電気自動車で世界記録、1078kmの連続走行を達成、米Tesla社の「Model S」
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2017年08月18日
一般社団法人エネルギー情報センター

8月4日、米Tesla社の公式オーナー団体である「Tesla Owners Club ITALY」は、電気自動車による連続走行距離の世界新記録を樹立したと発表しました。充電することなく1078kmを走行し、これまでの世界記録である901.2kmより約170km長い距離の走行を達成しました。
航続距離が課題の電気自動車、ユーザーが求めるのは320km以上
電気自動車のスペックにおいて重要な指標の一つに、航続距離があります。「2015年次世代車に関する消費者意識調査結果」によると、2010年以降の一貫した傾向として、ユーザーが求めるEV航続距離は320km以上となっています(図1)。
一方で、現在のところ、30kWhの電池を搭載するリーフ(日産)の航続距離は280km、16kWhの電池を搭載するi-MiEV(三菱)の航続距離は172kmです。そのため、ユーザーの求める320kmに届いておらず、更なる電気自動車の普及には航続距離の伸長が重要といえます。
図1 EVの期待航続距離 出典: Deloitte Tohmatsu Consulting
充電なしで1000kmの連続走行を達成、世界記録を樹立
そうした中、米Tesla社の公式オーナー団体である「Tesla Owners Club ITALY」は、電気自動車による連続走行距離の世界新記録を樹立したと発表しました。充電することなく1078kmを走行し、これまでの世界記録である901.2kmより約170km長い距離の走行を達成しました。
記録を樹立したEVは、米Tesla社の「Model S」です。複数あるバリエーションの中で、上級グレードの「100D」が用いられました。
イタリア南部のSalerno郊外道路にて満充電状態から走行を始め、途中で充電することなく走り続けたところ、29時間かけて世界記録を樹立する結果となりました(図2)。
図2 連続走行の世界記録 出典:Tesla Owners Club ITALY
平均時速40kmで走行、オートパイロットによる半自動運転モードも活用
長距離走行の工夫としてエアコンは使用せず、低抵抗タイヤを装着し、平均時速40kmで走行を続けました。また、無駄な加減速をなくすため、可能な限りオートパイロットによる半自動運転モードが利用されました。
運転者は「Tesla Owners Club ITALY」に所属する5人のメンバーであり、運転者を交代しながらの走行となりました。運転手の一人であるRosario Pingaro氏によると、「半自動運転は時速40kmで走り続けるサポートをしながら、車線中央の位置を維持してくれた」といいます。また、記録を正式のものとするため、第三者の公証人が立ち会いました。
電力の消費量については、98.4kWhを消費しており、その電力は95%の効率で動力に変換できたとしています。効率的なガソリン車が30%程度の変換効率であることと比較すると、3倍以上の効率を実現する結果となりました。
イーロン・マスクがTwitterで祝福
今回の件について、Tesla社の会長兼CEOを務めるElon Musk氏はTwitterで、「一度の充電で1000km以上を走行した、正式記録として残る最初の量産EVだ」と祝福の言葉を述べました。
Officially verified as the first production electric car to exceed 1000km on a single charge! Congratulations Tesla Owners Italia!! https://t.co/r8fFZIFEP2
— Elon Musk (@elonmusk) 2017年8月5日
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年11月05日
活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。
欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界各国によるEVシフトの動きは加速の一途をたどっています。欧米メーカーだけでなく、中国勢もコスト力で存在感を見せています。ASEANやインドなどの新興国市場でもEVで先手を取ろうと各国のメーカーが積極的な動きを示しています。今回は、国内市場で動きが活発化している商用車の電動(EV・FCV)化について最新動向をみていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年03月15日
循環型社会、脱炭素社会を目指す時代の流れとともに、近年、ガソリン車に比べて、参入障壁が低いことから、世界の名だたるIT・ハイテク企業がEVシフトを本格化させようとしています。こうした企業はEVと親和性の高い自動運転の分野で自社の技術を活かすことができます。“新しいモビリティ”としてスマホからEVへのシフトチェンジが起きており、EV市場の覇権争いが激化しています。今回は、世界の動向から日本の異業種参入の事例、そして日本のEV化の課題について考えていきたいと思います。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月31日
2020年9⽉22⽇、米テスラ社が開いた株主総会に伴うイベントで、CEOであるイーロン・マスク氏は、「家庭⽤エアコン事業を来年始めるかもしれない。「より静かで効率が⾼く、省エネ性に優れたエアコンを作れると思う」と発言したことが注目されました。HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入した背景について考えます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月13日
アップル社、2024年に電気自動車(EV)の生産開始を目指す
2020年12月、ロイター通信は米アップルが2024年の電気自動車(EV)の生産開始を目指し、車載電池技術の開発を進めていると報じました。実現すれば、既存の自動車大手にとっては脅威的な存在となるかもしれません。
一般社団法人エネルギー情報センター
2020年04月07日
電気自動車による気候変動対策、世界の約95%のエリアで効果的、ケンブリッジ大学など発表
エクセター、ナイメーヘン、ケンブリッジ大学は3月、電気自動車への移行により世界の95%のエリアで脱炭素化が実現するとの最新の研究結果を発表しました。研究では発電方法の違いを考慮して、世界を59の地域に分割した上で詳細なシミュレーションが行われました。