日本初、東急不動産が分譲マンション単独でCO2排出削減効果をJ-クレジット化
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2017年06月20日
一般社団法人エネルギー情報センター
6月19日、東急不動産および東急不動産R&Dセンターは、東急不動産が分譲した集合住宅「ブランズシティ品川勝島」の専有部におけるCO2排出削減効果について、J-クレジット認証を受けたと発表しました。分譲マンション単独としては、国内で初めての事例となります。
日本初の分譲マンション単独によるJ-クレジット化
J-クレジット制度は、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。平成25年度より国内クレジット制度とJ-VER制度が一本化され、経済産業省・環境省・農林水産省が運営しています。
クレジット創出者のメリットとしては、ランニングコストの低減効果、クレジットの売却益、温暖化対策へのPR効果、新たなネットワーク構築などが挙げられます。購入者のメリットは、低炭素社会実行計画の目標達成、温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告、カーボン・オフセットへの活用、省エネ法での活用、CSRへの活用などが挙げられます。例えば電気事業者に関しては、排出係数の調整にも利用できます。
このようなメリットもあり、2017年3月22日時点の実績において、登録プロジェクト件数は208件(削減見込量:490.2万 t-CO2)、認証回数は延べ349回(累計認証量:242.3万 t-CO2)と右肩上がりに伸びています(図1)。
図1 プロジェクト登録件数・クレジット認証回数の推移 出典:J-クレジット制度事務局
このJ-クレジットについて、東急不動産および東急不動産R&Dセンターは、東急不動産が分譲した集合住宅「ブランズシティ品川勝島」の専有部におけるCO2排出削減効果について、認証を受けたと発表しました。分譲マンション単独としては国内で初めての「コージェネレーションの導入」に基づいたJ-クレジットとなり、同マンション共用部の電力使用に伴うCO2排出量の一部をオフセット(相殺)しています。
「ブランズシティ品川勝島」では、世界初のマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」といった先進的な省エネ設備が導入されています(図2)。このエネファームにより創り出されたクリーンなエネルギーは、一般家庭で年間約1トン/戸(マンション(専有面積80㎡)3人家族)のCO2の排出削減効果に繋がるものです。分譲総戸数335戸(非分譲含まず)の「ブランズシティ品川勝島」の場合、年間でおよそ最大335トンのCO2排出削減に繋がります。
図2 ブランズシティ品川勝島の外観とマンション向け燃料電池 出典:東急不動産
今回のJ-クレジット認証を受けた時期は、2017年3月です。専有部におけるCO2排出削減効果94トン(2015年10月~2016年9月の1年間)が対象となります。その後、2017年6月12日付で、この認証されたクレジットは「ブランズシティ品川勝島」におけるCO2排出量の一部のオフセットに利用されました。同期間の共用部の電力使用に伴うCO2排出量の約2/3が対象となっています(図3)。
「ブランズシティ品川勝島」では、東急不動産R&Dセンターを事務局として、「ブランズシティ品川勝島 省エネ・創エネ倶楽部」を運営しています。この「省エネ・創エネ倶楽部」は、「コージェネレーションの導入」に基づくCO2排出削減効果をJ-クレジット化するプログラム型プロジェクトであり、2015年に共同住宅単独では国内で初めて登録が行われたものとなります。
図3 「ブランズシティ品川勝島」におけるCO2排出削減プロジェクトのイメージ” 出典:東急不動産
ブランズシティ品川勝島における省CO2の取り組み
「ブランズシティ品川勝島」では、今回のJ-クレジット化の他にも、国土交通省「平成25年度(第2回)住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」の基幹物件として、以下のような取り組みが行われています。
- 建物外皮の断熱性能向上により「低炭素建築物」に認定
- 世界初のマンション向け燃料電池エネファーム全戸採用
- クラウド型HEMSにより、お客さまの「エネルギー見える化」を図ると共に、東京都市大学との共同研究でエネルギーとライフスタイルの相関を分析
- 太陽光発電+定置型蓄電池+EVカーシェアリングを連携するマルチパワコンシステムとMEMSにより共用部の電力をデマンドコントロール
- 「熱環境改善サポートプログラム」「エコな暮らし塾」などにより、住まい手の省CO2行動を誘発
こうした省エネ・健康・快適な生活環境につながる先進的な技術の活用や行動の普及を促す取り組みが、持続可能な社会づくりに繋がっていくことが期待されます。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年08月05日
脱炭素社会への移行期に注目されるトランジションファイナンスPart1~政府が約20兆円規模の移行債を発行へ
日本郵政が国内初、200億円の移行債を発行してから、各業界企業で動きが進んでいる「トランジションファイナンス」。脱炭素へ一気に移行しづらい産業の取り組みを支援するものです。2回にわたってご紹介します。Part1では、その概要や企業事例についてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年03月09日
自然災害増加の中、保険業界が支援する持続可能な再生可能エネルギー事業
ここ数か月、保険業界から自然災害による太陽光発電設備の被害による廃棄や近隣への賠償に関する保険商品が発売されています。今回は、脱炭素社会に向けて、保険業界が再生可能エネルギーの持続的な普及をサポートする取り組みを紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年12月10日
エネルギー業界で拡大する環境債の発行、洋上風力など再エネ投資に利用
世界のグリーンマネーは3,000兆円を超えているとも言われ、金融市場にも脱炭素の流れが押し寄せています。その中でも環境債の発行実績の伸びは著しい状況です。そのような中、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再エネ設備投資等のために電力会社による環境債(グリーンボンド)発行が相次いでいます。今回はそれら状況について整理していきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2020年05月05日
国内メガバンク、3社とも新設石炭火力発電への投融資を停止、気候変動対策への対応強化
昨年の三菱UFJフィナンシャルグループの発表に続き、みずほフィナンシャルグループおよび三井住友フィナンシャルグループが新設の石炭火力へのファイナンスを原則停止する方針を公開しました。これにより、3大メガバンクが石炭火力への対応につき概ね足並みを揃えることとなりました。
一般社団法人エネルギー情報センター
2020年03月13日
債権やローンを活用した再エネ・省エネ事業に要する資金調達、環境省ガイドライン改訂
日本においては環境省が、国際資本市場協会のグリーンボンド原則との整合性に配慮しつつ、グリーンボンドガイドラインを2017年3月に策定しました。策定後約3年が経過し、その間にグリーンボンド原則の改訂や、グリーンボンド発行事例の増加に伴う実務の進展等の状況変化が生じている中、2020年3月、グリーンボンドガイドラインの改訂版が新たに策定されました。