IMO、海運の温室効果ガス「ゼロ」目標、世界初の国際社会による合意

2018年04月16日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

IMO、海運の温室効果ガス「ゼロ」目標、世界初の国際社会による合意の写真

4月13日、国際海事機関(IMO)は、ロンドンで開催中の委員会において、今世紀中に船舶が排出する温室効果ガスの排出ゼロを目指すことで合意したと発表しました。温室効果ガス削減の目標で国際社会が合意するのは、海運分野では初めてのことです。2050年までに排出量を半減(2008年比)させるとの目標を設定しました。

IMO、今世紀中に船舶が排出する温室効果ガスの排出ゼロを目指す

国際海事機関(IMO)は、船舶の安全及び船舶からの海洋汚染の防止等、海事問題に関する国際協力を促進するための国連の専門機関として、1958年に設立されました。これまでのIMOの気候変動に対する国際的な取り組みとして、2011年開催の第62回海洋環境保護委員会(MEPC62)で採用された海洋汚染防止条約附属書VIの改正は大きな転機といえます。

この改正は、エネルギー効率設計指標及び船舶エネルギー効率マネジメント・プランを義務化するものであり、2013年より正式発行しました。2025年までには2014年比で船舶のエネルギー効率を30%向上すると謳っており、国際海運に初めてCO2排出規制が導入されることとなりました。

その後、2016年10月のMEPC70において、燃料消費実績報告制度の義務化が採択されました。船舶の燃料油の消費実績を「見える化」し、省エネ運航を促進することを目的とするものであり、2018年3月より発行されました。

また、MEPC70では、海運業の温室効果ガス削減のための2017年~2023年のロードマップを採択しています。今後IMOが実施すべき研究、活動などが設定されており、2018年には「包括的な温室効果ガス排出削減戦略」が採択されるとロードマップでは示されています。

こうした中、IMOは、ロンドンで開催中の委員会において、今世紀中に船舶が排出する温室効果ガスの排出ゼロを目指すことで合意したと発表しました。温室効果ガス削減の目標で国際社会が合意するのは、海運分野では初めてのことです。2050年までに排出量を半減(2008年比)させるとの目標を設定しました。

IMO第72回会合

IMO第72回会合 出典:IMO

航空分野におけるCO2削減の取り組みを受け、海運においても包括的な温室効果ガス削減戦略を採用

英国ロンドンで開催されたMEPC72では、173の加盟国が、海運の炭素排出量を2050年に少なくとも50%削減(2008年比)する戦略を採用しました。戦略は3つに大別され、一つ目は船舶のエネルギー効率設計指標(EEDI)の向上です。EDDIとは、1トンの貨物を1マイル運ぶのに必要なCO2のことです。

二つ目は、国際船舶のCO2排出量削減です。2050年までに少なくとも40%、2050年までに70%を2008年比で削減するものです。IMOによると、国際海運のCO2排出量は全体の約2.2%を占め、排出削減の対策を取らない場合、2050年までに50〜250%増加するとしています。

そして三つ目が、国際輸送における温室効果ガス排出量(GHG)の削減です。2008年と比較して、2030年までに40%、2050年までに半減することを目標としています。

このGHG排出削減の目標値は、パリ協定の温度目標に沿った数値となります。パリ協定では、工業化以前の水準と比較して、世界の平均気温上昇を少なくとも2度未満に抑え、さらに1.5度に抑える努力追求に言及しています。

パリ協定では、国際海運と航空は明示的には扱われていません。海運会社の国籍と船籍が異なるなど、国際海運分野は割り当て設定が難しいため、パリ協定は国際海運分野を除外し、IMOに協議を任せていました。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

蓄電池×モビリティ 第5回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年02月07日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×モビリティ 第5回

次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

蓄電池×モビリティ 第4回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年01月20日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×モビリティ 第4回

次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

蓄電池×モビリティ 第3回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年01月14日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×モビリティ 第3回

次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

蓄電池×モビリティ 第2回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月12日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×モビリティ 第2回

次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

蓄電池×モビリティ 第1回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月05日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×モビリティ 第1回

次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素