競争活性につながるベースロード電源市場、2019年度の開始時は約560億kWhの想定
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一般社団法人エネルギー情報センター

7月26日、電力・ガス事業分科会が開催され、その中でベースロード電源市場について議論が展開されました。本コラムでは、常時バックアップや部分供給からの移行が検討されているベースロード電源市場の概要について見ていきます。
2019年度から始まるベースロード電源市場
電力システム改革の3つの目的は、①安定供給の確保、②電気料金の最大限の抑制、③事業者の事業機会及び需要家の選択肢の拡大です。これに加えて、3E+Sを、事業者の経済合理的な行動を通じてより効率的に達成する観点から、今後も必要な市場等を整備することは重要です。
そのため、2016年の電力システム改革貫徹のための政策小委員会によって、ベースロード電源市場や容量市場、非化石価値取引市場などの新たな市場等を整備することが決定されました。ベースロード電源に関しては、2019年に市場取引が開始されることで、旧一般電気事業者と新電力のイコールフッティングが図られます(図1)。そうすることにより、更なる小売競争の活性化を実現することが期待されています。

図1 制度改正のスケジュール・予定 出典:経済産業省
これまで、旧一般電気事業者は、自社で保有等する限界費用の高い余剰電源(ミドル・ピーク電源)を中心に、卸電力取引所等に投入してきました。一方で、限界費用が安いベースロード電源については、経済合理的な判断の下、自らで利用していました。つまり、自主的取組の一環である、電発電源(石炭火力)の切出しについては、現在まであまり進んできませんでした。
つまり、石炭火力や大型水力、原子力等の安価なベースロード電源については、大手電力会社が大部分を保有しており、新電力のアクセスは極めて限定的な現状があります。
その結果、新電力はベースロード需要をLNG等のミドルロード電源で対応せざるを得ず、大手電力会社と比して十分な競争力を有しない状況が生じています。このため、新電力も大規模なベースロード電源へアクセスすることを容易とするための新たな市場として、ベースロード電源市場が創設されることとなります。これにより、旧一般電気事業者等は、発電した電気の一部を、適正な価格でベースロード電源市場に供出する必要が出てきます(図2)。

図2 電気の流れ(イメージ) 出典:経済産業省
ベースロード電源市場の海外事例
ベースロード電源市場と同趣旨の制度目的を掲げる海外事例としては、フランスのARENHがあります(図3)。電力の売り手EDFとなり、一方で買い手は小売事業者や送配電事業者となります。取引量は最大年間1000億kWhであり、原子力発電発電量の約25%に相当します。
取引価格については、既存原子力発電所の費用を踏まえた固定価格であり、2012年1月までは40€/MWh,それ以降は42€/MWhで推移しています。

図3 ARENHの枠組み 出典:経済産業省
開始当初の市場規模は約560億kWhの想定
ベースロード電源市場の規模については、開始当初は、新電力等の総需要に対して中長期的なベースロード比率(例:長期エネルギー需給見通しの比率)と同量を、旧一般電気事業者等が供出することが想定されています。
開始当初の2019年度の試算値としては、総需要を15年度実績の8300億kWhと置き、新電力等の割合を12%、ベースロード比率を56%とすると、「約8300億kWh×12%×56%」となります。新電力等の割合12%は、足下の新電力への離脱率(約9%)が年1%で伸張すると仮定したものです。
つまり、ベースロード電源市場の規模は2019年度の開始時点で「約560億kWh」と推定されます(図4)。実際の取引に関しては、各々の買い手に購入枠を設定する等の事前規制を設けることも検討されます。

図4 当初の全体供出量(イメージ) 出典:経済産業省
常時バックアップとベースロード電源市場の代替性
常時バックアップは、ベースロード電源代替という点で、ベースロード電源市場と政策目的が重複します。そのため、常時バックアップの取引量等を、ベースロード電源市場における供出量及び購入枠から控除することが検討されます。
ただ、常時バックアップの利用率は一定ではなく、スポット価格と比べて常時バックアップ単価が安い時は上昇し、高い時は低下の傾向があります(図5)。そのため、常時バックアップの利用者は、同制度を必ずしもベースロード電源代替として利用していない現状があります。
また、スポット市場(最低取引単位:1000kW)では十分需給調整ができない小規模事業者にとっては、引き続き常時バックアップの仕組みが必要との意見もあります。そのため、今後の常時バックアップの在り方については、事業者が足下どのような運用を行っているかの分析を進めつつ、検討を深めることが重要とされています。

図5 常時BUの単価と利用率、スポット平均価格の関係性 出典:経済産業省
部分供給とベースロード電源市場の代替性
部分供給の契約電力の算定方法や託送料金の取り扱いについては、「部分供給に関する指針」によって平成24年12月に定められました。その結果、部分供給に関する販売電力量は年々増加しており、平成27年度は全供給電力量のうち、約1.4%の電力が部分供給に関連して旧一般電気事業者及び新電力から販売されることとなりました。また、件数に関しても伸びており、平成28年9月末時点で約2万2千件に達しました(図6)。
このように増加している部分供給について、ベースロード電源市場創設後は、新電力が部分供給の需要に対して、自ら電力供給することが可能となると考えられています。そのため、新電力が部分供給を活用する必要は薄れるのではないか、とされています。
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