エネルギーデジタル化の最前線 第20回
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2023年06月20日
一般社団法人エネルギー情報センター

コネクティドホームや、蓄電池やエネファームを組み合わせることで、より災害に強い住宅を実現するなど、エネルギーデータを活用した先進企業として、大和ハウス工業を紹介する。(前編)
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)
IoTに対する取り組み
大和ハウス工業(本社大阪市)のIoTに対する取り組みは20年以上前に遡る。主力商品の「xevo∑(ジーヴォシグマ)」では東日本大震災を教訓にZEHに加えて耐震性能を大幅に向上。蓄電池やエネファームを組み合わせることで、より災害に強い住宅を実現している。2017年に参画したスマートホームに関する実証実験では、様々なIoT機器や家電を一括して操作できる技術を構築。モニター家庭の声をふまえて、複数サービスをまとめて操作できる機能と、生活がちょっと便利になるシンプルなサービス提供が鍵と見定めた。
近年はコネクティドホームブランド「ダイワコネクト」を発表。IoT機器やAIアシスタントを活用し、これまで得られたノウハウを結集。たとえば声でシャッターや照明をコントロールできるなど、居住者の暮らしのシーンに応じて有機的に動作する部屋を具現化した。今後は建物と居住者の健康にフォーカスした機能を追加していく方針だ。
進化しつづける住宅
住宅メーカー大手の大和ハウス工業は、社会環境の変化を捉えながら、快適性、環境性、耐久性の3つの側面で住宅の性能を進化させてきた。
2005年の創業50周年記念商品として発売された「センテナリアン」は、「健康配慮住宅」をコンセプトとし、構造躯体までを断熱する外張り断熱を採用した。翌2006年に発売した「xevo(ジーヴォ)」シリーズの中でも環境性能に特に力を入れた「xevoYU(ジーヴォ・ユウ」では、ゼロエネルギー住宅であることを示すZEH(ゼッチ)を同社ではじめて提唱。太陽光パネルが多く設置できる「ハイブリッドエコロジールーフ」を採用しつつ、屋根裏を大型収納として利用可能にした。快適性だけでなく、環境性や耐久性も実現している。
現在の主力商品である「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」では、東日本大震災を教訓に繰り返し発生する巨大地震と余震を想定した耐震構造に刷新。繰り返しの揺れに耐えられる基本性能を持つ、より災害に強い住宅へと進化。天井高をアピールした独特のCMで印象的だ。2018年10月には住宅性能の最高峰をめざした新商品「xevoΣPREMIUM」を発表している。
蓄電池とエネファームを積極的に提案
環境への取り組みの部分では、ZEHの普及を推進することはもちろん、蓄電池や家庭用燃料電池エネファームの設置提案を積極的に行っている。設置を薦める理由は、節電のメリットはもちろんだが、災害時に発生する停電対策となる点にある。統計によると、災害で停電が発生した場合、停電エリアの多くが2日以内に復旧するという。大和ハウス工業が推奨する蓄電池が1台あれば、災害停電時でも、家庭にある主な家電製品を約20時間利用することができる。蓄電池を2台つなげれば、約2日間の生活をサポートすることができる。また、1台の蓄電池に加えて、エネファームを設置することで、約10日間の給湯・暖房が可能になる。
「蓄電池やエネファームの設置で災害時の停電不安を軽減できる。当社では製造メーカーとの提携により、価格を抑えて提案できる体制が整っており、年間3000台以上の蓄電池販売の実績がある。住宅メーカーでは、トップクラスだろう。」と大和ハウス工業株式会社 住宅事業推進部 商品開発部 技術戦略グループ グループ長の木口氏は語る。
IoTへ取り組みは20年以上
環境の取り組みと並行し、IoTへの取り組みの歴史は長い。はじまりは未だIoTという言葉が世の中に存在しなかった20年以上前までさかのぼる。2005年には、「インテリジェンストイレ」をTOTO株式会社と共に開発、発売し、大きな反響を得た。「インテリジェンストイレ」は、暮らす人々に寄り添うサービスとして、トイレの利用者の体重や体脂肪の計測に加えて、血圧や尿糖値までを計測できる機能を搭載。
計測したデータを自宅のパソコンと連携させることで、入居者の健康管理を効率化することを可能にした。「当時は、スマートフォンが一般的ではなかったため、ホームネットワークを経由し、パソコンで見る設計とした。住宅設備とパソコンがつながる先進的な取り組みとして、国内だけでなく海外からも多くの注目を集めた。」と同社総合技術研究所建築系技術研究室 建築ソリューショングループ 主任研究員の吉田氏は語る。
家庭を巻き込んだ実証事業から見えてきたこと
2017年には、経済産業省が推進するスマートホームに関するデータ活用環境整備推進事業に参画。茨城県つくば市での実証実験では、“つながる”仕組みの技術検証を実施した。コネクテッドホームの大きな課題は、さまざまな業界、企業がそれぞれに開発するために、IoT機器や家電、設備機器の通信方法が異なり、規格がまちまちな点にある。
実証実験ではこれを一括して操作できる技術を構築し、留守宅の見守りや、コミュニケーションロボットーによる音声制御等のサービス開発、連携を容易にした。モニターとして家庭30件に導入し、実際の生活の中で使用してみた、リアルなサービス評価や施工、保守も含めた課題抽出を行った。
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執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
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