エネルギーデジタル化の最前線 第21回

2023年07月16日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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前編から引き続き、大和ハウス工業(本社大阪市)のIoTに対する取り組みを紹介する。(後編)

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

IoT住宅ブランド「Daiwa Connect」

積み上げてきた実績と実証実験の結果をベースに、2017年11月にコネクテッドホームブランド「Daiwa Connect(ダイワ コネクト)」を発表した。「つながることで、もっと豊かな暮らしへ」をコンセプトとした「Daiwa Connect」は、家と家電、また家と設備などがつながることで、住む人の暮らしを支え、共働きや高齢化、自然災害などの社会課題の解決を目指している。

「社会環境が変化する中で、よりお客様とつながりつづける会社になるために生まれたのが「Daiwa Connect」。具体的にはIoT機器やAIアシスタント「Google Home)を活用したコネクト環境の整備、ライフシーンコンサルティング、リスクに対するマネジメントの3つの価値を提供していく。将来的には、「Daiwa Connect」の搭載率50%をめざしていきたい。」(木口氏談)。

実際に「Daiwa Connect」がある住宅での生活シーンを体験できる展示場を渋谷・千里から全国に展開を広げていっている。加えてコンセプトムービーを制作するなど、体感してもらい、良さを感じてもらえるプロモーションを展開している。プロモーションのターゲットは、住宅を購入する層だけではない。「様々なサービスを実現するには、自社だけではできないことが多い。実現したい世界観を展示場や動画で可視化することで、家を買う人だけでなく、メーカーさんサプライヤーさんなどに認知を広げ、協業できるチャンスを広げたい。」と木口氏は語る。

※Daiwa Connect動画 https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/daiwaconnect/

部屋全体が有機的に動くライフシーンを提案

コネクト環境の整備としては、2018年10月からLIXILと提携し、HEMSと家電コントローラーが一緒に利用できる仕様にバージョンアップ。加えて、「Daiwa Connect」のオリジナル機能として「Google Home」経由での電動カーテンの開閉やスクリーンやプロジェクターとの連動も実現した。

また、ライフシーンコンサルタントとして、家電などの単体の制御だけでなく、居住者の暮らしを様々なシーンで切り分け、「点」だけでなく「面」の利便性の提供にこだわっている。具体的には、おうちモニタリング、ペット見守り、長期不在モード、帰宅準備モードなど、8つの「ライフシーン」を設定し、実装している。「居住者の一言で、部屋全体が有機的に動くのが理想的。IoTをより身近に感じていただくため、8つのライフシーンを準備し、かなり具体的な提案ができる段階になってきた。」(木口氏談)。

将来的には、お客様が自身のニーズにあわせたオリジナルのシーンを作り、空間をコントロールできるようにしていくことを目指すという。

今後の展望

大和ハウス工業の今後の展望は、「建物の健康と居住者の健康にフォーカスする」ことだと木口氏は語る。建物の健康とは、建物の資産価値を保ち続けることを指す。購入した住宅の資産価値が目減りしないように、性能劣化の状況を見える化。自然災害時には遠隔からアラートを確認できるようにすることで、常時サポートできる仕組みを構築する予定だ。大きな故障になる前に、未然にメンテナンスができるよう日頃から見守る体制づくりを目指している。

居住者の健康については、ヒートショックや熱中症など、宅内での事故を未然に防ぐ方法を模索している。「建物や健康リスクにつながるところを中心に、先周りして居住者に呼びかけていきたい。住宅と当社がコネクトしている環境を構築することで、数年に一度の定期点検だけでなく、常時診断・常時点検の関係をつくりたい。」と木口氏は語った。お客様といかにつながりつづけていくか、大和ハウス工業の挑戦が続く。

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