電力自由化から一ヶ月、新電力切替は約82万件、各地域の趨勢を見る
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2016年05月10日
一般社団法人エネルギー情報センター
5月10日、電力広域的運営推進機関は4月30日時点で約82万件が新電力への切り替えを申請したと発表しました。全国における家庭部門の電力契約数は約7800万件のため、電力自由化が始まってから一ヶ月間で、全体の約1%が電力会社を切り替えた計算となります。
電力自由化から1ヶ月、約82万件が切り替え申請
送配電網の整備や需給調整機能を強化することを目的に設立された「電力広域的運営推進機関」の発表によると、4月1日の電力自由化が始まって1ヶ月後の4月30日時点で、切り替え申請の件数が約82万件に達しました。
自由化が始まった当初(4月1日)は約55万件の切り替え申請数であったため、1か月間で1.5倍近く(約27万件)伸長しています。堅調に切り替え申請数を伸ばしておりますが、自由化が始まる前の事前受け付けの段階と比較すると、伸びは鈍化しております。
自由化が始まる前、3月4日の時点では約3万件の切り替え申請数であったのに対し、4月1日では前述のとおり約55万件となっておりました。約1ヶ月(3月4日~4月1日)で18倍以上(約52万件)伸長しておりしたが、自由化後の1ヶ月間(4月1日~4月30日)は1.5倍(約27万件)となっているので、勢いは若干落ち着いてきているといえます(図1)。
図1 切り替え申込件数の合計値(10電力) 出典:電力広域的運営推進機関資料より作成
電力会社別に見ると、東京電力が全体の6割以上の申請数
10電力管内で最も切り替え申請数が多いのは、東京電力の約52万件であり、全体の6割以上です。次に関西電力の約18万件、中部電力の約4万件と続きます。下記のグラフを見ると分かりやすいですが、切り替えの大半を東京電力と関西電力が占めており、両方を合わせると全体の約85%の割合となります(図2)。
図2 10電力管内における切り替え申込件数の推移 出典:電力広域的運営推進機関資料より作成
沖縄電力管内は切り替え0に留まる
切り替え申請数が最も少ないのは、沖縄電力であり0件となります。沖縄電力管内に関しては、新電力による新規参入が見られず、自由化による恩恵を受けづらい環境となっております。沖縄電力の次に切り替え件数が少ないのは、北陸電力の1700件、そして中国電力の1900件と続きます(表1)。
管内 | スイッチング支援システムを通じたスイッチング申込件数【単位:千件】 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3月4日時点 | 3月11日時点 | 3月18日時点 | 3月25日時点 | 3月31日時点 | 4月1日時点 | 4月8日時点 | 4月15日時点 | 4月22日時点 | 4月30日時点 | |
北海道電力 | 0.7 | 7.8 | 12 | 17.2 | 19.8 | 20.4 | 23.7 | 27.5 | 30.9 | 33.8 |
東北電力 | 0.1 | 2.4 | 4.9 | 6.1 | 7.6 | 7.8 | 9 | 10.2 | 11 | 12.3 |
東京電力 | 20.6 | 49.7 | 142.1 | 221.8 | 315.2 | 332.2 | 394.9 | 429.7 | 466.6 | 518.1 |
中部電力 | 2.3 | 6.9 | 10.8 | 16.1 | 20.1 | 20.6 | 25.1 | 31.4 | 37.1 | 43.1 |
北陸電力 | 0.1 | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | 1.1 | 1.2 | 1.5 | 1.5 | 1.7 |
関西電力 | 11.8 | 32 | 66.7 | 103.5 | 132 | 134.5 | 149.5 | 160.5 | 172.3 | 182.7 |
中国電力 | 0 | 0 | 0.1 | 0.1 | 0.4 | 0.5 | 1.2 | 1.4 | 1.6 | 1.9 |
四国電力 | 0.2 | 1 | 1.3 | 1.7 | 2 | 2 | 2.2 | 2.3 | 2.7 | 2.9 |
九州電力 | 0.7 | 4.9 | 8.3 | 11 | 13.1 | 13.5 | 15.9 | 18.5 | 20.7 | 23 |
沖縄電力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 36.5 | 105.3 | 246.9 | 378.4 | 511.3 | 532.6 | 622.7 | 683 | 744.4 | 819.5 |
表1 各電力管内における切り替え申請数 出典:電力広域的運営推進機関資料より作成
全体に対する切り替え割合も東京電力管内が最多で約2%
東京電力管内は、一般家庭の契約数も多く約2700万件となっており、10電力の中で最多です。そのため市場も最も大きく、商業用も合算すると約3兆円にも上るため、新電力の参入も多いです。かつ、全体に対する切り替え申請割合も約2%と最も高いため、電力自由化の影響を最も受けている地域だと考えられます。
一方で、沖縄電力を除くと、最も切り替え割合が少ないのは中国電力管内であり、約0.04%です。時点で北陸電力(0.09%)、四国電力(0,11%)と続きます(表2)。地域の市場自体が小さく、かつ自由化前から電気料金が安い地域においては切り替えが進みにくい傾向にあると考えられます。
市場規模(億円) | 契約数(万件) | 新電力乗換 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
一般家庭部門 | 商店、事業所等 | 合計 | 乗換件数(万件) | 乗換割合(%) | ||
北海道電力 | 3,393 | 363 | 40 | 403 | 3.38 | 0.93 |
東北電力 | 7,310 | 694 | 81 | 775 | 1.23 | 0.18 |
東京電力 | 28,275 | 2,723 | 198 | 2,922 | 51.81 | 1.90 |
中部電力 | 10,162 | 959 | 106 | 1,065 | 4.31 | 0.45 |
北陸電力 | 1,903 | 189 | 22 | 212 | 0.17 | 0.09 |
関西電力 | 12,779 | 1,262 | 101 | 1,364 | 18.27 | 1.45 |
中国電力 | 4,686 | 482 | 45 | 527 | 0.19 | 0.04 |
四国電力 | 2,557 | 253 | 34 | 286 | 0.29 | 0.11 |
九州電力 | 7,670 | 787 | 84 | 871 | 2.3 | 0.29 |
沖縄電力 | 1,453 | 83 | 6 | 89 | 0 | 0.00 |
合計 | 80,187 | 7,795 | 718 | 8,513 | 81.95 | 1.05 |
表2 各電力管内における市場規模・契約母数・乗換件数 出典:電力広域的運営推進機関と資源エネルギー庁資料より作成
全体としては約1%が切り替えの実施
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年02月22日
4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について
2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年12月29日
持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年11月02日
2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年09月12日
電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ
厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年08月31日
“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるか
2030年度目標のCO2排出量2013年度比46%減を実現するために、地方から脱炭素化の動きを加速させています。今回は、事例を交えて脱炭素先行地域の取り組みについて紹介をします。