ブロックチェーンが変革する社会の在り方、エネルギーや環境問題へのインパクト(2)
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一般社団法人エネルギー情報センター

WEFは9月、ブロックチェーンが環境問題に与える影響をまとめたレポートを発表しました。レポートでは、現在のシステムやアプローチを根本的に覆す8つの「ゲームチェンジャー」を特定しています。
④循環経済を活性化する
現在無駄になって廃棄されているものが、経済的に貴重なものとして扱われます。これにより、個人、企業、政府が循環経済を形作ります。
持続可能な行動(例えば、海洋プラスチックの回収、リサイクルまたは水保全)の見返りに、暗号化されたクレジットを個人または企業に付与する、早期段階のブロックチェーンアプリケーションが開発されています。
例えば、2013年に設立された「Plastic Bank」は、プラスチック容器、缶、ボトルなど、海洋から回収された廃棄をリサイクルする報酬として、現金ではなく、ブロックチェーン上で発行された暗号トークンを付与しています。トークンは、食糧、水などの物品と交換することができます。
他にも「RecycleToCoin」は、使用済みのプラスチック容器などと引き換えに、仮想通貨で報酬を得られるサービスを、ヨーロッパを中心に世界中で展開しています。
森林保全では、「Gainforest」が、スマートコントラクトを利用して、アマゾンの農民にインセンティブを与えるスキームを考案しています。クラウドファンディングが資金源であり、熱帯雨林の保全に繋がります。衛星を使用したリモートセンシングにより、森林の状態を検証し、ブロックチェーン技術を使用して資金転送するという仕組みです。
EPR(Extended Producer Responsibility)システムは、商品価格にリサイクル手数料を予め上乗せすることで、廃棄物のリサイクルを奨励しています。これは例えば、電子廃棄物などの製品に含まれる有害物質のリサイクルにかかる費用を補助するために行われます。
ブロックチェーンテクノロジーに基づくスマートコントラクトは、このプロセスの透明性、スケーラビリティ、効率を大幅に向上させます。つまり、EPRシステムの設定コストが非常に高く、システムに対する信頼性が低い市場での取り込みを可能にします。企業、政府、国際機関がこのユースケースを模索しています。
⑤炭素市場の変化
ブロックチェーンは暗号化の特徴を持ちつつ、トレーサビリティを保有できるため、既存の炭素取引を最適化できます。また、炭素クレジット取引に関して、新しい市場プラットフォームを作り出す可能性があります。
炭素取引の開始以来、取引の可視性とトレーサビリティの欠如、管轄区域の異なる標準と規制、二重集計など、様々な課題が発生しました。しかし、ブロックチェーン上で炭素市場を管理することで、プラットフォームの効率を高め、炭素取引の制約の多くを取り除くことができる可能性があります。
初期の例としては、Energy-Blockchain LabsとIBMが開発した中国の「Carbon Credit Management Platform」が挙げられます。目的は、スマートな契約の導入により、中国の炭素市場の透明性、監査可能性、信頼性を高めるものです。成功すれば、そのアプローチは世界中の炭素市場に広がる可能性があります。
そのほか、「Ben&Jerry’s」は、ブロックチェーンを使って、販売されたアイスクリームに炭素クレジットを割り当て、二酸化炭素の排出削減に貢献するスキームを導入しました。アイスクリームの購入者は、アイスクリーム作成の過程で排出された二酸化炭素を相殺することができます。
将来の道筋として、地域や世界の炭素市場において、個人や家計レべルで炭素配分を交換できるシステムが形作られる可能性があります。つまり、二酸化炭素を大量に排出する製品やサービスを消費したい個人は、他の人たちからカーボンクレジットやオフセットを購入するなど、「環境貢献への責任」の不足分を交換することになります。
⑥モニタリング、報告および検証
ブロックチェーンは、持続可能性の報告と保証、企業の管理、実証、改善を支援します。また、消費者と投資家が情報に基づいた意思決定を下すことを可能にします。この情報は、取締役会レベルの管理者までフィルタリングし、リスクと報酬を管理するためのより完全なスキームを提供します。
ブロックチェーンは、企業自身で行われる報告のデータを超えて、企業の業績を独立して調査し、検証できるようにします。そうすることで、企業の報告機能を強化する権限を持っています。この幅広い評価により、株主およびその他の利害関係者は、企業の業績および影響をより現実的に把握することができます。
ステークホルダーは、企業のサプライチェーン内の検証が可能であり、暗号化の報酬を得られます。例えば、サプライチェーン上の有機農家と企業とのやり取りが適正であるかを検証します。こうした方法は、政府や企業が環境戦略目標を達成するためのインセンティブとして働く可能性があります。
さらに、第三者の測定および検証ツール(衛星およびセンサーなど)と組み合わせることで、経営および投資家の意思決定を支援し、市場効率を改善し、変化を促進する独立した正確な情報を提供することとなります。
サステナビリティレポートの第三者保証をサポートするために、ブロックチェーンアプリケーションが開発されています。透明性とデータの信頼性を高めるために、認証機関からのデータを1つの元帳に照合するアプリケーションの試験が進められています。
これにより、リアルタイムの信頼できるデータにアクセスし、スマート契約を通じて自動データ収集と管理(例えば、GHG排出)を実現することができます。ブロックチェーンによるGHG会計の改善は、透明性と信頼性の高いGHG排出量データに基づいており、パフォーマンスが向上するため、炭素課税の有効性を高めるだけではなく、不正行為を最小限に抑えます。
ここでの重要な課題は、機密性の高いデータを頻繁に分散ネットワークに報告する必要のある組織側の意欲です。秘密鍵を介してデータが格納されているときは安全ですが、ハッキングにより、これらの情報がネットワーク上に公開される可能性があります。
⑦防災と人道支援
ブロックチェーンは、 相互運用可能な分散システム情報の共有を可能にすることができます。例えば、救助自体は個々人で実施される一方で、すべての救助関係者が透明性の高い活動ネットワークでつながります。
第4次産業革命による災害対策を実現するために、ブロックチェーンソリューションが開発され始めています。例えば、IBMは、American Red Crossと協力して、「Call for Code」という新しいイニシアチブの先頭に立って、自然災害に備えるための新しいアプリケーションを作成するよう開発者を集めています。
スマート・コントラクト・テクノロジーは、量、価格、タイミング、場所など、コミュニティーの配達ニーズに基づいて、どの契約オファーが利用可能な最良のものであるかを判断することができます。これにより、例えば飲料水の供給業者から、その水を配達するヘリコプターパイロットの経路を最適化し、配達を効率化します。
ここでの重要な課題は、災害準備と救援基盤を、公的機関と民間機関が保有する既存のシステム(早期警戒・動員)に統合することです。適切な信頼を確保し、知的財産とデータのプライバシー問題を解決することが特に重要になります。
⑧地球管理プラットフォーム
地理空間プラットフォームにより、地球環境に影響を与える開発ビジネスをモニタリングします。市場メカニズムを監視し、管理することで、結果的に世界中の環境資源を守ることができます。
生物多様性を確保するため、生息地などのデータ収集、管理、および取引が早期に進められています。例えば、Amazon Third Way initiativeは、地球銀行(EBC)を開発しています。これは、自然資産の空間的かつ時間的な起源を記録する、オープンかつグローバルな公的デジタルプラットフォームを作成するプロジェクトとなります。
海洋では、データアクセスを簡素化することで、偏りのない研究を可能にします。データに基づいた議論を促進するために、地球規模の海洋データプラットフォームが開発されています。
このオープンプラットフォームにより、ステークホルダーは海洋保全に基づく将来のロードマップと戦略を考慮し、海洋資源を包括的に監視することができます。ブロックチェーン技術をプラットフォームと統合することにより、漁獲権の確保や、より広範な取引を容易にします。
ブロックチェーンは、環境条件(汚染レベルや気象条件等)の観察のためにも利用できないかテストが進められています。これらのプロジェクトは、分散型データソース(センサーやウェアラブルテクノロジーなど)からのデータ収集と連携して、監視の精度と粒度を向上させます。また、他のテクノロジーと組み合わせて、予測とリスク軽減のパフォーマンスを向上させることもできます。
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執筆者情報

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