電力業界の最新動向について/新電力企業の契約停止・撤退・倒産等195社に
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2023年05月25日
一般社団法人エネルギー情報センター

帝国データバンクの調査(2022年12月)によると、電気料金の総額が1年前と比較して増加した企業は86%以上だといいます。ウクライナ危機や円安などの影響を受けエネルギー価格が上昇し続ける中、電力業界の最新動向と今後の見通しについて紹介します。
1 年で6.3 倍に急増!?新電力会社の契約停止・撤退等の実態
電力の市場価格の高騰が長引き、契約停止や撤退する企業が相次いで発生しています。
新電力会社の倒産や撤退で契約継続が困難となり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける企業を「電力難民」企業と言われていますが、「電力難民」企業が2022 年10 月に4 万5871 件に急増しました。電力・ガス取引監視等委員会の3月15日公表によると、「電力難民」企業は3万7873件と、依然として高水準で推移していました。5月15日公表の最新データでは、1万9517年となっています。
また、帝国データバンクの「新電⼒会社」事業撤退動向調査によると、新電力会社(登録小売電気事業者)706 社のうち195 社が契約停止や撤退、倒産や廃業などを行ったということです(2023 年3 月24 日時点)。これは事業者全体の構成比の27.6%にあたります。
以下の図でこの1年間の推移を見ていきます。2022 年3 月末時点では、契約停止や撤退、倒産や廃業などを行った事業者は累計31 社でしたが、同年6 月には累計104 社に急増し、今回2023 年3 月末時点で195社となりました。1 年間で6.3 倍に急増したことになります。

出典:帝国データバンク
内訳として最も多いのは、新規申し込み停止を含めた「契約停止」の112 社(構成比57.4%)です。次が電力販売事業からの「撤退」で、57 社。同年11 月時点(33 社)から大幅に増加しています。「倒産・廃業」は同年11 月時点(22 社)から微増の26 社となっています。
今後の見通しについて
以下の電力調達価格と販売利益の推移のグラフを見ると、いかにここ数年、新電力企業の利益確保が困難な状況にあるかがわかります。そこで各社は調達価格の上昇分を売電価格に反映させる動きを見せています。

出典:帝国データバンク
2022年7月~12月の日本卸電力取引所(JEPX)の電力調達価格は22~26 円で推移していました。帝国データバンクによると「12 月の新電力における電力販売価格平均は、供給1 メガワット時(MWh)当たり約3 万2270 円で前年同月の約1 万9082 円を上回り、1 年間で約7 割上昇」しました。これにより、新電力の1MWh 当たり販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、「2022 年12 月は7232 円に上昇し、前年同月(1733 円)の4 倍超まで増加」しています。
今後もエネルギー高の影響は継続し、契約停止や撤退をする事業者が増えていくことも予想されます。一方、2023 年1 月からは政府の電気料金緩和対策による料金値引きも行われており、新規受付を再開する業者もわずかに見られます。また、中期的には電力調達価格が安定していけば、プレーヤーとなる登録企業が増加する可能性があります。
まとめ
企業や一般家庭に打撃はあるものの、これまでみてきたように価格転嫁をし、販売利益の確保をしていくことは電力業界各社の経営継続に重要なポイントとなりそうです。今年はすでに真夏日が観測されていますが、これからの夏期の需要期に向けて6月からは、大手電力7社が一般家庭の電気料金を値上げする方向です。今後の価格転嫁が電力業界にどのように影響するか注目されます。
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