企業は長期的な成長が難しいという考えの下、ESG投資は運用されます。このESG投資は、世界市場において近年、存在感を増してきています。そのため、環境への配慮度合いは、投資や企業の評判にも影響してきます。
そのほか、今後は企業間の取引を進める過程で、自然エネルギー調達が考慮される可能性があります。例えば、米アップルは自社だけではなく、取引先にも自然エネルギーを使うよう要求するようになりました。
ビジネスは顧客だけではなく、取引先や投資家等との関係の下成り立っています。そうした関係者が、企業に対して自然エネルギーをもっと使うべきだという風潮が高まってきています。そのため、CO2排出係数などの直接的な数字よりも、むしろ企業姿勢のアピールに係る影響のほうが大きいと考えます。企業として、気候変動に対する積極性を社内外に示していくことが一番重要だと考えています。
日本における企業、自治体の自然エネルギー調達を発展させるためには、どのような取り組みが必要でしょうか
日本で一番欠けているのは、自然エネルギーを認証する統一された制度がないことです。グリーン電力証書や、Jクレジット、非化石証書などがありますが、電力を買う側からすると、どれを選択するべきか理解が難しいです。
一方でヨーロッパの場合、EU指令で必ず発電源証明を発行することが義務付けられています。1000kWh発電するごとに、発電所の所在と期間が証明書として残ります。そのため、電力を買った側も、その証明書を得ることで、発電所の情報が分かる仕組みになっています。現状のところ、日本に類似する仕組みはありません。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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