清水建設と産総研、太陽光発電で水素を製造、スマートBEMSでの最適な制御を目指す
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6月1日、清水建設は産業技術総合研究所と共同で、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの本格的な実証運転を開始すると発表しました。清水建設の開発したBEMSが、建物の電力・熱需要データや太陽光発電の状況を勘案することで、最適な制御技術の確立が図られます。
2016年2月にスタートした共同研究、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの実証運転が開始
水素利活用技術の適用可能性は幅広く、既に実用化段階にある定置用燃料電池やFCVだけでなく、船舶や鉄道等を含む運輸分野、水素発電など、数多くの潜在的な可能性があります。
また、2017年4月に開催された再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議での総理指示において、「生産から輸送、消費に至る国際的な水素サプライチェーンの構築を牽引するのは、大量かつ安定的な水素需要を生む水素発電です。サプライチェーンの構築と水素発電の本格導入に向けて、多様な関係者の連携の基礎となる共通シナリオを策定してください。」というものがあります。
上記の指示にある水素発電に関しては、2016年3⽉に改訂された水素・燃料電池戦略ロードマップにおいて、2030年以降に本格導入するというシナリオが描かれています(図1)。そのほか、福島新エネ社会構想においては、再エネを用いた大規模水素製造実証が五輪で活用される見込みです。また、今後は水素発電とセットで必要になるサプライチェーン開発への民間投資を促す働きかけも見込まれます。

図1 ⽔素・燃料電池戦略ロードマップの概要 出典:経済産業省
このように水素に注目が集まる中、清水建設は産業技術総合研究所と共同で、建物付帯型の水素エネルギー利用システムの本格的な実証運転を開始すると発表しました。システムは、2014年4月に開所された福島再生可能エネルギー研究所(FREA)内に建設されています(図2)。今回のシステムは2017年6月1日から運転を開始しており、計画では2018年3月まで実証運転が行われます。その間、システムの性能が検証されるとともに、清水建設が開発したスマートBEMSによる最適な制御技術の確立が図られます。
2016年2月にスタートした今回の共同研究では、約10カ月に及ぶ開発・設計期間を経て、同年11月に実証システムの建設に着手、2017年4月に完成しました。その後、個々の設備機器の性能が評価され、2017年5月からはシステムの準備運転が実施されてきました。

図2 FREA内に建設した水素エネルギー利用システム 出典:清水建設
シミズ・スマートBEMSが監視・制御
水素エネルギー利用システムは、①余剰電力で水を電気分解して水素を製造、②水素吸蔵合金により水素を貯蔵、③水素を放出して酸素との化学反応により電気と熱を取り出す、といったものです。水素吸蔵合金とは、冷却や加圧で水素を吸収し、加熱や減圧により水素を放出するものです。水素をガスボンベに高圧貯蔵するのにくらべ、安全性が高く、簡単に貯蔵できる特徴があります。
今回の実証システムは、太陽光発電装置(出力20kW)、水電解装置(5Nm3/h)、水素貯蔵装置(約40Nm3)、燃料電池(出力3.5kW)、蓄電池(出力:10kW)からなっています。延床1000m2程度の建物利用に特化したシステム構成となり、これらの機器は、順次容量が増えていく予定です。水素貯蔵装置については、産業技術総合研究所が知見を蓄積してきた水素吸蔵合金をベースに構築されています。
実証運転にあたっては、清水建設の「シミズ・スマートBEMS」が、実際の建物の電力・熱需要データに基づきながら水素の製造、貯蔵、放出等を監視・制御します。この監視・制御については、太陽光発電の発電状況も勘案されます(図3)。
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