暮らしを豊かにする電力サービス、IoTがもたらす新電力事業の新たな可能性
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2016年08月18日
一般社団法人エネルギー情報センター
今後の電力業界においては、"モノ"がインターネットとつながる「IoT」が一つの大きなテーマになるといわれています。今回のコラムでは、このIoTがもたらす新電力事業の新たな可能性について、その概要を見ていきたいと思います。
今後の電力業界においては、「IoT」が一つの大きなテーマになるといわれています。そもそもIoT(Internet of Things)とは何かというと、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みのことです。従来、インターネットに接続するのは、主にパソコンやサーバー、プリンタといったIT関連機器でしたが、IoTでは様々な”モノ”がインターネットとつながります。
IoTを活用した事例として想定されるものは、自動車をインターネットとつなぎ走行データを集め、それを利用して安全・快適な自動走行を実現する事業や、リアルタイムの生体情報等をモニターすることにより、病気の兆候を早期発見・予防し、生活習慣病等を克服する事業など、枚挙に暇がありません(図1)。
図1 IoTの活用例 出典:独立行政法人 情報処理推進機構
このIoTがどのように電力と関係するかというと、分かりやすいものでは、離れた地域からエアコンの電源を入切することや、照明の制御をすることが挙げられます。その他、家電をインターネットに接続することや、給湯器、風呂釜などの様々な機器の状態をモニターすることや、リモコン制御等をすることも可能となります。
家庭内におけるIoTデバイスの導入でいうと、現時点においてはコア層を対象とした製品となっておりますが、将来的には様々なサービスとの連携などを通じて、より⼀般的な商品となる可能性があります(図2)。
図2 家庭内におけるIoTデバイスの導⼊ 出典:経済産業省
これから盛んになっていくと考えられる分野では、例えばスマートメーターがあります。スマートメーターとは、通信機能を持ち、電気の使用量を遠隔で検針したり、30分ごとの使用量を計測したりできる電気メーターのことです。
皆さんが電気料金プランを新電力会社のものに切り替える際には、このスマートメーターの設置が必要となります。従来の電力量計では、電力使用量を確認するための検針員が各家庭やオフィスなどを一軒一軒回っていましたが、スマートメーターではその必要もなく、電力会社は人件費を削減できます。
また、従来の電力量計では1か月に1度の検針であるため、リアルタイムに消費量を把握することが困難でした。しかしスマートメーターはその弱点を克服できるため、IoT活用のサービスとして多様な展開が期待できます。
例えば、スマートメーターのデータを集積し、機器の最適な自動制御等により効率的なエネルギーマネジメントを行う事業が広がっていくと考えられます。また、リアルタイムの電力需給に応じたエネルギー管理が可能となるので、電力会社等と需要家の契約に基づき、ピーク時間帯等に節電といったことも可能となります。ピーク時間帯に節電してくれた見返りとして、電力会社が需要家に対して報酬を支払うことをネガワット取引といいますが、そうした新しい電力利用の形も生まれますので、新電力企業にとってはビジネスの幅が広がることに繋がります(図3)。
図3 スマートメーターによるサービス展開 出典:経済産業省
今後、スマートメーターの大規模導入により、電力とIoTの動きは加速すると思われます。実際に、2024年度までには全家庭でスマートメーターを設置する目標を国として掲げています。そもそものスマートメータを利用している人数が少ないと、新電力会社としてもサービスを展開しづらいですが、今後はそういった懸念も払拭されていきます。
IoTと電力の複合は、電力事業だけではなく、一見すると全く別のサービスと結びつけられるポテンシャルがあります。つまり、これまでのエネルギー利用の最適化というエネルギー分野に限定された取り組みから、「人々の暮らし」にフォーカスを当て、デマンドサイドからのニーズを出発点とした多様な価値やソリューションの提供へと拡大していきます。
その一つとして、高齢者の見守りサービスが考えられます。得られた電力データから高齢者の生活パターン異常を検知することにより、独居老人等の高齢者の異常を早期に発見し、応急処置や搬送サービスを提供することができます。
また、電力の利用状況から宅配の効率化といったサービスの可能性もあります。在宅しているときと不在の際の電力利用データを元に、中央管理センターで分析し、導き出した効果的な宅配ルートにて配達する内容です。
ほかにも、ホームセキュリティサービスといったものも考えられます。電力利用のデータから宅内への侵入者を検知し、宅内にある家電等を適切に制御し侵入の防止及び警備会社への迅速な対応を促すサービスとなります。
スマートメーターのほかにも、スマートハウスといったものも、今後は増えていくと考えられます。スマートハウスとは、ITを使って家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅のことです。太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器や家電などをコントロールし、エネルギーマネジメントを行うことで、省エネを実現します。
こうしたスマートハウスが実現すると、屋内環境コンシェルジュといったサービスも可能となります。電力データを分析することで、保守・修理サービスやエネルギーを「創る・貯める・減らす」機器導入の有効性、さらにはリフォームの必要性を診断し、最適なソリューションを提案する内容です。
機器の修理サービスに関しては、電力データから家電等の異常を検知し、故障前のメンテナンスサービスや故障時の部品を事前準備するような内容が考えられます。こうすることで、保険ビジネスとのタイアップも期待できます。
電力利用データの活用により期待されるサービス例 出典:資源エネルギー庁
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
次の記事:省エネや補助金の獲得につながるIoT、新電力企業が取り組む実例から見る
前の記事:「じぶん電力」、プラン契約者が自分で再エネ電力の発電と利用をする仕組み
Facebookいいね twitterでツイート はてなブックマーク執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年04月19日
電力情報サービス「QUICK E-Power Polaris」の特徴や今後の展開について
QUICK社が提供する電力情報サービス「QUICK E-Power Polaris」は電力事業者向け情報をオールインワンで収集・可視化・分析できます。今回は「QUICK E-Power Polaris」の特徴や今後の展開についてについてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年04月15日
EVと並んで蓄電池と大きな関わりのある「エネルギーマネジメント」にテーマを絞って、蓄電池の今と未来を全6回に渡ってご紹介していきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年08月21日
積水化学工業(大阪市北区)は年間約10,000棟の戸建てを供給する大手ハウスメーカーだ。住宅そのものの性能向上に加えて、省エネ設備、太陽光発電を搭載し、光熱費収支ゼロ、エネルギー収支ゼロを目指した高性能住宅を展開している。さらに、蓄電池やV2Hといった蓄電技術を強化し、災害のレジリエンスを高め、昼も夜も電気を自給自足できる住宅を目指す。今回は積水化学工業の取り組みを紹介する。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年06月20日
コネクティドホームや、蓄電池やエネファームを組み合わせることで、より災害に強い住宅を実現するなど、エネルギーデータを活用した先進企業として、大和ハウス工業を紹介する。(前編)