固定価格買取制度、2018年度の大規模太陽光は18円、バイオマスと風力の一部は入札に

2018年02月13日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

固定価格買取制度、2018年度の大規模太陽光は18円、バイオマスと風力の一部は入札にの写真

調達価格等算定委員会が2月に開催され、FIT法による2018年度以降の価格及び期間についての委員長案が示されました。2018年度の太陽光(10kW~2000kW未満)は18円/kWhになり、バイオマスと風力の一部セグメントは入札に移行します。

太陽光発電と風力発電でFIT価格の引き下げ

昨年度、改正FIT法に基づく新制度1年目の検討が実施され、中長期目標を勘案した複数年度の調達価格等の設定や、入札制度の導入が進められました。本年度は新制度2年目であり、委員会による検討に当たっては、各電源について国際水準を目指し、コスト低減に向けた議論が進められました。また、リードタイムの長い電源については、改めて向こう3年間の価格等が検討されました。

FIT制度上、再エネを設置する発電事業者が適正な利潤を得られるよう、発電コストや発電能力を基礎として、価格等が勘案されることとなっています。基本的には、再エネ導入量が増えるにつれて発電コストが下がり、発電所の能力も向上するため、年度が経つにつれFIT価格は下がっていくこととなります。以下にて、本年度の委員会にて変更のあった主な点を見ていきたいと思います。

太陽光発電(10kW~2000kW未満)は21円/kWhから18円/kWに

太陽光発電や風力発電の調達価格は、①資本費(システム費用、土地造成費、接続費用)、②運転維持費、③設備利用率、④IRR(税引前)、⑤調達期間を参考に決定されます。この中で、本年度は①資本費(システム費用)、③設備利用率が昨年度から修正されました

まずシステム費用について、昨年度の委員会においては、2017年度の想定値として、2016年に設置された1000kW以上案件の上位25%水準(24.4万円/kW)が採用されました。上位25%水準である理由は、トップランナー的なアプローチで効率化を促していくためです。

今年度も同様に、2017年に設置された1000kW以上案件の上位25%を分析すると、22.1万円/kWとなっていました。そのため、システム費用は24.4万円/kWから、22.1万円/kWに修正されました。

次に設備利用率ですが、昨年度の委員会では、直近1年間に発電された電力量と個々の設備の認定出力から、各設備の利用率が割り出されました。その上で、効率化を促していく観点から、1000kW以上の平均値15.1%が採用されました。

本年度の想定値については、1000kW以上の上位25%水準(17.1%)が採用されました。そのため、設備利用率は15.1%から、17.1%に修正されました。

このように、システム費用は下がり、設備利用率は向上しているため、発電事業者にとって利潤が生まれやすい設定となっています。そのため、太陽光(10kW~2000kW未満)のFIT価格については、昨年度の21円/kWhから、18円/kWと3円/kwh下落しました(図1)。

太陽光発電(10kW以上)

図1 太陽光発電(10kW~2000kW未満) 出典:経済産業省

再エネ設置者の利潤については、集中的に再生可能エネルギー電気の利用の拡大を図るため、FIT法の施行の日から起算して3年間の利潤配慮期間が設けられていました(図2)。

2015年6月末をもって、法律に基づく利潤配慮期間は終了しましたが、太陽光発電以外は十分に導入が進んでいないことから、「供給量勘案上乗せ措置」として1~2%のIRR上乗せが維持されています。そのため、太陽光発電に限っては、他の再エネ電源と比較してFIT価格が抑えられる傾向にあります。

利潤配慮期間のIRR上乗せ

図2 利潤配慮期間のIRR上乗せ

風力発電は設備利用率が向上

風力発電の設備利用率については、風況等の気象条件による影響を受けることから、年度ごとに多少の変動があり得ます。したがって、今年度・昨年度・一昨年度の委員会で分析に用いた直近の中央値の平均値が参照され、想定値が算出されています。

その結果、2020年度の設備利用率の想定値は25.6%となり、2017年度の24.8%を上回りました。それに伴い、2020年度のFIT価格は18円/kWhとなり、2019年度の19円/kWから1円/kwh下落しました(図3)。なお、20kW未満の風力発電は、2018年度より20kW以上の調達価格等と統合されます。

陸上風力発電

図3 陸上風力発電 出典:経済産業省

なお、リプレース案件については、設備利用率の向上があるものの、2019年度と2020年度の双方ともに16円/kWhと変更なしです(図4)。

陸上風力発電(リプレース)

図4 陸上風力発電(リプレース) 出典:経済産業省

全電源における調達価格・期間

バイオマス発電と風力発電については、新たに入札制度が導入されます。一般木材等(バイオマス液体燃料以外)では、10000kW以上が対象となっています。加えて、バイオマス液体燃料の全規模も入札対象となっています。調達期間は20年間と設定されています。

洋上風力(着床式)については、一般海域の海域利用ルール整備に合わせて、ルールの適用される案件は入札制に移行していきます。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年02月22日

新電力ネット運営事務局

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について

2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月29日

新電力ネット運営事務局

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例

持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とはの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年11月02日

新電力ネット運営事務局

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とは

2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年09月12日

新電力ネット運営事務局

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ

厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるかの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年08月31日

新電力ネット運営事務局

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるか

2030年度目標のCO2排出量2013年度比46%減を実現するために、地方から脱炭素化の動きを加速させています。今回は、事例を交えて脱炭素先行地域の取り組みについて紹介をします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス