蓄電池×モビリティ 第6回

2024年02月14日

一般社団法人エネルギー情報センター

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次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

EV市場の今後と将来予測

車載用電池の市場規模は家庭用・住宅用蓄電池の市場規模よりも遥かに大きく、エコカー減税などの優遇税制もあり、その市場規模は2000億円程度に達しています。今後、技術開発が進むにつれ、さらに市場規模は拡大するでしょう。

調査会社大手の富士経済によると、2018年のEVの世界市場は2017年比71%増の130万台でした。走行距離400km以上の車種が登場し、ガソリン車の燃料補給と同程度の頻度の充電で走行できるようになったことも市場拡大を後押ししました。

EV普及のスピードについては、自動車メーカーがどれくらいEVへのビジネス転換を積極的に推進するかにかかっていますが、もちろん蓄電池技術の進歩も重要な要素です。

2035年にEVの世界市場(新車販売台数)は、2018年比16・9倍の2202万台に拡大。中国やドイツを中心とした欧州で伸び、先行するHVの市場規模を2021年に上回ると予測されています。最大市場は中国で、2035年時点で世界市場全体の約5割を占めるのではないかと予測されています。

2035年のEV市場を地域別にみると、最大市場の中国が2018年比13・7倍の1056万台に、欧州が2018年比32・1倍の674万台になる見通しです。一方、PHVもやはり中国や欧州がけん引し、2035年の市場規模は2018年比17・8倍の1103万台と予測されています。

近年、多くのEV新モデルラインアップの発表がありましたが、今後順調にいけば、2025年までにEVのモデル数は400を超え、2500万台のEVが販売されることになります。

EVモデルの拡大に最も積極的なのはVWグループで、2025年までに80車種のEVモデルを販売する予定だそうです。一方、トヨタ、ルノー・日産・三菱アライアンス、BMW、ダイムラー、ゼネラルモーターズ(以降GM)なども、EV、PHV等において、2023年までに多くの新モデル販売を計画しています。

Bloomberg New Energy Financeの調査によると、2040年までに世界のEV販売台数は4100万台になると予測されています。この数字から計算すると、EVが新車の小型乗用車販売で35%のシェアを占め、道路を走る車の約4分の1がEVになるという計算になります。

現在、多くの自動車メーカーは、多額の開発費がかかる割に販売台数の少ないEVから利益を出すのが難しい状況にあるといわれています。しかし、バッテリーのコスト低下に伴い、2025年前後にはEVの価格が内燃自動車の価格と同レベルまで下がり、EVの販売利益率も内燃自動車と同レベルになると予想されています。

また、今後ビジネスチャンスが広がるのは中国市場だといわれています。現在VWグループやGMは、世界での自動車販売の約4割が中国における販売です。今後EV事業を中国市場でどう展開していくかが、EVメーカーにとって大きな課題の一つでしょう。

主要自動車メーカーの電動化計画

最後に、主要自動車メーカーが発表しているEV、HVに関する計画をまとめておきます。

トヨタは、2020年代前半にEVモデル数を10車種以上に拡大。2030年にEV/FCV(燃料電池自動車)を100万台以上発売する予定だそうです。電動車全体で550万台以上を予想しています。ホンダは、2030年に自動車の70%弱を電動車両(EV、PHEV、HV、FCV)にする予定です。ルノー・日産・三菱アライアンスは、2022年までにEVを12車種投入し、グループ年間販売台数100万代以上を電動車にする予定です。

韓国の現代(ヒュンダイ)自動車は、2025年までに14車種のEVを投入予定。ASEAN、インド市場にEVを投入予定とのことです。北京汽車は、2020年からダイムラーとの合弁会社でEV生産計画を実施予定。長安汽車は、2025年までにガソリン、ディーゼル車の販売を取りやめる予定とのことです。

そして注目のテスラは、2020年から年産台数を大幅に引き上げることに加え、完全自動運転EVのタクシー「ロボタクシー」事業を展開する予定とのこと。利用者はアプリからロボタクシーを呼び出して利用できることに加え、テスラ車の所有者はリース契約をして運転していない時間をロボタクシーとして提供して収益を得ることができます。EVをタクシーとして利用する場合は、ほぼ終日走行するため、当然、充電回数が多くなります。テスラはこうした過酷なロボタクシーの用途に耐え、走行距離も増やせる高性能のリチウムイオン電池開発に力を入れていく模様です。

EV、自動運転車を中心としたスマートモビリティの分野において、蓄電池技術はさらに進化していくでしょう。また、動く蓄電池としてのEVの役割は、さらに多岐にわたり広がっていくはずです。

皆さんも、そろそろ家庭用自動車のEVへの買い替えを検討してみてはいかがでしょうか。また、蓄電池、EVを新たな事業展開の領域として考えていらっしゃる方は、ここで整理した情報をぜひ今後のビジネスに活かしていただけたらと思います。

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