分散型・グリーン売電市場
日本卸電力取引所(JEPX)が2012年に創設した新たな市場の事です。売り手が販売価格・販売量・売り条件(期間や曜日)等を任意で設定できる仕組みです。
出力1000キロワット未満の小規模電力に加え、太陽光発電や自家発電の余剰分など供給量が状況次第で変わる電力も取引できます。
背景
分散型・グリーン売電市場が誕生した背景には、コジェネ導入の推進があります。コジェネとは“コージェネレーション”の略で、天然ガス・石油・LPガス等を燃料として、エンジンやタービン等により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収する、熱電併給システムです。
1980年代から導入が進み、平成27年にはストックで1000万キロワット以上まで普及してきています。工場の熱源、冷暖房・給湯などに利用でき、熱と電気を無駄なく利用できれば燃料が本来持っているエネルギーの約75~80%と、高い総合エネルギー効率を実現可能になり、大幅な省エネ・省CO2が期待できます。
電力取引市場の活性化により、厚みを持った市場が形成されれば、コジェネで発電した電力を売電して、有効活用する取り組みの増加が期待できるとも考えられています。コジェネ由来の電気がさらに取引しやすい環境を整備するためにこの市場が創設されました。
取引の流れ
以下が取引の主な流れとなっています。
① まず売り手は、電力量や売電期間、希望価格、トラブル時の負担などの条件を自由に決めて掲示板に掲示します。
② それを閲覧した買い手は必要に応じて質問等をし、入札を希望する場合は取引所に入札の条件を伝えます。
③ そして売り手は条件の最も良いものを選定し、取引所に連絡します。
④ 取引所は売り手と落札者に最終確認をします。
⑤ 当事者間で売買契約を結びます。
⑥ 電気の受渡・清算を行います。
日本卸電力取引所が電力を買い取っているのではなく売買の場を提供しており、条件の設定や電気を売るのに必要な情報の設定など、売り手へのアドバイスも実施しています。市場を通じて売りの掲示を行うことによって自社で買い手を探す手間がなくなります。効率的に最も良い条件の買い手を選択できるようになるという事がこの市場のメリットです。
想定している対象電源
- 分散型電源の余剰分
- 全量買取対象電源
- グリーン電力の卸電源
発電の種類は、自家発電設備やコジェネ発電設備に限定しておらず、非常用電源設備からの発電などでも売電可能です。また、発電設備1台で発電した電気でも、複数台まとめて発電した電気でも売電可能です。
ほかの市場との違い
日本卸電力取引所は、“スポット市場”(翌日に受け渡される30分単位の電気を対象として,入札の方法による実物取引により定期的に実施される取引)や“時間前市場”(数時間後以降に受け渡される30分単位の電気を対象として,入札の方法による実物取引により定期的に実施される取引)でも取引を行っています。
しかし、これらには最低取引単位があったり、入会金・取引手数料を負担しなければならなかったりしました。それに対して、“分散型・グリーン売電市場”では、最低取引単位を撤廃し、入会金・取引手数料も不要になります。
社会に与える影響
この市場では電源の卸電力取引所への参加を容易にするとともに、指標としての取引価格を明らかにする環境を整備しました。こうした取り組みから、新たな分散型電源の導入が促される効果があると考えられます。
市場を通さず企業が電力会社や新電力に電気を直接売る取引も盛んになる可能性もあります。また、電気をいつでも売れるようになったことにより、企業は自家発設備を導入しやすくなります。