電力・エネルギー×AI。AIを活用した国内の最新エネルギービジネス事例①
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2023年03月30日
一般社団法人エネルギー情報センター
ChatGPTなどの登場で生成AIモデル関連の情報が注目を浴びていますが、AIと電力・エネルギービジネスは密接な関係にあります。AIを活用した国内の最新エネルギービジネス事例を2回にわたってご紹介してます。
電力・エネルギーとAIの関係
AIとは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略称で、人工知能ともいわれます。人間の知的ふるまいの一部を、ソフトウェアを用いて人工的に再現したものです。AI主要8市場のCAGR(2020~2025年度)は18.7%、2025年度には1,200億円に達すると予測されています。
昨今の電力業界では、電力取引を巡る新たな市場が導入されたことなどにより、最も経済的な電力需給計画を策定する作業がより複雑化・高度化してきています。電力需給計画の立案においては、電力需要や卸電力市場価格、再生可能エネルギーの発電量など各種データの変動に対する影響を適切に評価することが不可欠です。
また直近ではエネルギー価格の高騰を受けて再生可能エネルギーの価値が再評価されており、脱炭素の流れからも、再生可能エネルギーの普及が一層加速しています。しかし太陽光や風力といった再生可能エネルギーは発電量が天候などによって左右されてしまうことからコントロールが難しく、電力系統の制約にも課題があります。
こうした背景から電力会社や蓄電池メーカーなどがAIを活用した電力需給計画やエネルギーリソース制御に取り組んでいます。今回は、国内最新動向として、法人向けサービスを2つご紹介します。
四国電力とグリッド、AIを活用した電力需給計画立案システムの運用開始
四国電力では、同社の需給運用に関するノウハウと、グリッドのエネルギー分野に特化したデジタルツイン・AI最適化開発プラットフォーム「ReNom Power(リノーム パワー)」を組み合わせ、AIによる電力需給計画の最適化・自動化に向けた開発をしてきました。
2022年7月より運用を開始した同サービスは、デジタルツインと呼ばれる仮想空間上に現実空間を再現する技術とAI最適化技術を活用し、複雑化する電力需給計画の最適化を可能にしています。
まず想定される電力需要、市場価格、気象情報などの入力データから、電力需要や卸電力市場価格、再エネ発電量の変動を考慮した複数のシナリオを作成。発電機の制約条件等を踏まえ、シナリオごとに最適な発電計画を作成します。各シナリオの最適な発電計画に対し、電力需要や卸電力市場価格、再エネ発電量が変動した場合の期待収益を分析・評価し、その結果をもとに運用者が最も経済的な発電計画を採用します。
関西電力、AIで分散型エネルギーリソースを最適に制御する「SenaSon」の提供開始
関西電力では、4月から法人向けに、AIにより分散型エネルギーリソースを最適に制御する「SenaSon(セナソン)」の提供を開始します。分散型エネルギーリソースとは太陽光発電、蓄電池、EV、空調設備、生産設備等、顧客が保有するあらゆる設備のことです。対象範囲を徐々に拡大するとともに将来的には、メーカーを問わずに制御が可能になるということです。
同サービスは、AIで建物内の電力需要や太陽光発電量を精緻に予測し、それに合わせて蓄電池からの放電や空調設備等の稼動をリアルタイムに制御します。これにより、顧客の省CO2・省コスト等を実現します。太陽光発電に蓄電池を組み合わせた際の顧客のエネルギーコスト削減額は、従来のサービス比で最大1.5倍になるということです。
加えて、小売電気事業者等からのDR指令に応じて分散型リソースを最適に制御したり、同一法人における複数拠点全体の最適制御をしたり、制御するあらゆる分散型リソース・拠点を同じ画面で管理することもできるようになります。これら全ての機能を有する最適制御ソリューションは国内初です。
まとめ
経済産業省の「次世代の分散型エネルギーシステムの形成に向けた取組について」では、「需要家側の分散型エネルギーリソースの活用基盤がまさに構築されつつあるところ」だとし、「次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの将来像」内にも、AI技術の発展により電力の仕組みや活用法が変わることが示されています。
アグリゲーションビジネスなどの新たな電力取引ビジネスを創出したり、エネルギー地産地消につながるマイクログリッドオペレーションを構築したり、系統運用を高度化し電力のネットワークコストを削減するといった活用シーンが記載されています。(以下図参照)
次回は、家庭向けの事例についてご紹介をしていきます。
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