エネルギーデジタル化の最前線 第19回

2023年05月19日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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幅広いIoT機器に対応するプラットフォームを提供。AIによる電力と生活環境データ解析をもとに、お客様にあわせた独自のサービスを開発。ソフトバンクグループのベンチャー企業、エンコアードを紹介する。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

事業モデルはBtoBtoC

エンコアードの事業の特徴は、BtoBtoCであることだ。同社の直接の顧客は事業者(パートナー)であり、コンシューマ(家庭)に対しては、パートナーがサービスを提供する。パートナーは、たとえばマンションデベロッパーやハウスメーカー、介護施設などだ。エンコアードがパートナー向けに提供するのは、エネトークやエネトークタッチといったIoTデバイスと、顧客管理・分析ツールを乗せたプラットフォーム、アンケート機能を含むアプリ等のタッチポイントである。

パートナー向けに提供する顧客管理・分析機能を活用する際は、パートナーである企業がサービスを提供する家庭から利用許可の承諾を取る必要があるが、事業上の利便性は極めて高いと思われる。たとえばマンション管理会社であれば、組合会合が今週末にあることを居住者に通知することもできる。スーパーの割引セールを通知するなど、広告媒体としても使える。アンケート機能を通じて、家庭からアンケートを取ることもできる。このアンケート機能は、ポイント機能と組み合わせることも可能だ。「ここまで可能にするプレイヤーはまだないのではないか」と中野氏は自信をのぞかせる。

親会社のソフトバンクはBtoBtoC、BtoC、BtoBの全てを手掛けている。しかし、エンコアードにとっては「BtoCはそんなに簡単ではない」(中野氏)と慎重姿勢を崩さない。「BtoCで売れている商材の条件のひとつはわかりやすさ。よりサービスを高度化しようとすると説明商材になってしまう。これはコンシューマビジネスにとっては必ずしも好ましくない」と分析する。

IoT商材の難しさは価格と機能のバランス

中野氏によると、IoT商材を本格的に普及させるには依然として課題があるという。「生活を便利にするものではあるが、マストな商材ではないでので、月額1,000円を超えると売れないと見ている。

市場に展開する場合は、HEMSの代わりなら(エンコアードの標準価格は)10分の1程度なので違和感がないが、本当に普及させたいと思ったら、もっと価格を下げて、もっと簡単にしないといけない。」これまで同社が手掛けてきたのは、HEMSの代替にもなるハイエンドモデルとも言える位置づけだった。今後、より簡単に、より多くの顧客層に使ってもらえるよう、ターゲットによってラインナップを拡充する方針だ。

マーケットはアーリーアダプターへの展開が始まったばかり

中野氏は「一番大切なのは広く多くの方に使って頂くことだ」と語る。「もともとIoT商材はすぐ売れるようなものではないが、一方でアーリーアダプターは必ず存在する。そのような方にまず先頭を走って頂き、インフルエンサーになっていただくことも必要だと思う」。

エンコアードは、横浜市住宅供給公社が手掛ける大型の新築分譲マンションに、エネトークと家電コントローラーを導入している。実際に使っているユーザーからは次々とフィードバックが届く。たとえば、共働きの家庭では、互いの帰宅状態が判るようになって便利になったという声。夏暑い日にはエアコンを外部からつけられて、しかも動作が確認できて便利という声。こうした家庭から届く声を、今後のサービス開発に活用していくだけでなく、いかに拡散していくかが、鍵となる。

今後の展開

今後の展望のひとつとして、SBパワーと一緒になった利用ユーザー間のコミュニティ形成まで視野に入れている。アプリのなかにアンケートに回答するとポイントが付与される仕組みが入っているが、プラットフォームのなかでポイントを使ったり、提携先の他社ポイントに変換したりすることも今後検討していく。国内IoT市場を大きくするためには、デバイスを展開するだけでは十分でない。常に新しい仕組みやサービスを提供していかなければならない。

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