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原発の賠償費用が標準家庭で18 円/月の負担増に、期間は2020年から2060年までの40年間

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原発の賠償費用が標準家庭で18 円/月の負担増に、期間は2020年から2060年までの40年間の写真

2月9日、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」において、原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方が提示されました。全ての需要家から公平に回収する過去分の額が約2.4 兆円と算出され、標準家庭では18 円/月を40年間かけて負担する計算となります。

原発の過去分における賠償の備え、3.8兆円との算出結果

東京電力福島第一原子力発電所の事故後、原子力事故に係る賠償への備えとして、新たに原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下、「原賠機構法」)が制定されました。現在、同法に基づき、原子力事業者は毎年一定額(2015年度は約1600億円)の一般負担金を納付しています。

このような状況の下で、2016年4月に電力小売が全面自由化されました。そうすると、原子力事業者ではない新電力へ契約を切り替えた需要家は、一般負担金を負担しない形となります。このような背景を踏まえ、需要家間の公平性等の観点から、1F事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの負担の在り方について、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」により検討が行われました。

ここで問題となってくるのが、過去分の「原子力事故に係る賠償への備え」における費用負担の考え方です。国内で初めての商用原発である「東海発電所」が1966年に稼働してから、2011年の原賠機構法の制定までの45年間、どのようなスキームで負担が発生するのかといった議論がなされました。

まず、過去分の45年間の金額算定については、現行の一般負担金の算定方式を前提とすることが適当とされました。具体的には、まずkW辺りの単価を求めます。2015年度における一般負担金は約1600億円であり、設備容量は1.5億kWであるため、KWあたりの単価は約1070円となります。その1070円に、45年間の累積設備容量35億kWを乗じると、3.8兆円という金額が算出されます。つまり、商業用の原発稼働から原賠機構法の45年間における一般負担金は、総額で3.8兆円ということとなります(図1)。

過去分の規模

図1 過去分の規模 出典:経済産業省

2020年から一般負担金の回収を開始、1kWh当たりの負担額が0.07円増

過去分における一般負担金の改修は直ちに実施されるわけではなく、小売規制料金が原則撤廃される2020年度から開始される見込みです。2019年度までに納付される一般負担金は、小売規制料金の残る限定的な競争環境下で回収されるため、概ね全ての需要家から回収されるとの考え方に基づきます。

そうすると、原賠機構法が制定された2011年から2019年までの間、どのように負担金が処理されるのか、といった問題が出てきます。この間について納付される一般負担金については、全需要家から回収する過去分と同様のものとして扱われ、過去分の総額から控除する形が取られます。これはつまり、2011年から2019年までの負担金が約1.3兆円(2015 年度と同条件で設定されると仮定)ですので、その金額が45年間の負担額である3.8兆円から控除される仕組みとなります。1966~2011年の負担金である3.8兆円から、2011~2019年までの1.3兆円が控除され、最終的な過去分の一般負担金は約2.4兆円となる計算です(図2)。この一般負担金2.4兆円は託送料金に組み込まれる見込みです。

現行規制法上、原発の稼働期間が原則40年であることを踏まえると、回収期間も同様に40年間であることが妥当であると考えられています。一般負担金の総額2.4兆(円)から、原発の稼働期間である40(年間)を除すると、年間当たりの負担は600億円となります。このとき、1kWh当たりの託送費用への負担額は0.07円となりますので、標準家庭(260kWh)では月間で18円の負担増となります。また、2020年から40年間をかけて負担が始まりますので、2060年までの期間で継続される見込みです。

全ての需要家から公平に回収する過去分のイメージ

図2 全ての需要家から公平に回収する過去分のイメージ 出典:経済産業省

過去分の一般負担金額、今後の変動はなし

今回の過去分における一般負担回収は、これまでの事故への備えの不備により生じた準備不足分について、自由化を契機として一定の仮定の下でその規模を特定したものです。このうち、全ての需要家から公平に回収する分の総額の上限が上述のように2.4兆円となり、これは今後、変動が生じる性格のものではありません。福島原発事故に関する費用負担の試算は、これまで膨れ上がっていますが、今回算出された2.4兆円と算出された金額は一定であるとの形となります。

賠償費用の総額は22兆円見込み、東京電力が16兆円の負担

2011年の福島原発事故において、賠償や廃炉事業、そして電力の安定供給が損なわれることのないよう、あくまで福島の責任は東京電力が負うことを基本としています。国は原子力損害賠償支援機構(現 原子力損害賠償・廃炉等支援機構。)を2011年に設立、東京電力に出資(1 兆円)と賠償の一時的援助(5 兆円)を行うこととしました。国は、実施した一時的支援をある程度時間をかけて回収する中で、東京電力は廃炉や負担金の納付について、自らの経営改革で資金を捻出し、その責任を全うすることとなりました。

2013年の段階で、除染が本格化し、中間貯蔵事業も具体化、廃炉事業も抜本的な汚染水対策を講ずることとなりました。賠償・除染に関する原賠機構による一時的支援総額は5兆円から9兆円に拡大し、廃炉・汚染水対策に要する資金見込みも1兆円から2兆円にその規模が拡大しました。

そして2016年、廃炉事業は、燃料デブリの取り出しという新工程を視野にいれた検討に移ります。このためには、従来の2兆円とは別に、追加の資金を準備するステージが到来します。賠償や除染に関しては、営業損害や風評被害の継続、作業費用の増大などを背景に、確保すべき資金が増大しています。

このように費用が膨れ上がり、現在、廃炉、賠償、除染・中間貯蔵等の福島原発事故に関連して確保すべき資金は約22兆円と見込まれています。総額約22兆円のうち、東京電力が捻出する資金は約16兆円と試算されています。東京電力は、数十年単位で対処する賠償・廃炉については、その所要資金として年間0.5兆円規模の資金を確保する必要があります。加えて、除染に関しては、より長い時間軸の中で、企業価値向上による株式売却益4兆円相当を実現する経営改革が必須となります。

22兆円の内訳としては、廃炉が8兆円、賠償が8兆円、除染が6兆円となります(図3)。廃炉の8兆円については、東京電力が全ての責任を負います。除染については、東京電力と国が責任を負う形です。今回の過去分の一般負担金における議論は賠償の部分であり、この過去分における負担額が2.4兆円となります。新電力のシェア10%を前提とすれば、新電力負担の上限は総額で2400億円(0.24兆円)であり、原子力発電所の稼働機関である40年で除すると60億円/年となります。

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