太陽光発電の適地を見出す取り組みPart1 注目のソーラーカーポートに迫る!
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2022年05月27日
一般社団法人エネルギー情報センター
2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)目標の達成に向けて、太陽光発電設備の適地に関する議論が活発化しています。今回は、太陽光発電の適地を見出す取り組みPart1として、現在注目されているソーラーカーポートについて先進的な事例を交えてご紹介していきます。
太陽光発電設備の適地が減少?その背景とは
日本の再エネ導入量は世界第6位で、このうち太陽光発電は世界第3位となっています。2022年4月21日に開かれた、「第1回 再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」でも、2012年から 2019年の7年間で約3倍という導入スピードは、世界トップクラスであることが説明されました。また、国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は主要国の中で最大となっており、平地面積でみるとドイツの2倍にもなっているということです。
一方で、地域におけるトラブルが増加しており、2016年10月~2022年2月末で850件の相談があるということで、再エネの導入による地域住民の懸念が顕在化し、実際、法令遵守できていない設備や地域で問題を抱えている設備が存在していることが改めて議題に上がりました。
こうした流れから、今、太陽光発電設備の新しい視点での適地について、注目が集まっています。そのひとつの選択肢がソーラーカーポートです。
ソーラーカーポートとは
ソーラーカーポートとは、駐車場(カーポート)の屋根部分に太陽光パネルを設置した発電装置です。特徴としては、電力需要施設の敷地内に存在する駐車場という空間の有効活用にあります。
カーポートの屋根として太陽光発電パネルを用いる「太陽光一体型カーポート」と、カーポートの屋根上に太陽光発電パネルを設置する「太陽光発電搭載型カーポート」の2種類に分けられています。
太陽光発電は住宅や工場など建物の屋根に設置するケースが一般的とされてきた中で、駐車場の駐車スペースを確保したまま、駐車場の上部空間を利用した太陽光発電を実現できるとして近年、導入が増えてきています。
メリットは、先述した通り、駐車場の上部空間のみを利用するためスペースを圧迫せずに発電可能であることです。加えて、駐車場は電力需要施設に隣接しているため、需要施設の敷地内に発電適地があることで、自家消費が容易であることがあげられます。一方留意点は、建築基準法上の建築物に該当するということです。そのため、建築基本法上に則った設計・施工・管理が必要になります。
令和4年度の環境省支援事業でも、「駐車場を活用した自家消費型の太陽光発電の導入支援事業」の公募が開始されています。
先進事例!福島県の東北最大規模のソーラーカーポート
4月15日、福島県喜多方市にある機械部品製造のマツモトプレシジョンの本社工場に、ソーラーカーポートが導入され、竣工式が行われました。154台分の駐車区画に設置。パネルは1975枚で、発電容量は約670 kWとのことです。これは1年間で約170世帯分の電力を発電することになり、東北最大規模となります。
太陽光発電のカバー率は約20%と想定しています。その他は電力会社からの購入分は化石燃料由来でないことを示す非化石証書を活用し、使用電力をすべて再生可能エネルギーで賄う「RE100」を目指します。福島という地域の環境、気象条件も考慮して、150センチの積雪に耐える設計になっているということです。
他の中小企業の先進事例になるといわれている背景には2つあります。
1つ目は、脱炭素社会の実現に向けて、部品供給先の大手メーカーが、サプライヤーにも脱炭素を求める動きが広がっていることです。サプライチェーン(供給網)全体で二酸化炭素(CO2)削減に取り組む必要があります。
2つ目は、自家消費型PPAモデルのため、初期投資ゼロであることです。その上、運用していく中で電力調達コストが下がれば、大きく投資がしにくい中小企業でもCO2削減や再エネ100%を目指しやすくなるのではないでしょうか。
世界初!EV充電ステーションとカーシェアリングサービスの組み合わせ
次にソーラーカーポートと蓄電・制御システムを組み合わせ、給電も再エネ由来で賄い、さらにカーシェアリングサービスを融合させた世界初めての取り組みについて、ご紹介をします。
4月4日、中国電力は広島市の協力の元、太陽光発電のみの電力で運用する「完全自立型EVシェアリングステーション」の実証事業を開始すると発表しました。車両の電動化と使用電力の脱炭素化を同時達成するモデル事業です。
EVステーションは、広島県立広島産業会館の駐車場を利用。発電容量約11kWの太陽光パネルを搭載するソーラーカーポートと、容量10kWhの定置型蓄電池を3基、同1kWhの可搬型蓄電池を8個設置します。EVシェアリングサービスでは、日産リーフなど2台を予定しており、平日は複数法人でシェアし、休日は地域のお客様でシェアすることで、効率的な利用と費用負担の分散化を実現します。
EVが使われる昼間の時間帯に発電した太陽光発電の電力を貯めておき、夜間に蓄電池からEVに充電することで、電力系統から完全に分離・独立したシステムを構築。実証事業のん中で、今後の商品化も検討していくということです。
今後の市場拡大を見据えた、中国メーカーの差別化商品
最後に、屋根一体型ソーラーカーポートに活路を見出し、差別化商品の販売をしている企業をご紹介します。世界一の出荷数を記録したこともある中国「英利緑色能源」の子会社の太陽光パネルメーカーのインリー・グリーンエナジージャパンです。
「火災や暴風雨、地震などにも耐えるソーラーカーポート」をコンセプトに、高い耐久性をもつ安心安全な製品を目指しています。特に、高い評価を得ているのが、防火地域のニーズに対応した、防火仕様の屋根一体型ソーラーカーポート「MOENZO(燃えんぞぅ)」です。
MOENZO(燃えんぞぅ)は、シースルーの両面発電モジュールと上質なアルミステンカラーを採用しています。さらに、飛び火に対しての高い耐火性能をもち、屋根一体型ソーラーカーポートとしては日本初となる国土交通省の認定を取得しています。また、雨や風、雪などの自然災害に対しても高い耐久性を発揮。その裏付けとして、30年という長期保証を実現しています。
このように、ソーラーカーポートが増えていくことが予想されます。先進的な事例としては他にも例えば、afterFIT社が手掛けたホームセンター「ケーヨーデイツー八街店」敷地内の駐車場を利用した強化に向けたソーラーカーポート導入事業などもあります。雨天時などの駐車場利用の利便性向上になることや、地域社会の災害時のレジリエンス強化にもつながるということです。(ご参考: https://www.env.go.jp/earth/jirei%E3%83%BC.pdf )
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年09月27日
太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表的な存在として世界中で注目を集めています。その中でも、シリコン太陽電池に次ぐ次世代のエネルギー技術として「ペロブスカイト太陽電池」が大きな注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では難しかった場所での活用が期待されていることから、多様な分野での普及が期待されています。 2024年度には福島県内での実証実験が予定され、日本国内でも本格的な導入に向けた動きが始まっています。注目が集まるペロブスカイト太陽電池について、2回に渡りお伝えします。第1回目では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やメリット、そしてシリコン太陽電池との違いについて、詳しく解説していきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年08月28日
2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策について
再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が進み、導入量が増えた結果、 電力需要が低い時期には「発電量過多」になり、全国的に 出力制御 が行われるようになってきました。この出力制御について、2回に渡りお伝えしています。 1回目はそもそも出力制御とは何か、増加している要因、過去の事例についてお伝えしました。今回は、経済産業省・資源エネルギー庁が優先給電ルールに基づく新たな施策を公表したので、その内容をご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年07月18日
太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてー
太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛についてをお伝えしました。2回目は盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年06月13日
太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてー
太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。第2回にわたり銅窃盗の再生エネルギー戦略への影響と各企業の防止策についてご紹介します。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛について、2回目は太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年04月06日
次世代太陽光発電「ペロブスカイト太陽電池」、国内外の最新動向と日本の戦略
今回は、ペロブスカイト太陽電池市場の規模拡大や国内の導入事例、海外の動向、そして今後の日本の戦略について紹介します。