平成28年度の新エネ大賞決定、IHIと新日鐵住金による高比率バイオマス混焼の火力発電などが受賞
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2017年02月23日
一般社団法人エネルギー情報センター
2月15日、平成28年度の新エネ大賞表彰式が東京ビッグサイトにて開催されました。経済産業大臣賞1件、資源エネルギー庁長官賞2件、新エネルギー財団会長賞4件、審査委員長特別賞1件の合計8件が選ばれ、賞状と副賞(楯)の授与が行われました。
平成28年度の新エネ対象が決定
新エネルギー財団は、新エネルギー機器・システムの開発の促進と一層の導入拡大を図ることを目的に、平成8年度から「21世紀型新エネルギー機器等表彰制度」(新エネ大賞 旧名称:新エネバンガード21)を実施しています。新エネ大賞は、新エネルギーに係る商品及び新エネルギーの導入、あるいは普及啓発活動を広く募集し、そのうち優れたものを表彰するものです。これまでに196件の優れた案件が表彰され、先導的な事例として新エネルギー等の普及促進に大きな役割を果たしてきました。
今回、第20回目となる平成28年度の新エネ大賞の授賞式が、2月15日に東京ビックサイトにて執り行われました。平成28年度では、経済産業大臣賞1件、資源エネルギー庁長官賞2件、新エネルギー財団会長賞4件、審査委員長特別賞1件の合計8件が受賞することとなりました。
経済産業大臣賞
資源エネルギー庁長官賞
新エネルギー財団会長賞
- 太陽光発電出力推定・予測システムの電力系統運用業務への導入について
- 市民共同発電所事業による再生可能エネルギー普及促進と収益の地域還元の実践
- 自立型水素エネルギー供給システム H2One
- 全国初 「とちぎ小水力発電! 基礎データマップ」 の構築・公開
審査委員長特別賞
経済産業大臣賞はIHIと新日鐵住金による高比率バイオマス混焼の火力発電
国内微粉炭火力におけるバイオマス混焼拡大への先進的な取り組み
IHIは新日鐵住金と連携し、商用火力発電設備(微粉炭火力発電、149MW)を用いて、国内最大規模の高比率バイオマス混焼(木質ペレット、熱量比25%、重量比33%)を達成しました。これまでは一般的に、熱量比3%未満の混焼率にとどまっていましたが、それを25%まで引き上げた形です。既設ミル等の軽微な改造により、混焼率を飛躍的に高めることに成功しました(図1)。
また、新日鐵住金は林業関係者と連携して広範囲から大量の木質バイオマス資源の調達を行うとともに、地元企業と共同でバイオマス調達のための法人を設立しています。これにより、地元雇用を創出しながら継続的な事業を実施しており、森林系バイオマスの有効活用、導入拡大に貢献しています。
この高効率バイオマス混焼の特徴として、既設石炭火力設備に対しても、軽微な改造で高比率混焼が可能な部分が挙げられます。そうすることで、既存火力発電の大幅なCO2排出削減が期待できるものできます。今後、既設火力発電への適用による大幅なCO2排出削減効果や、森林系バイオマスの導入拡大が期待できる先進的な取組みとして高く評価されました。
図1 「国内微粉炭火力におけるバイオマス混焼拡大への先進的な取り組み」の概要 出典:新エネルギー財団
資源エネルギー庁長官賞は2件が受賞
駅舎補助電源装置(S-EIV : Station Energy Saving Inverter)
駅舎補助電源装置(S-EIV)は、未利用エネルギーである余剰回生エネルギーの活用を図るもので、駅の照明・空調・等の電源として用いられます。電力変換装置は次世代半導体(SiC)を搭載し、電力損失の低減化を図っています。また、小さな駅にも設置できるよう小型軽量化が取り組まれており、今後の鉄道事業への展開が期待できる取組みとして高く評価されました(図2)。
図2 「駅舎補助電源装置」の概要 出典:新エネルギー財団
多目的ダムの維持放流水を活用した町営二川小水力発電所の取り組み
既設の小水力発電(最大出力199kW、有効落差35.4m)を導入した、全国にも例がない町営の発電所における取り組みが受賞しました。特に、建設に際しての持分負担額に関する見直しにより、町営の発電所が実現できたことについての先行事例として高く評価されました(図3)。
図3 「多目的ダムの維持放流水を活用した町営二川小水力発電所の取り組み」の概要 出典:新エネルギー財団
新エネルギー財団会長賞は4件が受賞
太陽光発電出力推定・予測システムの電力系統運用業務への導入について
太陽光発電の出力現在値推定・短時間先予測システムを電力系統運用業務に活用している事例が受賞しました。このシステムは、衛星画像を活用した日射量短時間予測システム「アポロン」が利用されています。これにより、太陽光発電が大量連系された状況においても、安定した電力供給を行いやすくなります。本システムは、日射計を用いないで雲画像から日射量を予測する先進的な事例であり、実際の電力系統運用業務に活用されています。今後、他地域での展開が期待できる取組みとして評価されました(図4)。
図4 「太陽光発電出力推定・予測システムの電力系統運用業務への導入について」の概要 出典:新エネルギー財団
市民共同発電所事業による再生可能エネルギー普及促進と収益の地域還元の実践
全額市民からの出資により、公共施設の屋根・遊休地に市民共同発電所(太陽光発電3基、出力計167kW)を設置した事例が受賞しました。売電収益によって、出資者への配当や普及活動及び地域還元を積極的に行っています。定年退職後のメンバーが活動主体となっており、幅広い市民を対象に充実した普及活動を実施しています。今後ますます高齢化が進む日本の課題解決に向けての一つのモデルとなり、特にそうした部分が評価されました(図5)。
図5 「市民共同発電所事業による再生可能エネルギー普及促進と収益の地域還元の実践」の概要 出典:新エネルギー財団
自立型水素エネルギー供給システム H2One
この「自立型水素エネルギー供給システム H2One」は、日本で初めてとなる、水素エネルギー供給システムの商品化となります。太陽光発電装置、蓄電池、水電解装置、水素貯蔵タンク、燃料電池などから構成される、CO2フリーな自立型水素エネルギー供給システムです。太陽光などの再生可能エネルギーと水だけで24時間、365日、天候によらず安定的に電気と温水を供給できます。今後の水素社会の実現に向けたデモンストレーションとして評価されました(図6)。
図6 「自立型水素エネルギー供給システム H2One」の概要 出典:新エネルギー財団
全国初 「とちぎ小水力発電! 基礎データマップ」 の構築・公開
「とちぎ小水力発電! 基礎データマップ」 は、民間事業者等の小水力発電の導入を促すため、事業導入の検討に必要な情報をインターネットで閲覧できるシステムです。県ホームページ上で公開しており、河川の流量情報や制約条件などを集約し一つのシステムで提供するのは、全国初の事例となります。小水力発電事業に必要とされるきめ細かな情報が網羅されており、また、アクセス件数も非常に多いです。事業検討する際の基礎情報を入手するツールとして有効に活用されていることが評価されました(図7)。
図7 「全国初 「とちぎ小水力発電! 基礎データマップ」 の構築・公開」の概要 出典:新エネルギー財団
審査委員長特別賞は1件が受賞
「北海道開拓おかき」 製造工場からの廃食油を利用したバイオマス発電機の導入
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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