エネルギーデジタル化の最前線 第19回
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

幅広いIoT機器に対応するプラットフォームを提供。AIによる電力と生活環境データ解析をもとに、お客様にあわせた独自のサービスを開発。ソフトバンクグループのベンチャー企業、エンコアードを紹介する。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)
事業モデルはBtoBtoC
エンコアードの事業の特徴は、BtoBtoCであることだ。同社の直接の顧客は事業者(パートナー)であり、コンシューマ(家庭)に対しては、パートナーがサービスを提供する。パートナーは、たとえばマンションデベロッパーやハウスメーカー、介護施設などだ。エンコアードがパートナー向けに提供するのは、エネトークやエネトークタッチといったIoTデバイスと、顧客管理・分析ツールを乗せたプラットフォーム、アンケート機能を含むアプリ等のタッチポイントである。
パートナー向けに提供する顧客管理・分析機能を活用する際は、パートナーである企業がサービスを提供する家庭から利用許可の承諾を取る必要があるが、事業上の利便性は極めて高いと思われる。たとえばマンション管理会社であれば、組合会合が今週末にあることを居住者に通知することもできる。スーパーの割引セールを通知するなど、広告媒体としても使える。アンケート機能を通じて、家庭からアンケートを取ることもできる。このアンケート機能は、ポイント機能と組み合わせることも可能だ。「ここまで可能にするプレイヤーはまだないのではないか」と中野氏は自信をのぞかせる。
親会社のソフトバンクはBtoBtoC、BtoC、BtoBの全てを手掛けている。しかし、エンコアードにとっては「BtoCはそんなに簡単ではない」(中野氏)と慎重姿勢を崩さない。「BtoCで売れている商材の条件のひとつはわかりやすさ。よりサービスを高度化しようとすると説明商材になってしまう。これはコンシューマビジネスにとっては必ずしも好ましくない」と分析する。
IoT商材の難しさは価格と機能のバランス
中野氏によると、IoT商材を本格的に普及させるには依然として課題があるという。「生活を便利にするものではあるが、マストな商材ではないでので、月額1,000円を超えると売れないと見ている。
市場に展開する場合は、HEMSの代わりなら(エンコアードの標準価格は)10分の1程度なので違和感がないが、本当に普及させたいと思ったら、もっと価格を下げて、もっと簡単にしないといけない。」これまで同社が手掛けてきたのは、HEMSの代替にもなるハイエンドモデルとも言える位置づけだった。今後、より簡単に、より多くの顧客層に使ってもらえるよう、ターゲットによってラインナップを拡充する方針だ。
マーケットはアーリーアダプターへの展開が始まったばかり
中野氏は「一番大切なのは広く多くの方に使って頂くことだ」と語る。「もともとIoT商材はすぐ売れるようなものではないが、一方でアーリーアダプターは必ず存在する。そのような方にまず先頭を走って頂き、インフルエンサーになっていただくことも必要だと思う」。
エンコアードは、横浜市住宅供給公社が手掛ける大型の新築分譲マンションに、エネトークと家電コントローラーを導入している。実際に使っているユーザーからは次々とフィードバックが届く。たとえば、共働きの家庭では、互いの帰宅状態が判るようになって便利になったという声。夏暑い日にはエアコンを外部からつけられて、しかも動作が確認できて便利という声。こうした家庭から届く声を、今後のサービス開発に活用していくだけでなく、いかに拡散していくかが、鍵となる。
今後の展開
今後の展望のひとつとして、SBパワーと一緒になった利用ユーザー間のコミュニティ形成まで視野に入れている。アプリのなかにアンケートに回答するとポイントが付与される仕組みが入っているが、プラットフォームのなかでポイントを使ったり、提携先の他社ポイントに変換したりすることも今後検討していく。国内IoT市場を大きくするためには、デバイスを展開するだけでは十分でない。常に新しい仕組みやサービスを提供していかなければならない。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月18日
第3回は、第2回で整理した前提を受けて、データセンターが実際に直面する「調達・運用設計」を取り上げます。需要の適地が見え始めても、kWhと、環境価値と調整力を、運用まで含めて矛盾なく束ね、投資判断と工期を止めない形に落とし込めるかです。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月06日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第2回】立場ごとの時間軸と評価軸
前回は、系統用蓄電池が議論の「前提」として扱われるようになった背景を、三つの流れの合流として整理しました。制度が整い、コストが下がり、再エネの導入量が増えた。その重なりが、蓄電池を自然に検討の出発点に置く状況を形作っています。 ただ、同じ前提を共有しているはずの場で、同じ対象を扱いながら議論の焦点が重ならない場面が見受けられます。情報量が増え、関係者が増え、検討が深まるほど、情報の整理に要する前提条件が増えるという感覚を持つ担当者も少なくありません。 今回は、その背景にある構造を取り上げます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月26日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか【第1回】前提化が生まれた三つの流れ
ここ数年、系統用蓄電池という言葉が特別なテーマとしてではなく、電力分野の議論の中で自然に登場する場面が目立つようになりました。再エネ拡大や需給調整、市場制度、投資環境など、異なるテーマを扱う会議や資料の中で、蓄電池が前提として語られること自体、もはや珍しくありません。 議論の入り口は補助金、価格差、市場、系統運用などさまざまですが、気づけば、かつて導入の是非や実証が主題だった蓄電池は、最初から存在する前提条件のように扱われ始めています。 本稿では、この前提化を形作っている要素の重なりを並べながら、背景を見つめ直すところから始めます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月19日
第2回は、第1回で揃えた前提で、GX戦略地域が目指す官民の工程表を揃える仕組みを整理しつつ、各ステークホルダーの実務の論点まで言及して行きます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月12日
【第1回】AIデータセンター時代のシステム設計:ワット・ビット連携、GX戦略地域、PPA・電源ポートフォリオの実務論点
データセンターは、地域の電力インフラ設計を左右する存在へと変わりつつあります。背景には、需要施設の増加や、高負荷率・増設前提という運用特性に加え、脱炭素の要件も加わり、結果として、電力の「量」だけでなく「確実性」と「環境価値」が事業の成否を分ける事が挙げられます。
こうした状況の中で、日本でも制度設計が大きく動いています。具体的には、系統用蓄電池における系統容量の「空押さえ」問題に対して規律強化が議論される一方、国としてはワット(電力)とビット(通信)を一体で整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、自治体誘致やインフラ整備を含めた「GX戦略地域」等の枠組みで、望ましい立地へ需要を誘導しようとしています。さらに、需要家側では、脱炭素要請の高まりを受けて、PPAなどを通じた環境価値の調達や、電源ポートフォリオ(再エネ+調整力+バックアップ等)をどう設計するかが、契約論を超えて運用設計のテーマになっています。
本シリーズでは「AIデータセンター時代のシステム設計」を、①ワット・ビット連携、②GX戦略地域、③PPA・電源ポートフォリオの実務論点――という3つの観点から、全3回で整理します。日本の最新の制度設計と接続して、実装するなら何が論点になるかに焦点を当てるのが狙いです。







