清水建設と産総研、太陽光発電で水素を製造、スマートBEMSでの最適な制御を目指す

2017年06月15日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

清水建設と産総研、太陽光発電で水素を製造、スマートBEMSでの最適な制御を目指すの写真

6月1日、清水建設は産業技術総合研究所と共同で、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの本格的な実証運転を開始すると発表しました。清水建設の開発したBEMSが、建物の電力・熱需要データや太陽光発電の状況を勘案することで、最適な制御技術の確立が図られます。

2016年2月にスタートした共同研究、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの実証運転が開始

水素利活用技術の適用可能性は幅広く、既に実用化段階にある定置用燃料電池やFCVだけでなく、船舶や鉄道等を含む運輸分野、水素発電など、数多くの潜在的な可能性があります。

また、2017年4月に開催された再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議での総理指示において、「生産から輸送、消費に至る国際的な水素サプライチェーンの構築を牽引するのは、大量かつ安定的な水素需要を生む水素発電です。サプライチェーンの構築と水素発電の本格導入に向けて、多様な関係者の連携の基礎となる共通シナリオを策定してください。」というものがあります。

上記の指示にある水素発電に関しては、2016年3⽉に改訂された水素・燃料電池戦略ロードマップにおいて、2030年以降に本格導入するというシナリオが描かれています(図1)。そのほか、福島新エネ社会構想においては、再エネを用いた大規模水素製造実証が五輪で活用される見込みです。また、今後は水素発電とセットで必要になるサプライチェーン開発への民間投資を促す働きかけも見込まれます。

⽔素・燃料電池戦略ロードマップの概要

図1 ⽔素・燃料電池戦略ロードマップの概要 出典:経済産業省

このように水素に注目が集まる中、清水建設は産業技術総合研究所と共同で、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの本格的な実証運転を開始すると発表しました。システムは、2014年4月に開所された福島再生可能エネルギー研究所(FREA)内に建設されています(図2)。今回のシステムは2017年6月1日から運転を開始しており、計画では2018年3月まで実証運転が行われます。その間、システムの性能が検証されるとともに、清水建設が開発したスマートBEMSによる最適な制御技術の確立が図られます。

2016年2月にスタートした今回の共同研究では、約10カ月に及ぶ開発・設計期間を経て、同年11月に実証システムの建設に着手、2017年4月に完成しました。その後、個々の設備機器の性能が評価され、2017年5月からはシステムの準備運転が実施されてきました。

FREA内に建設した水素エネルギー利用システム

図2 FREA内に建設した水素エネルギー利用システム 出典:清水建設

シミズ・スマートBEMSが監視・制御

水素エネルギー利用システムは、①余剰電力で水を電気分解して水素を製造、②水素吸蔵合金により水素を貯蔵、③水素を放出して酸素との化学反応により電気と熱を取り出す、といったものです。水素吸蔵合金とは、冷却や加圧で水素を吸収し、加熱や減圧により水素を放出するものです。水素をガスボンベに高圧貯蔵するのにくらべ、安全性が高く、簡単に貯蔵できる特徴があります。

今回の実証システムは、太陽光発電装置(出力20kW)、水電解装置(5Nm3/h)、水素貯蔵装置(約40Nm3)、燃料電池(出力3.5kW)、蓄電池(出力:10kW)からなっています。延床1000m2程度の建物利用に特化したシステム構成となり、これらの機器は、順次容量が増えていく予定です。水素貯蔵装置については、産業技術総合研究所が知見を蓄積してきた水素吸蔵合金をベースに構築されています。

実証運転にあたっては、清水建設の「シミズ・スマートBEMS」が、実際の建物の電力・熱需要データに基づきながら水素の製造、貯蔵、放出等を監視・制御します。この監視・制御については、太陽光発電の発電状況も勘案されます(図3)。

清水建設は、約10ヶ月に及ぶ実証運転を通して、最適な制御技術を確立する、としています。加えて、2020年までに建物、街区への導入を目指すとしています。水素社会に対応できる建物付帯型のコンパクトで安全な水素エネルギー利用システムが開発されることが期待されます。

水素エネルギー利用システムの概念図

図3 水素エネルギー利用システムの概念図 出典:清水建設

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

ほぼ100%の変換効率へ、省エネかつ長寿命なディスプレイ、ケンブリッジ大学が発見の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年04月19日

新電力ネット運営事務局

ほぼ100%の変換効率へ、省エネかつ長寿命なディスプレイ、ケンブリッジ大学が発見

3月30日、ケンブリッジ大学はイースト・アングリア大学、東フィンランド大学とのチームにおいて、変換効率がほぼ100%のディスプレイを開発したと発表しました。分子を回転させるこの新技術により、これまでより明るく・省エネでかつ長寿命なポテンシャルを実現します。

日本初、排出権などの「環境価値」と「ネガワット」の私設取引プラットフォームが創設予定の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年03月30日

新電力ネット運営事務局

日本初、排出権などの「環境価値」と「ネガワット」の私設取引プラットフォームが創設予定

3月27日、楽天はグローバルエンジニアリングと協力し、排出権などの「環境価値」と「ネガワット」の私設取引プラットフォーム創設に向け、共同で取り組むことに合意したと発表しました。国内では初の事例となり、取引活性化や各分野におけるイノベーティブな技術の導入促進を目的としています。

中国電力、「石炭灰」製品を販売拡大するため体制強化、緑化基盤材や土壌改良材などに活用の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年03月15日

新電力ネット運営事務局

中国電力、「石炭灰」製品を販売拡大するため体制強化、緑化基盤材や土壌改良材などに活用

3月15日、中国電力は石炭火力発電所から発生する「石炭灰」を活用した製品の製造・営業・販売を、グループ会社である「中国高圧コンクリート工業」へ移管したと発表しました。中国電力グループとして、さらなる販売拡大を目指すための体制強化を行った形となります。

異業種からの参入事例、三菱商事とローソンが立ち上げた新電力「MCリテルエナジー」の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年11月24日

新電力ネット運営事務局

異業種からの参入事例、三菱商事とローソンが立ち上げた新電力「MCリテルエナジー」

前回のコラムでは、異業種から電力小売りに参入した企業によるビジネスの概要をみてきました。今回は、異業種から電力小売りに参入した実際の事例として「MCリテールエナジー」をご紹介したいと思います。

「じぶん電力」、プラン契約者が自分で再エネ電力の発電と利用をする仕組みの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年08月08日

新電力ネット運営事務局

「じぶん電力」、プラン契約者が自分で再エネ電力の発電と利用をする仕組み

前回のコラムでは、新電力会社における環境配慮について見てきました。今回のコラムでは、日本エコシステムによる「じぶん電力」を参考に、電気料金プランによって再生可能エネルギーの普及を促す事例について見ていきたいと思います。