世界最大の浮体式洋上風力発電所、スコットランド沖で稼働開始
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2017年10月31日
一般社団法人エネルギー情報センター

10月18日、ノルウェイのstatoilは浮体式洋上風力発電所をスコットランド沖で稼働開始したと発表しました。タービンの総出力は30MWで、浮体式洋上風力発電において世界最大規模であり、全長は253メートルに達します。その内の78メートルが海面下に沈み、構造物はバラストで浮上、ブイのように直立します。1基当たり3もの係留ケーブルが繋がることで安定する構造となります。
世界最大の浮体式洋上風力発電が稼働
海洋は世界の約70%をカバーしており、潜在的にはエネルギー資源を多く保有するものの、そのほとんどが利用されていません。こうした海洋の土地を利用する発電方法に洋上風力がありますが、陸上風力と比較するとコストが比較的高くなる傾向にあります。
ただし、洋上風力のコストも徐々に下がってきており、例えば2016年7月のオランダ政府の発表によると、ボルッセーレⅠ、Ⅱ計画(各35万kW)の入札において、最安値が7.27ユーロ・セント/kWh(約9.5円/kWh)となりました。その他、スウェーデンのVattenfallは、2016年11月にバルト海における洋上風力プロジェクト(60万kW)を、49.9ユーロ/MWh(約6.5円/kWh)で落札したと発表しています。
洋上風力のコストをさらに引き下げる可能性がある技術として、浮体式洋上風力があります。この浮体式洋上風力を、ノルウェイのstatoilはスコットランド沖で稼働開始したと発表しました。タービンの総出力は30MWで、浮体式洋上風力発電において世界最大規模であり、全長は253メートルに達します(図1)。
その内の78メートルが海面下に沈み、構造物はバラストで浮上、ブイのように直立します。1基当たり3つ、5基全体では15もの係留ケーブルが繋がることで安定する構造となります。
図1 浮体式洋上風力発電所「Hywind Scotland」 出典:statoil
800メートルの水深でも設置可能
今回の浮体式洋上風力発電「Hywind Scotland」に用いられる風車は、翼長75メートルの羽根を3枚組み合わせた直径154メートルという規模になります。1基あたり6メガワットの出力があり、その風車が5基設置されるため約2万世帯に電力を供給する能力となります。
風車の全長は253メートルとなり、その内の海面部分は最大175メートル、海面下は78メートルとなります。構造物はバラストで浮上し、ブイのように直立します。設置場所は水深が95~129メートルとなっており、海底と風車が係留ケーブルでつながることで、安定するようになっています(図2)。3つの係留ケーブルと60トンの重りを各ケーブルの中点から垂らして張力を追加するバラストカテナリーレイアウトを採用しています。
着床式の洋上風力発電では、水深が50メートルを超えると採算性を確保することが難しくなってきますが、statoilによると、Hywindは浮体式のため800メートルの水深でも設置可能としています。
発電所はスコットランド北東部Aberdeenshire州Peterheadの沖合25キロの海面上に設置されています。この地域においては、平均風速は約10メートル/秒で、平均波高は1.8メートルとなっています。
図2 「Hywind Scotland」の概要 出典:statoil
2030年までに40〜60ユーロ/MWhを目指す
statoilは、風力エネルギー利用における先駆的企業の一社であり、既に100万人以上の家庭に洋上風力発電を供給できる資産を有しています。例えば、Statoilは、2012年から生産を開始している英国のheringham Shoal風力発電所を運営しています。加えて、Dudgeon洋上風力発電所も完成しており、電力生産も開始されています。
Statoilは2016年にドイツのArkona洋上風力発電所の権益50%を取得し、2019年に電力を供給する予定です。10月には、ブラジルに162MWのApodi太陽光発電を建設する準備をしており、40%の権益を取得すると発表しました。
浮体式洋上風力発電所は、2001年から開発を進めています。2009年には、浮体式設備で2.3MWの風力タービンのパイロット運転を行いました。開始以来、40GWhを超える電力を生産しており、40m/sの風速と19mの最大波高においても、システムの完全性が確認されています。
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