【太陽光発電】再利用・リサイクルの新会社、FIT終了後の大量廃棄に向け
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2016年03月02日
一般社団法人エネルギー情報センター
使用済みの太陽光発電を再利用・リサイクルする企業「アールツーソリューション」(東京・中央)が、3月1日に設立されました。今後、規模の大きくなる太陽光発電の廃棄量に着眼し、再利用とリサイクル、廃棄物処理を組み合わせたビジネスとして展開します。
廃棄された太陽光パネルを再利用・リサイクルする新会社誕生
「アールツーソリューション」の設立には、太陽光パネル再利用のネクストエナジー・アンド・リソース(長野県)、リサイクルのリサイクルテック・ジャパン(愛知県)、廃棄物処理の市川環境エンジニアリング(千葉県)、破砕機メーカーの近畿工業(兵庫県)が出資しています。
アールツーソリューションによるビジネスフロー
太陽光パネルは、老朽化したものに加え、災害で破損したものなど幅広く全国から受け入れる形となります。それらを検査し、再利用が可能な場合は販売します。再利用が不可能な状態であった場合、太陽光パネル専用の設備で分解、アルミや銀などを素材ごとに取り出しリサイクルします。
出資している企業の内、ネクストエナジー・アンド・リソース社は既に中古太陽光パネルの再利用ビジネスを展開していますが、再利用できない場合はリサイクル業者に引き渡していました。今回設立された「アールツーソリューション」では、再利用・リサイクルを一括して実施することが可能となっています。
廃棄太陽光パネルビジネスの市場規模
太陽光パネルの廃棄量
太陽光パネルの廃棄量は現在、年間約2400トンとみられていますが、環境省の試算によると、2040年には年間約80万トンと300倍以上の規模に成長する見込みです。今後、10~20年間の固定価格買取制度(FIT)の適用対象外となった段階で、急激に廃棄量が増加する想定となっています
出典:環境省
今後、大量の太陽光パネルが廃棄されると想定される一方で、現在はまだまだ市場の規模が小さいです。以下では、廃棄物太陽光ビジネスの「再利用」と「リサイクル」の現状と今後を見ていきたいと思います。
再利用ビジネス
国内向け再利用ビジネス
再利用の国内向けは販売先が現状で少なく、リサイクルの実証試験や性能評価、自然劣化等の研究用途、一般家庭向けのオフグリッドソーラーなどと限定されます。また、メンテナンスのための機材のイニシャルコストが高いため(図1)、一定量の需要と供給が見込めない限り機材への設備投資は難しく、新規参入のハードルは高いと思われます。そのため活動をしている企業は、昨年上旬時点では日本国内で1社ほどとなります。海外においても、ドイツなどにおいて少数の事例が見られますが、まだまだ市場は大きくないといえます。
図1 メンテナンスのイニシャルコスト 出典:環境省
国内向け再利用ビジネスの市場はまだまだ小さいですが、今後はパネルの廃棄量も増え資材調達が容易になり事業を後押しします。また、適切な保証の付与と需要に合った販路拡大ができれば、市場が拡大する可能性はあると考えられます。
出典:環境省
海外輸出向け再利用ビジネス
海外輸出向けの再利用ビジネスの場合、現状で一定規模のビジネスを展開している企業は、昨年上旬時点では3社ほどとなり、国内向けよりも市場規模は大きいといえます。主に、系統連携ではなく、独立電源として使用されることが多いです。メンテナンスを海外で実施することで、コストの低減も可能となりますが、主要な市場である東南アジアも徐々に中古品から新品へとニーズが移行する可能性があります。
出典:環境省
メンテナンス向け再利用ビジネス
メンテナンス向けの再利用ビジネスは、今後需要が高まると考えられます。太陽光発電の急速な導入拡大により、メンテナンスの頻度が高まると考えられるからです。例えば、メンテナンスの際に破損が見つかり修復のため部品が必要となった際、新品ではなくリユース品を提供するといったビジネスモデルも考えられます。
出典:環境省
リサイクル
リサイクルに関しては、主に5つのルート(太陽光発電設備メーカー、建物解体業者、ゼネコン・建設事業者、施工業者、リユース業者)から廃棄された太陽光パネルを分解し、ビジネスとして展開している企業が一定数存在します。パネルに含まれる銀の含有量でリサイクルした際の採算性も異なり、銀の含有量が多いパネルを廃棄する事業者の場合、リサイクル業者に売却することが可能となります。逆に、銀の含有量が少ない場合は、有料でリサイクル業者に引き取ってもらう形が一般的です。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年08月17日
2024年度にも国内で初導入が計画される潮流発電。世界の先進的な事例や、その仕組みと可能性とは!?
排他的経済水域世界第6位という海洋国である我が国において、海洋エネルギーは大きなポテンシャルを有しています。潮流発電は一定の規則性を持った潮汐力により、年間を通じて安定的で、予測可能な発電方式であることから今後の可能性として期待がされます。今回は、潮流発電(潮汐力発電)について紹介します。
一般社団法人 環境エネルギー循環センター(EECC)
2023年07月31日
導入が進んだ太陽光パネルの廃棄に関する問題について、政府が検討会を通じで業界団体にヒアリングをしています。その中で、実態が浮き彫りになってきた太陽光パネルのリユース・リサイクルの現状と課題についてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年12月07日
日本はポテンシャルが高い!?地熱発電を地域観光や企業の自家発電に活用
電力高騰や原発再稼働などがメディアで取りざたされている電力業界。カーボンニュートラル社会に向けて、これから考えれることは何か。今回は、日本にはまだポテンシャルのあるクリーンエネルギーの一つである地熱発電を取り上げ、国内外の事例をご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年09月29日
三菱商事の洋上風力の入札案件や豊田通商の陸上風力開発など、風力発電関連のニュースが多く取り上げられています。再生可能エネルギーとして日本では太陽光に次ぐ導入ポテンシャルがある風力発電の最新の国内動向をご紹介。また、課題や解決のための取り組みについても取り上げます。
一般社団法人 環境エネルギー循環センター(EECC)
2022年09月08日
世界で太陽光パネル廃棄に関する議論が加速。日本は24年にリサイクル義務化検討へ
今後、寿命を迎えた太陽光パネルの大量廃棄が起こるという懸念が世界中で広がっています。日本では、環境省が太陽光リサイクル義務化の検討にはいりました。そこで今回は、現状のリサイクル設備やパネル回収システムについてご紹介しながら、今後の廃棄・リサイクルの動きについて考えていきます。