エネルギー安全保障の高まりの中で、再エネ、蓄電池、VPPはどうなっていくのか
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

現在、エネルギーを巡って世界中で様々な事情で起こっています。4月25日には、新電力ネット主催で片山参議院議員、Loopの中村社長、グッドフェローズの長尾社長をお迎えしてオンラインセミナーを開催しました。そこで今回は、当セミナーのパネルディスカッションの内容をご紹介しながら、日本のエネルギー安全保障について考えていきます。
エネルギー安全保障とは何か、政府の対応は
昨今、コロナ禍をきっかけに経済安全保障が注目されており、特に他産業を支える最も基幹的な産業として、エネルギー分野の安全保障が重要度を増してきています。
エネルギー安全保障とは「社会経済活動に必要な石油や天然ガス、電気などのエネルギーを妥当な価格で安定的に確保・供給すること」です。元々資源国ではない日本では、「3E+S」という考え方が根付いてきました。
3E+Sとは、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)、安全性(Safety)から成り、日本のエネルギー政策の基本となる概念です。
現在、日本経済新聞の記事(4月21日)によると、「資源国のロシアによるウクライナへの侵攻を受け、価格高騰や供給制約の懸念が強まり、エネルギー安全保障をどう守るかが喫緊の課題となっている」ということです。
このような流れを受けて、政府は3月18日、「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」を設置しました。
設置の理由は、「サプライチェーンのグローバル化、新型コロナウイルスの感染拡大、国際法違反の武力による一方的な現状変更等の国際情勢の変化を踏まえ、我が国の存立、国民生活、経済、産業にとって不可欠な戦略物資・エネルギー供給における脆弱性を解消するとともに、グローバル・サプライチェーンにおけるチョークポイント技術の優位性を獲得・維持するため」とされています。
同月31日には、第1回会合が開かれ、「ウクライナ情勢を踏まえた緊急対策」が取りまとめられました。(ご参考:https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220331013/20220331013-1.pdf)その中で、「再エネや水素導入を通じたエネルギー利用構造の転換」として蓄電池併設型太陽光や蓄電池導入促進についての項目が上げれています。
4月25日に新電力ネット主催で行われた「コロナショック・ウクライナ危機 日本のエネルギー政策はどこに向かうのか?ビジネスチャンスは? 日本の未来を大胆予測!」オンラインセミナーのパネルディスカッションの中でも、エネルギー安全保障について話題が出ました。また、そういった観点からの再エネや蓄電池の普及に関しても、様々な意見交換がされました。

主要国の一次エネルギー自給率比較 (2019年)出典:資源エネルギー庁
再エネを導入することが日本の安全保障につながる
ここからは電力業界トップランナーパネルディスカッション「エネルギー危機から日本のミライを予測」より一部抜粋して内容をご紹介していきます。
まず片山参議院議員から太陽光パネルの今後の普及に関して、
「個人(への設置)を膨大に増やしていくとか、学校が自立電源になった方がいいから学校の絶対擦り落ちないところに入れようとか、無理のないところを社会と一緒に探すこと(を資源エネルギー庁と話しています。)」「その方がビジネスから見ても、日本のクオリティオブライフからみても、日本の安全保障からみてもいいと思います。」という発言がありました。これを皮切りにして、
Loopの中村社長からは、「今、新たに安全保障の分野において再エネが必要になってきています。いつどのような有事が起こるかわからない中で、エネルギー自給率20%程度では話にならないと。」という発言がありました。
そして、「再エネをたくさん導入していくことで、地産地消なので、日本全体を100%以上再エネで賄うようなことができれば自給率100%を実現できると考えていて、そういう意味で再エネをもっと広げていかなければいけないと考えています。」と発言されていました。
グッドフェローズの長尾社長からは、「発電単価から見ても、LNGが値上がりする中で太陽光(発電)が一番安くなってきていると思います。さらに有事にも強いと思うんですよね。(太陽光発電は)分散型の電源なので、例えば火力一基停電になったとしても太陽光がついていれば影響を最小限に抑えられるのではないかという意味ではすごくいいと思っています。」という発言がありました。
また、ディスカッションの最後に、片山参議院議員は「ウクライナ問題、台湾問題といったときにエネルギーの強靭化が必要なわけです。なので、今回のパネルディスカッション(の内容)を活かしていきたいです。」と締めくくりました。
このように、エネルギーの安全保障は政府でも業界でも共通して重要な取り組み課題であることがわかります。他にも、エネルギー安全保障と脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーを普及させていく必要がありますが、普及させるだけでなく、それをどうコントロールするのかという視点から蓄電池やVPP(バーチャル・パワー・プラント=仮想発電所)についての議論もされました。

パネルディスカッションの様子
再エネをコントロールする蓄電池やVPPへの支援を要請
Looopの中村社長からは、「VPPは去年くらいまではまだビジネスとして成り立たないと言われてきましたが、今、蓄電池のコスト大きく下がっていて、いわゆる“アビトラージ”ができはじめてきました。そういう意味で、今まさにビジネスチャンスは蓄電池、VPP、デマンドレスポンス、ここだと考えています。」「日本の中で再エネ技術を磨いていって、再エネをコントロールするということが大事」
としたうえで、「こういう部分を進めていかないと、再エネ、太陽光だけ作っても不安定だと評価されないんですよね。なので、コントロールする部分に対して、政府として投資をしてほしいと思っております。」と政府への支援を要請しました。
グッドフェローズの長尾社長も、「やっぱり今後再生エネルギーを普及させていくにあたってキーとなるのは蓄電池かなと思っております。」と発言しました。
さらに、「太陽光発電しすぎると、出力抑制がかかるんですよね。ただ送電網を増強すると言ってもお金も時間もかかるということで、できるだけ各家庭でもしくはメガソーラーと隣接する形で蓄電池をどんどん普及させていくということが電力のひっ迫を解決していく手立てにもなると思います。」と電力逼迫の回避にも蓄電池が有効なことを強調しました。
これを受けて片山参議院議員からは、「高いから再エネではなく、安いから再エネと。さらに、安定性が高いから再エネということになれば黙っててももっと広がるので、これからの地域間連携ではそれを目指していきます。」「安くて良質な電源や電源デバイスをこれから日本でつくらないと再生エネルギーが評価されないので。そのための優遇措置を政府は大幅に取るべきだと思います。」と発言をされました。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年04月29日
ホルムズ海峡が夏まで封鎖された日本企業のコストと電力に何が起きるかー前編:原油高・物流混乱・マージンスクイーズー
2026年春、ホルムズ海峡の通航制約はエネルギー市場と海運に強い緊張をもたらしています。米国とイランの対立が続くなか、夏まで長引く可能性も現実味を帯びています。日本には約8か月分の石油備蓄があり、直ちに燃料が枯渇する状況ではありません。 ただし、備蓄があることとコストが上がらないことは別の話です。この通航制約が長引いた場合、日本企業が向き合うのは「コスト急増」と「需要減退」の二重ショックになりやすい、というのがこのコラムの見立てです。 前編では原油高・物流混乱・マージンスクイーズを中心に、封鎖が企業コストに与える影響を整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年04月27日
電気料金の今後について、送配電事業の中立性と意義、2028年の第2規制期間を見据えた今後の行く末
日本の電力システムを支える「レベニューキャップ制度」について、2023年の導入から現在に至る託送料金改定の動向と、インフレや発電側課金といった最新の環境変化を解説します。また2028年の第2規制期間を見据えた今後の行く末を展望していきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年04月23日
国際情勢は読めない。しかし、電気料金への波及順序は読める―燃料価格の乱高下は、どの料金メニューにいつ届くのか
国際情勢は読めない。 中東情勢や資源価格の先行きが不透明な今、多くの人が「電気料金はどうなるのか」と不安を抱えています。 しかし実は、電気料金への影響はある程度読めるものです。 燃料価格の変動は、一定の仕組みと順序を通じて、時間差を伴いながら料金に反映されていきます。 本稿では、2022年のウクライナショックを踏まえながら、電気料金がどのようなルートで、どの順番で変動していくのかを整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年04月09日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第3回】収益は「見えにくい」のか、それとも見え方を混ぜているのか
前回は、系統用蓄電池をめぐる議論がかみ合いにくくなる背景として、立場ごとの時間軸や評価軸の違いを整理しました。政策、系統運用、事業者、投資家、それぞれが同じ対象を見ながら異なる物差しで評価している構図がそこにあります。それでも議論の現場では、繰り返し聞かれる言葉があります。「収益が見えにくい」というものです。 蓄電池は10年から15年の運用を前提とする長期資産であり、その収益の根拠となる市場制度や価格の前提は、数年単位で更新され続けます。長期資産と短期制度が重なるとき、収益の見え方はどのように変わるのか。連載の締めくくりとして、その背景を順に見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月06日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第2回】立場ごとの時間軸と評価軸
前回は、系統用蓄電池が議論の「前提」として扱われるようになった背景を、三つの流れの合流として整理しました。制度が整い、コストが下がり、再エネの導入量が増えた。その重なりが、蓄電池を自然に検討の出発点に置く状況を形作っています。 ただ、同じ前提を共有しているはずの場で、同じ対象を扱いながら議論の焦点が重ならない場面が見受けられます。情報量が増え、関係者が増え、検討が深まるほど、情報の整理に要する前提条件が増えるという感覚を持つ担当者も少なくありません。 今回は、その背景にある構造を取り上げます。







