「空気呼吸」バッテリーをMITが開発、硫黄や塩など安価な素材で製造、コスト効率は揚水に匹敵

2017年10月17日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

「空気呼吸」バッテリーをMITが開発、硫黄や塩など安価な素材で製造、コスト効率は揚水に匹敵の写真

10月11日、マサチューセッツ工科大学(MIT)が「空気呼吸」をする安価な蓄電池を開発したと発表しました。硫黄、空気、水、塩といった、すべて容易に入手可能な材料から構成されており、化学的コスト(正極、負極、電解質材料)は、リチウムイオン電池といった競合の約10~100分の1です。経済分析によれば、コスト効率はPHSやCAESに匹敵するものになります。

MITが「空気呼吸」をする安価な蓄電池を開発

再エネ発電は気象などにより発電量にバラツキが発生するため、低コストかつ高い拡張性を持つエネルギー貯蔵技術の必要性が高まっています。揚水水力発電(PHS)と地下圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)は、設置コストが100ドル/kWh以下であり、今日最も安価ですが、それぞれが地理的および環境的制約に直面しているため、規模拡大には制限があるといえます。

そうした中、マサチューセッツ工科大学(MIT)が「空気呼吸」をする安価な蓄電池を開発したと発表しました(図1)。硫黄、空気、水、塩といった、すべて容易に入手可能な材料から構成されており、化学的コスト(正極、負極、電解質材料)は、リチウムイオン電池といった競合の約10~100分の1です。経済分析によれば、コスト効率はPHSやCAESに匹敵するものになります。

研究で使用された実験用「空気呼吸」電池セルの設計の1つ

図1 研究で使用された実験用「空気呼吸」電池セルの設計の1つ 出典:MIT

酸素を吐き出す蓄電池

「空気呼吸」バッテリーは、文字通り空気を吸入して吐き出しますが、人のように二酸化炭素ではなく、酸素を吐き出します。陽極の塩溶液が酸素を連続的に取り込んで放出することで、イオンが電極間を往復する際に電荷を均衡させます。陰極においては、再充電可能な流動電池として、水に溶解した硫黄が使用されます。

陽極に流れ込む酸素により、陰極が電子を外部に放電します。逆に、酸素が陽極から流出すると、電子が陽極に戻ることになり、蓄電池が充電されます(図2)。

「空気呼吸」バッテリーの概念

図2 「空気呼吸」バッテリーの概念 出典:ScienceDirect

リチウムイオン電池などの競合と比較して、100分の1の価格になるポテンシャル

2012年にアメリカ合衆国エネルギー省によるエネルギー貯蔵研究が始まり、そこから蓄電池の研究が始まりました。これは5年間のプロジェクトで、約180名の研究者が省エネルギー技術の共同研究に参加するものです。MIT教授のChiang氏は、グリッド規模の大規模なエネルギー貯蔵コストを削減できる、効率的な電池の開発に重点的に取り組むこととなりました。

Chiang氏は、これまで過去数十年にわたる電池の大きな問題は、エネルギー密度の向上に焦点を当て、高価な材料を合成していた点であるといいます。例えば、携帯電話用などで利用されるリチウムイオン電池では、1キロワット時あたり約100ドルの化学的コスト(正極、負極、電解質材料)が必要です。

研究において、テラワット規模のエネルギー貯蔵を望むなら、豊富に存在する材料を使用する必要がありました。その点で、今回の蓄電池は硫黄・空気・水・塩で製造可能であり、いずれも容易に入手可能です。硫黄については、例えば化石燃料生産の副産物として、幅広い地域で安価に得られます。

MITによると、低コストの材料を使用しているため、化学的コスト(正極、負極、電解質材料)は、これまでの蓄電池の中で最も安い水準であるとしています。現在の一般的な蓄電池における化学物質のコストは、概ね10〜100ドル/kWh程度です(図3)。

一方で、今回の蓄電池では、ポリ硫化ナトリウムを利用することで、科学的コストを約1ドル/kWhに抑えることができます。そのため、リチウムイオン電池などの競合電池と比較して、約10~100分の1の水準となるポテンシャルがあります。

導入年度別、代表的な二次電池の貯蔵コスト

図3 導入年度別、代表的な二次電池の貯蔵コスト 出典:ScienceDirect

今回の蓄電池について、エネルギー密度については、鉛蓄電池の2倍のエネルギーを蓄えることができますが、リチウムイオン電池よりわずかに低いです。グリッド規模の蓄電において競合となるのが揚水型水力発電ですが、今回の蓄電池はエネルギー密度が揚水の500倍以上です。また、揚水発電は地理上の制約がありますが、蓄電池は非常にコンパクトであり、あらゆる場所に設置可能です。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

グローバル規模で進む温暖化対策、注目される技術やこれからの新規事業の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年07月24日

新電力ネット運営事務局

グローバル規模で進む温暖化対策、注目される技術やこれからの新規事業

経済産業省は7月、「平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査」を公表しました。パリ協定によりグローバル規模で温暖化対策が求められていますが、注目技術や新規事業について見ていきます。

注目が集まるデジタル技術の活用、 エナリスが進める電力×デジタルの取り組みの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年07月02日

新電力ネット運営事務局

注目が集まるデジタル技術の活用、 エナリスが進める電力×デジタルの取り組み

技術進歩が「電力×デジタル」の価値を日々高める中、ブロックチェーン活用への期待が高まっています。今回の記事では、「ブロックチェーンを活用した電力取引サービス」の検証を進めている株式会社エナリスの南昇氏と盛次隆宏氏に話を聞きます。

海洋エネルギー発電の資源量が分かる「海洋エネルギーポテンシャルマップ」、九州大学など公開の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年06月20日

新電力ネット運営事務局

海洋エネルギー発電の資源量が分かる「海洋エネルギーポテンシャルマップ」、九州大学など公開

九州大学は6月、みずほ情報総研や鹿児島大学と協力し、日本の海洋エネルギー発電に資する資源量分布図「海洋エネルギーポテンシャルマップ」を開発したと発表しました。公開されたポテンシャルマップは、「波力発電・潮流発電・海流発電・海洋温度差発電」の4種類が対象となっています。

数秒で充電が可能な3D螺旋構造の蓄電池、米コーネル大学発表の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年05月25日

新電力ネット運営事務局

数秒で充電が可能な3D螺旋構造の蓄電池、米コーネル大学発表

米コーネル大学は5月、数秒でフル充電が可能な蓄電アーキテクチャを開発したと発表しました。アノード、カソード、セパレータを自己集合性の3D螺旋構造とすることで、構造をナノスケールに縮小し電力密度を大幅に高めています。

パナソニック創業100周年、「無電化ソリューションプロジェクト」開始の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2018年04月24日

新電力ネット運営事務局

パナソニック創業100周年、「無電化ソリューションプロジェクト」開始

パナソニックは4月、社会貢献活動の一環として創業100周年を機に、電気の知識などの啓発・教育の実践と商品寄贈を組み合わせた「無電化ソリューションプロジェクト」を開始したと発表しました。十分な電力供給がない地域に対して、太陽光発電などの寄贈に加え、人材育成や地場産業モデルの開発などが行われます。