国内初、電動自動車の蓄電池を活用したV2Gアグリゲーター実証が開始
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2018年06月05日
一般社団法人エネルギー情報センター
中部電力は5月30日、豊田通商と協力し、車載蓄電池から電力系統へ充放電する実証事業を実施すると発表しました。国内初の試みであり、電動車の蓄電池への充電だけではなく、電力系統に逆潮流させることで、電動車の需給調整用途活用を目指すものとなります。
国内初のV2G実証
再エネの導入拡大が見込まれているなか、自然条件の変化による発電出力のふらつきや、余剰電力の発生が今後の課題となってきます。
こうした課題を解決する方法の一つに、VPPがあります。VPP技術は、太陽光発電等の再エネ発電や蓄電池などをネットワークでつなぎ、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組みです。
なかでも「V2G(Vehicle to Grid)」は、電動車の車載蓄電池を活用したもので、充電に加えて、蓄電した電力を電力系統に供給する技術です。余剰電力を充電して供給力が必要な時間帯に放電する供給力シフトなどを可能とする技術として期待されています。
こうした中、中部電力は豊田通商と協力し、車載蓄電池から電力系統へ充放電する実証事業を実施すると発表しました。国内初の試みであり、電動車の蓄電池への充電だけではなく、電力系統に逆潮流させることで、電動車の需給調整用途活用を目指すものとなります。
豊田通商はV2G制御システムの構築、中部電力は電力系統への影響評価
今回の実証事業では、V2Gによる調整力の提供や再エネの供給力シフトの実現可能性が検証されます。具体的には、複数台の車載蓄電池を束ねて充放電を制御するV2G制御システムを構築するものです(図1)。愛知県豊田市の駐車施設に充放電器が設置され、実証試験が行われます。
実証では、蓄電池への充電だけではなく、電力系統への逆潮流により、それらが電力系統に与える影響が評価されます。これらにより、電動車が需給調整に活用できるか検証が行われます。加えて、応動時間が短いため難易度が高いとされる「短周期変動」への調整力としても活用できるか検証が行われます。
今回の実証において、豊田通商はアグリゲーターとして、V2G制御システムの構築を担当します。豊田通商は、電力系統に対して調整力の提供や、再エネの供給力シフト等、電動車の新たな価値の創造を目指すとしています。
一方で中部電力は、一般送配電事業者の立場からV2Gの電力系統への影響評価を行います。中部電力は、新たな調整力の確保に繋がる技術の向上に寄与することで、安全・安価で安定的な電気供給を目指すとしています。
今回の実証では米国ヌービー社のV2G技術が活用される予定です。ヌービー社は、欧米で電動車を活用したV2G事業を展開するベンチャー企業です。世界各国において周波数調整力を提供し、デンマークにおいては世界で初めてV2Gの商業化に成功しています。なお、豊田通商は2017年12月に出資参画しています。
VPP補助金において新設された「V2Gアグリゲーター事業」
今回の実証事業は、「平成30年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金(以下VPP補助金)」により行われます。中部電力と豊田通商がVPP補助金の「V2Gアグリゲーター事業」の区分で共同申請し、執行団体である環境共創イニシアチブより5月29日に交付決定を受けました。
同補助金は昨年も実施されておりましたが、「V2Gアグリゲーター事業」は、今年より新設された区分となります(図2)。「V2Gアグリゲーター事業」において、本年度は「九州V2G実証事業」、「EVアグリゲーションによるV2Gビジネス実証事業」、「豊田通商株式会社 需要家特性に応じたV2Gアグリゲーター実証事業」、「東北電力V2G実証プロジェクト」の4プロジェクトが採択されました(表1)。
なお、今回の実証ではVPP補助金により豊田通商が11,865,000円、中部電力が63,000円の交付を受けています。スケジュールとしては、2018年10月頃まではV2G制御システムの開発が行われ、2018年10月頃~2019年2月頃には充放電試験の結果分析、そして2019年2月頃に報告書が提出される予定です。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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