エネルギー革命の中心を担う蓄電池 第1回

2023年09月19日

一般社団法人エネルギー情報センター

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今注目を集める「リチウムイオン電池」について、その概要を全4回にわたってご紹介します。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

今注目を集める「リチウムイオン電池」

皆さん「電池」と聞いて何を思い浮かべますか?いまだ多くの方は電池と聞けば「乾電池」を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかしこれからは乾電池に代表される旧来の電池に代わって、蓄電池が主役となる時代です。電気を蓄えることができて何度でも繰り返し使える蓄電池は、これからの私たちの日常生活や仕事において、またエネルギービジネスや様々な産業分野において、非常に重要な位置を占めることは間違いありません。

蓄電池には様々な種類がありますが、ここにきてにわかに注目を集めているのが蓄電池の代表格である「リチウムイオン電池」です。2019年12月、旭化成名誉フェローの吉野彰氏がリチウムイオン電池開発の功績を評価され、ノーベル化学賞を受賞したからです。吉野氏が研究開発に心血を注いできたリチウムイオン電池は、簡単にいえば「小さくて軽い充電できる電池」です。リチウムイオン電池の技術的進歩と普及によって、スマートフォンを中心とするモバイル機器を、誰もが気軽に持ち歩ける「モバイル社会」が発展しました。

吉野氏はインタビューで次のように語っています。
「私は、1981年からリチウム電池の研究を本格的に始め、1985年に作ることができた。それまで長い研究プロセスがあった。気候変動は非常に大きな人類の問題だと思う。リチウムイオンは電気を蓄えることができるので、〝持続可能な社会〟にふさわしいと思っている」

吉野氏が志すのは、大容量のリチウムイオン電池を搭載したEV(電気自動車)が走り回る持続可能な社会(環境を壊すことなく私たちの消費活動を支える社会)の実現だといいます。今後、蓄電池技術とEVがさらに進化すれば、太陽光や風力発電などでつくった電気をEVに充電しておいて、日常生活だけでなく災害時にもその電気を使えるようになります。EVが移動の道具としての「クルマ」の役割だけでなく、「大型の蓄電池」としての役割も担うようになるのです。

蓄電池は、携帯電話やスマートフォンの普及を後押しし、IT革命に多大な貢献をしてきました。これからは、再生可能エネルギーを活かす環境社会の実現に大きく貢献していくでしょう。さらにいえば、IT革命に次ぐ大きな波「エネルギー革命」の中心的な役割を果たす、といっても過言ではありません。

蓄電池にはどんな種類があるのか

皆さん「電池」と聞いて何を思い浮かべますか?いまだ多くの方は電池と聞けば「乾電池」を思い浮かべるのではないでしょうか。

電気を蓄えることを「充電」、電気を取り出すことを「放電」といいますが、この充電と放電を何度も繰り返すことができるタイプの電池(充電式電池)が本論のテーマである「蓄電池」です。充電池の一般的な正式名称は「二次電池」で、乾電池のような使い捨ての電池は「一次電池」と呼ばれます。

蓄電池には、仕様や仕組み、容量、使用用途などにおいていろいろな種類があります。本体価格や導入コスト、寿命、安全性なども様々です。現在、世界的に普及している主な蓄電池は「リチウムイオン電池」「鉛蓄電池」「ニッケル水素電池」「NAS電池」などですが、他にも「レドックスフロー」「溶融塩」といった蓄電池があります。

リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)は、スマートフォンやノートパソコン、モバイル機器に多く使われているほか、EVのバッテリーや家庭用蓄電池としても使用されています。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う仕組みです。

鉛蓄電池は1859年にフランスのガストン・ブランテによって開発された最も古い歴史を持つ蓄電池です。主な用途は、エンジン駆動時用バッテリー、高所作業車やゴルフカートなど電動車両用バッテリー、レジャー用船舶のバッテリーなどです。

ニッケル水素電池はリチウムイオン電池と異なり化学変化を利用した蓄電池です。正極に水酸化ニッケルなどのニッケル酸化化合物、負極に水素または水素化合物を用い、電解液に濃水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液を使用しています。乾電池の代わりとして、玩具やデジタルカメラなどにも使用されています。

NAS電池(ナトリウム・硫黄電池)は日本ガイシが研究開発したメガワット級の電力貯蔵設備を可能とした世界初の蓄電池です。大規模の電力貯蔵が可能であるにもかかわらず安価な点、従来の鉛蓄電池に比べて体積・質量が3分の1程度とコンパクトなため、設置場所の制約が少ないことが特徴であり、大きなメリットです。

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