電力・エネルギー×AI。AIを活用した国内の最新エネルギービジネス事例②
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2023年04月11日
一般社団法人エネルギー情報センター

ChatGPTなど対話型のAIが登場し、AI関連のニュースが多く取り上げられています。実はAIは電力・エネルギービジネスと密接な関係にあります。AIを活用した国内の最新エネルギービジネス事例について今回は、家庭向けのビジネス事例をご紹介します。
ウクライナ戦争などの影響によってエネルギー価格が上昇し、電力調達・供給が世界中で懸念されています。2022年6月に政府は、夏の電力需給が厳しいとして2015年以来7年ぶりとなる節電要請を行ったことはまだ記憶に新しいですね。気温上昇に伴い家庭内や企業での電力需要が大幅に高まり、「電力需給ひっ迫注意報」が数日間連続で発令されました。
ウェザーニュース、昨年夏に電力需給予報をアプリ内で無料公開
こうした事態を受けて、気象情報を発信しているウェザーニュースでは、無料でウェザーニュースアプリにて「電力需給予報」を緊急公開しました。(以下、イメージ図)

出典:ウェザーニュース
また直近ではエネルギー価格の高騰を受けて再生可能エネルギーの価値が再評価されており、脱炭素の流れからも、再生可能エネルギーの普及が一層加速しています。しかし太陽光や風力といった再生可能エネルギーは発電量が天候などによって左右されてしまうことからコントロールが難しく、電力系統の制約にも課題があります。
当サービスは、独自の電力需要予測と、電力会社から発表される電力の供給力のデータをもとに、国内の全電力エリア分の電力逼迫度(電力使用率)を時系列で予報。長年電気事業者向けにサービスを行なってきた同社のデータ分析技術や需要予測の知見を活用して開発した、電力需要予測に特化した独自のAIモデルで算出されています。
加えて、アプリユーザーから寄せられる天気や体感の報告を活用し、予測精度を高めています。各電力エリアのひっ迫度合いが時系列で確認できるため、電力需給が特に厳しい時間帯がわかり、効果的な節電を行うことが可能になります。
伊藤忠商事、冬季の電力需給逼迫を回避するため、実証事業を実施
冬季にも電力需給逼迫は予想されていたため、その回避と、小売電気事業者の電力調達コストの低減は課題でした。
2023年1月、伊藤忠商事は、子会社のグリッドシェアジャパンでこれまで販売した約3.5万台の蓄電池を活用し、小売電気事業者との連携を通じて、蓄電池を遠隔で制御する実証を順次開始しました。
グリッドシェアジャパンのネットワークに接続されている蓄電池は、 AIを活用して電力の最適制御を行うことが可能です。そこで、電力需給が逼迫し、市場での電力調達コストが高騰しやすい時間帯に、提携する小売電気事業者の要求に応じてグリッドシェアが遠隔で蓄電池を充放電します。その結果、事業者の電力使用を抑制し、電力の需給バランスを調整することが可能になります。(以下、イメージ図を参照)

出典:伊藤忠商事
パナソニック、EVと蓄電池の同時充放電可能にし、自家消費効果を約90%にまで向上
冬季にも電力需給逼迫は予想されていたため、その回避と、小売電気事業者の電力調達コストの低減は課題でした。
3つ目の事例は、パナソニックが行っている電気自動車(EV)と蓄電池の同時充放電に関するサービスです。EV普及の加速や、SDGsや脱炭素への意識の高まりもありますが、何よりも昨今の電気代高騰を受け、家庭では家庭内で利用する自家消費のニーズが高まっています。
パナソニックエレクトリックワークスは、2023年2月にV2H(Vehicle to Home)と蓄電池を連携させ、太陽光発電の電気を家庭で自家消費する住宅用V2H蓄電システム「eneplat(エネプラット)」の受注を開始しました。V2H とは、EVのバッテリーに蓄えた電力を家庭へ供給する仕組みのことです。
当サービスは、業界初のEVと蓄電池による同時充放電することが可能で、太陽光発電の有効活用をよりできるようになります。また、新機能のAI ソーラーチャージPlusは、日々の使用電力量と日射量予報を元に、停電に備える蓄電容量をコントロール。翌日余剰電力が多いと予測した場合、翌日の太陽光発電を加味して停電時に必要な電力を確保、残りの電力は蓄電池から家庭内へ放電。停電への備えを考慮しながら自家消費を向上します。

出典:パナソニック
さらに、家庭内の様々な家電や住宅設備機器を連携させる「AiSEG2(アイセグ2)」と連携を図ることで、自家消費効果を約50%から約90%へと大きく向上することが可能です。同社のシミュレーションよると年間約1.0 tのCO2排出量削減に貢献するという計測結果も出ています。
AiSEG2は気象警報とも連動しており、EVと蓄電池へ自動で充電し、停電に備えて蓄電残量を確保します。停電が発生した場合でも普段に近い暮らしを送ることができるなど、レジリエンスの強化につながっています。
まとめ
家庭の中にも、家電やスマートメーター、エネルギーマネジメントシステムという形でIoTが入り込んでおり、そこから抽出したデータを分析するAIの存在が欠かせなくなっています。このような動きはアメリカやヨーロッパでも進んでいます。
高騰する電気代や大規模の節電要請は消費者にとって一番の関心事といえます。今回の事象をきっかけに、今後のエネルギー消費の在り方を考え、検討しているユーザーは多いでしょう。再生可能エネルギーを最大限活用することは、脱炭素社会の実現にも確実につながっていきます。分散型のエネルギーシステムを構築し、AIで需給を予測し、EVや蓄電池を使って電力制御をしていく時代は当たり前のことになっていきそうです。
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