電力自由化におけるEDIの活用、スイッチングや計画データ提出を効率化
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2016年06月01日
一般社団法人エネルギー情報センター

電力小売りの全面自由化に伴い多方面の事業者が参入、電力を未経験の企業であっても効率的にオペレーションを回す必要が出てきました。そこで、EDI最大手のデータ・アプリケーションの方々に、EDIを使った電力業務の効率化について話を伺います。
事務処理コストの低減、顧客サービスの向上を実現するEDIとは
EDI(Electronic Data Interchange)とは、コンピュータとコンピュータをネットワーク経由で接続し、人を介さず標準化された方式でデータを交換、業務を自動連係させる仕組みの事です。企業がEDIを導入すると、業務上やり取りする商取引情報を、人手を介さず互いのコンピュータで直接処理できます。
EDI導入の利点として、手入力によるミス防止や、事務処理スピードの向上などが挙げられます。購買、発注、物流、経理など広範な作業において効率化を実現でき、かつ商品の売り手・買い手の双方にとってメリットのある環境を整えられます(図1)。
図1 EDIにおける業務効率化・メリット 出典:データ・アプリケーション
10電力の託送業務においてもEDIを利用
10電力における託送業務では、EDIをベースとした仕組みである「ACMS」が利用されています。ACMSは、EDI最大手のデータ・アプリケーションが提供するツールであり、電力業務の効率化において有効なソリューションを提供します。
データ・アプリケーションによる託送業務支援の歴史は長く、2006年の高圧部門における計画値提出支援に始まります。その後、2009年からは10電力会社の託送業務にもACMSが順次導入され、システムの洗練を継続してきました。
2016年4月から始まった電力小売りの全面自由化においても、これまでのノウハウを生かしたソリューションを着実に準備、ACMSに組み込んでいます。多方面の電力参入においても事業効率化できるツールとして展開しており、本コラムではその概要をデータ・アプリケーションの方々に伺います(図2)。
図2 データ・アプリケーションの西川氏と福本氏
電力業務のデータ処理を一元管理するACMS
電力業務においては、日常において各種のデータ処理を実施する必要があります。EDIを活用したACMSはそうしたデータ処理を効率化し、入力ミスなどを排する特徴を持っています。
データ・アプリケーション 営業本部 エグゼクティブコンサルタント 西川茂彦氏
データ・アプリケーション 営業本部・エグゼクティブコンサルタントの西川茂彦氏は、「電力業務においては非常に多岐かつ膨大なデータを処理する必要があり、それらの効率化・安定化の実現は重要な課題である。データ処理は日常的に高い頻度で行うため、やり方を間違えるとデータの誤入力などを招くリスクがある。そうしたミスが続くと金銭上の損失に繋がるだけではなく、行政指導が入る可能性も考えられる。
そういったリスクは、ビジネス上の工夫や努力において回避可能であり、その手段の一つとしてEDIを活用したACMSは非常に有効である。また、経済的メリットの生まれる健全な経営には事業効率化が不可欠であるが、そうした面でもACMSは効果がある。」と述べます。
新電力企業は、業務を遂行する上で必ず電力広域的運営推進機関に加入し、各種データを提出する必要があります。同機関は、新電力企業から提出されたデータに基づき、託送業務とスイッチング支援を日々行っています(図3)。同機関へ提出するべきデータは多岐にわたりますが、ACMSはあらゆるフォーマットに対応、煩雑な業務を一元管理します。下記にて、ACMSが提供するソリューションについて、その概要を見ていきます。
図3 電力広域的運営推進機関の2つの業務 出典:データ・アプリケーション
計画データ提出における4つの手法
新電力事業者においては、電力の需給など広範な計画データを、電力広域的運営推進機関に毎日提出する必要があります。もし計画の修正が入ってしまった場合は、30分コマの1時間前までに訂正データを提出する必要があり、さらに頻繁なやりとりが必要となります。
計画データの提出においては、①WEB入力、②ファイルアップロード、③JX手順、④Web-APIという4つの手法があります。それぞれの手法において長所と短所があり、その内容を概観します。
①Web入力と②ファイルアップロードは、手入力により計画データを提出する方式です。初期費用に優れる反面、ヒューマンエラーによる提出漏れなどが発生する場合があり、リスクの高い手法となります。
③JX手順、④Web-APIは、システムにより計画データを提出する方式です。データ・アプリケーションの提供するACMSはJX手順に則ったものであり、電力広域的運営推進機関においては前提ソフトウェアとしてウェブページに記載、長年の実績と安定性があるパッケージとなります。④Web-APIに関しては、新電力が自社でシステムを一から開発する必要があり、システムの信頼性や安定性、初期費用といった面でのハードルが高い特徴があります(図4)。
図4 計画データの提出方法 出典:データ・アプリケーション
多岐にわたる提出するべき計画データの類型
提出が必要な計画データは多岐にわたり、小売電気事業者の場合は、発電計画、需給計画、需要・調達計画、連系線希望計画、連系線等利用計画となります(図5)。計画データの提出に不備があると、インバランスを増大させるほか、最終的には行政指導が入るケースも考えられます。
img src=”http://pps-net.org/wp-content/uploads/2016/06/19a51ea17a3356580a4f6c3a5b2ab6ef.png” alt=”提出義務のある計画データの種類” width=”730″ height=”462″ class=”aligncenter size-full wp-image-12327″ />
図5 提出義務のある計画データの種類 出典:データ・アプリケーション
電力スイッチングの際にも電力広域的運営推進機関への提出が必要
スイッチングとは、需要者による電力会社の切り替えの事です。スイッチングが発生した際、新電力企業は電力広域的運営推進機関へのデータ提出が必要となります(図6)。スイッチングにおける業務を支援するシステムとしても、ACMSは活用可能となります。
図6 スイッチング支援システムの概要 出典:広域的運営推進機関
家庭向けの小売りでは必要性の高い自動連係
スイッチング支援システムは、①Web直接入力の方法と、②Web-APIの2種類があります。ACMSにおいては、②Web-APIを活用して自動化を実現します。
①Web直接入力は手作業によるデータ作成となりますが、特に家庭向けにおいては数千・数万件にもスイッチングが及ぶ可能性があり、入力ミスを0にすることは困難です。一方で、②Web-APIはシステムが自動でスイッチング業務を代行してくれるので、安定性の向上・業務効率化に寄与します(図7)。
図7 スイッチング支援システムとの連携方法 出典:データ・アプリケーション
計画値同時同量制度におけるデータ取り込み
計画値同時同量制度とは、新電力企業が30分毎に需要計画(もしく発電計画)と需要実績(もしくは発電実績)を一致させるように調整を行なう制度であり、2016年4月1日より施行されました。そのため、新電力各社は、30分電力量および確定使用量の取込を実施する必要があります(図8)。そこでも、ACMSを利用すると効率化を実現することが可能となります。
図8 計画値同時同量制度の概要 出典:電力広域的運営推進機関
30分電力量および確定使用量の取り込みでは2種類の手法
30分電力量および確定使用量の取り込みを実施する方法として、①Webブラウザによる手動取込と、②プログラムによる自動取込の2種類があります。ACMSにおいては、②プログラムによる自動取り込みを用いて効率化を実現します。
Webブラウザによる手動取込では、ブラウザを用意するだけでデータを取り込むことが可能となりますが、手入力のためミスが発生する可能性があります。一方で、②プログラムによる自動取り込みは、初期の導入作業が必要となりますが、システムによる安定運用が可能となります(図9)。
図9 30分電力量および確定使用量の取込方法 出典:データ・アプリケーション
電力広域的運営推進機関へのあらゆるデータ処理をACMSは効率化
これまで見てきたように、ACMSは託送業務やスイッチング、同時同量といった業務を効率化し、安定した業務運用を可能とします。電力広域的運営推進機関に提出する、あらゆるデータに対応しており、一元管理できる機能を持っています(図10)。
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執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
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