スマートグリッド(Smart grid)

スマートグリッドとは

Next generation power grid that can control and optimize the flow of electricity between both sides of supply and demand.

スマートグリッドは、最新の IT 技術を活用して電力供給、需要に係る課題に対応する次世代電力系統とされる概念です。

スマートグリッドは再生可能エネルギー大量導入のための必要不可欠なシステムとして注目されています。再生可能エネルギーは、天候、風況などによる発電量の変化が激しく不安定な電源です。また、火力などと比較すると小型のものが一般的で、各地に分散しています。そのため大量に導入すると、出力の急激な変動に伴う電力網への負担といった問題が生じます。これらの問題を克服するには、スマートグリッドの導入が重要となります。

スマートグリッドは、需要家にスマートメーターを設置し、ICT を活用して系統との間で電力需給に関する情報を集約・配信することによって初めて可能となります。需要者は、地域全体の電力需給に応じて作動するスマート家電の導入や、電気自動車の蓄電池の利用、自宅の屋根に設置した太陽光発電の効率利用などにより、地域全体の電力需給を平準化します。

いきなり特定の地域において大量の再エネ電力が発電されたり、需要家の電力消費量が増えた場合、系統に負担がかかり停電や電気の品質にも関わります。スマートグリッドは、電力の地域全体における利用を平準化することが可能なので、再生可能エネルギーの大量導入などで活用できます。

したがって、スマートグリッドに関連するビジネスは、単に電力事業だけでなく、再生可能エネルギー発電、スマートメーター、スマート家電、電気自動車、情報通信分野、さらには新たな社会インフラ建設など、極めて幅広いものになります。

背景

IT技術の進歩に伴い、世界の電力消費量が年々増加している中、如何に電力ロスを減らすか、という議論がなされてきました。特に、IT業界の中心であるシリコンバレーを抱えるアメリカは、多大な電力需要に供給が追い付かず、頻繁な停電に頭を悩ませていました。スマートグリッドはその解決策の一つとして、2000年頃から開発、導入が進められてきました。

スマートメーターとの違い

同じ「スマート」を冠する語として、スマートメーターがあります。これは、従来のものにIT技術を取り入れた、情報通信のできる電力メーターです。スマートグリッドはこのスマートメーターを利用して電力の能率化を図ります。

アメリカでのスマートグリッド

アメリカでは、近年各地でスマートグリッドの実証実験が行われています。2008年からコロラド州で実施された実証実験を始め、2010年から2013年を通じてはニューメキシコ州で再生可能エネルギーとの混合実験、その他ではフロリダを代表として全国でその性能を試されています。

また、オバマ政権は、自身のグリーン・ニューディール政策の一環として、スマートグリッドの採用に積極的で、2009年10月に34億ドルを予算にアメリカの全送電網を一新すると発表しました。老朽化した送電網を改修するという目的もありますが、それ以上にスマートグリッド導入への熱意が示されたといえます。

日本でのスマートグリッド

日本で電力供給が始まって間もなくの頃、民間会社は自由競争を行うことを許されていました。しかし、戦後になると、電力市場は9電力分割という地域独占体制に再編されます。この頃から電力自由化の道は途絶え、他会社の新規参入は不可能となってしまいます。ところが、1995年4月に電力事業法の改正が行われ、発電部門への新規参入が許可されました。

そして2000年3月には大口需要家へのみの電力小売りが自由化され、商社をはじめとした他会社の市場参入も進められました。その後徐々に自由化の枠が広げていきました。そのような状況の中、日本でのスマートグリッド推進は、再生可能エネルギーの更なる導入や省エネへの貢献につながると期待されています。

2012年7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、再生可能エネルギーの導入が増加傾向にあります。しかし、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーは天候に左右されてしまい、従来の発電方法より不安定です。そこで、スマートグリッドとの併用することにより、安定した供給を実現することができます。また、発電所も従来の電力消費量のピーク時に合わせた発電量を常に保っていた状態から、その時に必要な電力を随時発電する無駄のない発電に切り替えることができます。さらに、送電先でもスマートメーターを通じて電力消費量を頻繁に確認することで、省エネ意識も高まります。

懸念点

スマートグリッド導入に際しての懸念も存在します。スマートグリッドはIT技術を駆使したシステムであるため、サイバー攻撃を受ければ個人情報が漏えいしてしまう危険性があります。実際に、米国ではスマートメーターをハッキングして電気料金を減額するといった請負ビジネスが発生、摘発されたと報告されています。サイバーセキュリティの強化が当面の課題となっています。

今後の日本での展望

2016年4月から解禁された電力の全面自由化により、消費者が自由に電力会社を選べるようになりました。これにより、これまでにも増して再生可能エネルギーの台頭が見込まれます。一方で、近年進められているIoTの波もスマートグリッドの普及に貢献すると考えられています。

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