3E+S

3E+Sとは

エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)、安全性(Safety)から成り、日本のエネルギー政策の基本となる概念です。

背景

2014年4月11日、今後の日本国におけるエネルギー政策を示した「エネルギー基本法」が策定されました。この基本法における政策は、2003年の第一次計画、2007年の第二次計画、2010年の第三次計画の次の第四次計画にあたるものです。

近年、東日本大震災での福島第一原子力発電所での事故や北米からのLNGの供給など、日本のみならず、国際的なエネルギー供給構造が変化しつつあります。そんな中、中長期的、総合的かつ計画的なこのエネルギー政策の中で、基本的視点として「3E+S」がおかれました。

変遷

第三次計画まで、それまで3Eのベストミックス確保を基本として、日本はエネルギー政策を推し進めてきました。これは、当時、化石燃料に国の電源の多くを頼っていた中、第一次オイルショックを受けて日本のエネルギー政策は変更を迫られ、現在の基となる3Eが生まれました。これにより、化石燃料に多くを頼る電源構成からの脱却し、分散型の電源にしました。同時に、災害時など、国内有事におけるエネルギーの安定供給を目指しました。

2011年東日本大震災及びそれに伴う福島第一原子力発電所事故を受けて、安全性において大きく議論されました。それによって、世論が原子力発電反対に大きく傾き、原子力の安全性の問題から国内の原子力発電所が次々と停止しました。これを受けて、第四次計画において安全性(Safety)を盛り込んで、3E+Sが誕生しました。

3E+Sについて

3E+Sが意味している用語は、上記1に示した通りです。

エネルギー政策において、安全性(S)を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に環境への適合を図るため、最大限の取り組みを行うというものです。エネルギーというものは、人間のあらゆる場面において必要不可欠であり、活動の根本を支えています。したがって、今後とも持続的に発展し続けるためには、安定的で社会負担の少ないエネルギー供給が前提条件となります。

しかし、福島第一原発での事故による日本の電源の割合の変化や、電力の小売り全面自由化など、エネルギー需給構造が大きく変化しつつあります。このような、変化の中で、上記の前提条件を守りつつ、エネルギー政策に取り組むための視点です。

補足ではありますが、3E+SにMを加えて3E+S+Mで電源を評価することもある。この時のMは経済インパクト(Macro impact)を指します。

3.11を受けてのエネルギー政策の変更

2014年策定のエネルギー基本計画では、将来の電源構成を具体的な数値で示しませんでした。これに関しては、原子力発電が今後どううなるのか、世論も含め見通しが立たなかったからであると考えられます。

そこで、2010年に示した、一つの指標として、2030年のエネルギー需給の姿として、ゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%とするとされていた。しかし、Safetyの観点から、現在原子力発電が見直されている。そのことにより、鳩山由紀夫首相(当時)が国連の気候変動サミットで2020年までの目標として設定した、90年比で25%のCO2削減の目標を、13年に石原伸晃環境省(当時)が05年比3.8%の削減に引き下げました。25%引き下げの背景に原子力発電電源の推進が含まれていたからです。

電源構成への影響

3E+Sのすべてに適応するエネルギー源はないため、電源構成はそれぞれのエネルギー源ごとの特性を考慮した、バランスのとれた柔軟で多層的な需給構造を構成する必要があります。日本の電力需要の特徴は昼夜でロードカーブが大きく変動することから、それぞれのエネルギー源をコストや出力変動・発電量などの能力に応じて、ベース・ミドル・ピーク電源の三つの要素に役割を分担し組み合わせています。

ベース電源とは主に流れ込み式水力・原子力・石炭火力に当たり、年間を通して安定的に一定量の電源を供給する電源です。

ミドル電源はLNG火力・石油火力などの火力発電が利用され、電源需要が高まっても対応がしやすく、一定出力を得られやすいことが特徴です。ピーク電源は調整式・貯水池式・揚水式水力などの水力発電で、発電量が調整しやすく急激な需要変動への対応がしやすいため利用されています。再生可能エネルギーは、一定量の安定供給が可能な地熱・水力・バイオマス発電をベース電源に、自然条件による出力変動が大きい太陽光・風力発電に関しては出力のバックアップとして火力発電と組み合わせて活用していくこととしています。

ベース、ミドル、ピーク電源について

出典:経済産業省

国際的な流れ

現在、直面しているエネルギーをめぐる環境変化の影響は、日本国内のみならず、世界的な流れとして、多くの国に及んでいる。エネルギー分野においては、海外から発電のための燃料の多くを依存している日本をはじめとし、ほとんどの国がそれぞれ一国のみで十分な対応をすることは出来ない場合が多くなっています。

そんな中で、国際間で協力することが非常に大切であると同時に、日本国のエネルギー産業の競争力を強化していく必要があります。

今後の日本のエネルギー政策と3E+S

発電において、3E+Sの観点から理想的な電源は存在しません。どの電源においても長所もあれば短所もあるものです。原子力発電でいえば、3Eに関しては非常に優れています。二酸化炭素は排出しませんし、効率よく発電できます。しかし、3.11のように一度事故が起これば、大事故となってしまいます。

そんな中、国際的な流れ及び二酸化炭素排出削減目標に向かうにあたり、エネルギー政策の根幹を成す3E+Sを大切にして、再生可能エネルギーを増やしていくと考えられます。

日本のエネルギー政策をどうとらえるか

3E+Sの観点から言えば、3.11を受けて原子力発電は安全性に大きく欠けるといえると思われます。確かに、安全性は第一に考えなくてはならなりませんが、その理由から原発をゼロにすれば、今度は化石燃料由来の電源が多くなり、コストがかかり、また二酸化炭素排出の観点から環境適合性に問題が生じたり、エネルギー政策でまた大きな転換を迫られることになるかもしれません。

このように、各電源に関して、3E+Sの観点から慎重に長所短所を議論して、広い視野から今後のエネルギー政策を見ていく必要があります。