テスラや米スタートアップも事業拡大!再生可能エネルギーの大量導入を可能にする「VPP」がビジネスとして注目される理由

2022年12月23日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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宮古島に日本最大級となるVPPがテスラ社の蓄電池によって構築されたことや、11月に米スタートアップ企業がVPP事業で170億円調達したことなどで、改めてVPPがビジネスとして注目されています。今回はその背景や理由について迫ります。

仮想発電所?VPPの概要やメリットについて

なぜ今VPPが注目されているのか、まずはVPPについておさらいしてみましょう。

VPPとは「バーチャルパワープラント」の略で、「仮想発電所」とも呼ばれています。名前の通り、本当の発電所ではなく「あたかも一つの発電所のように機能する仕組み(技術)」のことです。再生可能エネルギーや蓄電池、EVの導入に伴って2018年頃から欧米で商用化されてきました。

地域の住宅やオフィス、工場などにあるそれぞれ発電システムの一つ一つは小規模なものですが、IoT(モノのインターネット)を活用した高度なエネルギーマネジメント技術によりこれらを束ね、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランス調整に活用することができます。

VPPのイメージ図 出典:資源エネルギー庁

日本でも震災以降、大規模発電所による集中電源のみに依存した従来型のエネルギー供給システムが見直されてきました。FIT後導入が増えた再生可能エネルギーについても、日射量や風の強弱など天候の影響で発電量が左右されるため、安定した電力供給が難しいという課題が持ち上がっていました。そこで、地域の分散されたエネルギーリソースを電力システムに活用する仕組みの構築が進められてきました。

例えば、太陽光発電の発電電力が余ったら、各家庭などに設置されている蓄電池に充電します。一方、電力需要が多い時間帯には、蓄電池の電力を放電させて、再生可能エネルギーを活用します。これにより電力負荷の平準化や、再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給などの機能として電力システムで活躍することが期待されています。

今回はアメリカの2社を事例に、VPPビジネスの最新動向を見ていきたいと思います。

170億円の資金調達をしたことで注目の米スタートアップSwell Energy

2014年創業、カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠を置くエネルギー管理およびスマートグリッドソリューションのプロバイダーのSwell Energy。11月22日に、同社のVPPを600MWhに拡大し、エネルギーコストの上昇、停電、グリッド汚染に対処するための支援を目的として、1億2,000万ドル(170億円)を調達したと発表しました。これまでにSoftBank Vision Fund 2などから資金調達を完了しており、累計調達額は5億8,200万ドルに上るといいます。

同社のVPPは、米国内の家庭や企業に設置され、電力会社、顧客、サードパーティサービスプロバイダーを結び付けています。

また、既存の配電網の中に、様々な関係者と共にハードとソフトを緻密に組み上げていく必要がある仮想発電所において、同社は分散型エネルギー資源管理システム(DERMS)ソフトウェアプラットフォーム「GridAmp」を運営しています。

これは、それぞれのハードを繋ぎ、最適化アルゴリズムと機械学習モデルを使用して、集約されたシステムの操作を自動化。系統全体の信頼性と安定性をサポートするとともに、系統運用コストを削減していることが特徴です。(以下、イメージ図参照)

出典:Swell Energy

同社が注目されている理由は他にもあります。

既存で設備を所持している家庭以外にも、テスラのPowerwallやsonnenのソーラーストレージなどOEM機器と連携して導入を進めています。また、それだけでなく、電気自動車(EV)のインフラを開発するNuvveとの連携、さらにはハワイ、ニューヨーク州、カリフォルニア州の電力会社とVPP契約を結び、複数の仮想発電所の開発を実行います。こうした推進力が評価をされています。

さらに、これまでアメリカでは売電は事業者のみ権利が与えられ、消費者は電気料金の相殺に留まっていました。しかし、同社が独自の容量入札プログラムを電力会社に提供し、家庭でも売電ができる仕組みを実装したことで、消費者の支持を得ているということです。

テスラによる日本最大級のVPPが宮古島に

一方、すでにEV領域で大手企業となったテスラが今度は電力市場に乗り出しています。今後、VPP事業を拡大し「分散型の電力会社」になることを掲げています。すでにカリフォルニア州やテキサス州で電力サービス展開をしていますが、その流れは日本にもきています。

2021年より沖縄県宮古島において、テスラ家庭用蓄電池PowerwallによるVPP事業が開始されました。2022年8月、島内への設置台数は300台を超え、家庭用蓄電池を用いた商業用のVPPの規模としては日本最大級となっています。

出典:テスラ

本事業により宮古島の系統電力の安定化、電力供給の安定化を図ります。また、台風などにより系統電力に停電が生じた場合には、Powerwallから設置されたご家庭へ電力が供給されるため、家庭内の停電を防ぐレジリエンス機能を強化できます。

当事業の特徴として、様々な規模のVPPへ利用可能である点があげられます。Powerwallは蓄電容量13.5kWhの家庭用蓄電池です。テスラでは各家庭に設置された蓄電池を遠隔で一斉に制御可能なアグリゲーションプラットフォームや最適なアルゴリズムを提供しています。これらを使うことで、プロジェクトの規模に関わらず、分散設置されたPowerwallを一括管理・制御が可能となり、VPPにも速やかに利用することが可能です。

また、ソフトウェアの更新で制御技術がアップデート可能という点もあります。ソフトウェアは随時更新されるため、継続的にシステムの機能が向上し、いつでも最新の機能が利用できます。さらに、設置後にソフトウェアを調整し、制御技術をアップデートすることも可能です。

今後は2023年度末までに600台のPowerwallの島内への設置を見込んでおり、島内の再エネ率 2050年に49%という目標を目指しています。また、2024年度以降には沖縄県全域へのPowerwallの設置、普及も目標としています。

世界中で利用されているPowerwallですが、そのVPPの先行事例としては、オーストラリアがあります。世界最大のVPPとして、南オーストラリア州で2018年より実施。州営住宅への設置から始まり、現在、個人宅へ展開中で、最終的に50,000台の設置が見込まれています。

まとめ

このような企業動向の背景には、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)の後押しもありました。2020年、分散型電源を送電網に接続しやすくするような各地域の送配電網の運用期間に指示し、VPP事業を模索する動きが広がりました。

グローバルなインパクト経済を支援するプラットフォームのHolon IQによれば、過去10年間でClimate Tech(気候変動関連テクノロジー)で10億ドル以上の評価をつけた未公開企業、いわゆる「ユニコーン」は47社誕生しており、その内28社は2021年に誕生しています。日本のスタートアップ企業もこの流れにのれるかが注目です。

日本ではVPP事業への補助金もありますが、どちらかというと火力発電のバックアップとして、もしくは負荷分散として、もしくは地産地消のマイクログリッドとして実証実験が進んでいるという印象です。また実証事業結果の課題として費用対効果が低い点をあげる事例も多くみられます。

今回の2社の事例をみることで、このままのやり方、スピード感でよいのかと考えさせられます。脱炭素社会への追い風を受けて官民一体となり、ダイナミックに投資をしてVPP事業を商用化し、ビジネスとして世界中で利用される仕組みにしていくことの重要性を感じます。

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