JEPXの価格変動リスクを抑える電力先物、金融により大勢が電力市場に参加できる可能性

2018年04月09日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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経済産業省は4月、電力先物市場の在り方に関する検討会の報告書をまとめ発表しました。適切な電力先物市場の創設に向け、「電力先物市場の在り方に関する検討会」が平成29年12月から計4回開催されており、それらの内容が取りまとめられております。

JEPXの価格変動リスクをヘッジする電力先物

自由化が実施される前までは、地域独占や総括原価方式により、電気事業者の負う価格変動リスクは最小限に抑えられていました。そのため、電力会社は価格競争といった概念から外れた市場で、非常に安定した経営で設備に投資し、安定した電気を届けていました。しかし、小売全面自由化が始まり、市場競争により価格低減の努力がなされる一方、電気事業者が負う価格変動リスクが増加しています。

現在、価格ヘッジは、相対契約によるデリバティブ取引やJEPXに設置されている先渡市場で実施されています。しかし今後、これらに加え、「電力先物市場」が創設されることで、取引参加者による多様な価格ヘッジが可能となります。東京商品取引所が2017年11月に発表した内容によると、2018年9月を目途とした上場を念頭として議論が進められています。

例えば、JEPXだけを利用する場合、将来の販売時に価格が上昇すれば、より多くの利益を得られますが、販売価格が下落した場合は損失を被ることになります。電力の特性から、発電設備の稼働状況や天候変化等を受けて需給が大きく変動するような場合、JEPXの価格は大幅に動く可能性があり、価格変動リスクが高いです。

一方、現物と先物を利用する場合、当初の想定より現物価格が下落し現物損失が出ても、先物利益でカバーできます。逆に現物価格が上昇した場合、先物の損失を現物利益でカバーできます(図1)。

ヘッジ取引について

図1 ヘッジ取引について 出典:経済産業省

海外の先物活用事例

既に海外の電気事業者においては、電力先物取引を活用した価格ヘッジが行われています。例えば、フランス最大手の電力会社EDF社では、現物取引が行われる予定の3年程度前から徐々にヘッジをしていき、前年には現物取引量の大部をヘッジする傾向にあります。徐々にヘッジ比率を高めていく中、電力の需要予測の見直しに伴い、ヘッジ戦略の具体的内容を頻繁に見直し、定期的にポジション管理を行っています(図2)。

そのほか、電力先物と燃料(石炭等)先物を活用することで、スプレッドを固定することが可能とされています。既に取り入れられており、売電価格と石炭価格との差を「ダーク・スプレッド」、ガス価格との差を「スパーク・スプレッド」といいます。このように欧州では、電力先物価格と燃料先物価格の動きを見ながらヘッジしていく取組もあります。

電力取引に関するヘッジ取引の事例

図2 電力取引に関するヘッジ取引の事例 出典:経済産業省

多くのプレイヤーが参加することで流動性を高める

商品先物市場では、一般的に当業者や金融機関、個人投資家など様々な者によって取引が行われています。当業者以外の者は、当業者とは異なり、売りと買いの同時注文による値差に着目して注文を出すことで、市場の流動性を高めることが期待されます。

当業者のみでは注文数が少なく、売り・買いの価格差が広くなることで約定できないケースが考えられますが、そこに非当業者が多様な注文を出すことで、売り・買いの価格差が狭くなり、取引が成立しやすくなると考えられます(図3)。

また、海外の燃料先物市場に参加する非当業者が参加することで、燃料先物市場とも連動する、より公正な価格形成が期待できます。 一方で、事業者による過度な投機的取引が行われることで、不適切な価格が形成されるおそれがあります。そのため、国内外のこれまでの実績や事例を参考に今後検討が進められ、必要に応じ具体的な措置(建玉制限やサーキット・ブレーカー制度)を講じることが必要であるとされています。

先物市場では全ての参加者が同等の条件で取引できるのが原則ですが、電気事業者とそれ以外の者との間で有する情報量の差が大きい可能性もあります。そのため、情報量の少ない中で取引を行うことのリスクや、発電設備の稼働状況等のインサイダー情報を利用した不正行為について、今後検討する必要があるとされています。

当業者以外の者の参加について

図3 当業者以外の者の参加について 出典:経済産業省

ヘッジ会計として認められるケースのガイドラインは今後検討

卸電力取引において、一定の要件を満たすことによってヘッジ会計が適用された場合は、ヘッジ対象の卸電力取引に係る損益とヘッジ手段である電力先物取引に係る損益を同一の会計期間とすることができます(図4)。しかし、個々の事案によってはヘッジ会計の適用要件を満たさないことから、ヘッジ会計を適用できない可能性もあります。

ヘッジ会計が適用されない結果、例えば電力先物取引に係る多大な評価損が計上された場合、ヘッジ目的で先物取引を行ったにもかかわらず、株主等ステイクホルダーから、投機的取引を実施したとみなされる可能性もあります。その対策として、電力先物取引についてのみヘッジ会計の適用について特別な取り扱いとする手段が考えられますが、金融商品会計基準との関係で、電気の特別扱いも困難です。

そのため、 ヘッジとして認められるケースのガイドラインを作成するなど、どのような場合に適用できるかといったことが予見できるようにすることが望ましいとされており、今後議論が進んでいくと期待されます。

ヘッジ会計の適用要件

図4 ヘッジ会計の適用要件 出典:経済産業省

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