エネルギーデジタル化の最前線 第15回

2023年01月24日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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エネルギーデータを活用した先進的な取り組みをしているとして大阪ガスの紹介します(後編)。 キーワードは「ツナガル」設計・開発から設置、アフターフォローまで、一気通貫できる強みを活かしたIoT化を推進している。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

「ツナガル」をコンセプトに給湯機器への横展開を実現

エネファームのIoT化による手応えを受けて、2017年10月からは「ツナガルde給湯器」をコンセプトに省エネ給湯器「エコジョーズ」へもIoT化の横展開を進めている。台所リモコン経由でインターネットに接続し、スマートフォンのアプリからも遠隔操作が可能になった。

加えて、大阪ガスによる給湯器の遠隔見守りも実施可能となった。大阪ガスが遠隔監視でエコジョーズの故障を発見した際は、コールセンターから利用者のスマートフォンにプッシュ通知でエラー内容や対応方法を連絡できる。加えて、プッシュ通知から上手なガス機器の使い方や関連する情報を提供。提供する情報は、反応を見ながら試行錯誤している。

戌角氏は、「季節の変わり目や床暖房を使い始めるタイミングでのお知らせ、新築のご家庭などには新しい機器(床暖房・浴室乾燥機など)の使い方を案内している。お客様の開封率などを確認しながら、頻度や内容について試行錯誤している。適切なタイミングで自宅にある便利な機器案内をすることで、より快適な生活をしてもらうことを強く意識している。」と述べる。

「ツナガルde給湯器」は、AmazonのスマートスピーカーAlexaと連携し、声でお風呂のお湯はりなどにも対応している。他にも、浴室での事故を予防するためにヒートショックや長時間入浴の注意喚起、体脂肪測定などの健康機能を備える製品シリーズや浴室の自動清掃(外出先からスマートフォンのアプリでおふろの浴そう洗浄とお湯はり)が可能な製品シリーズまで、充実したラインナップがある。

セキュリティ面に配慮しながらも将来を見据えてクラウドサーバを採用

数百万人以上のお客様を抱える大阪ガスが、IoT化のタイミングで自社でのサーバ運営ではなく米アマゾン社が提供するクラウドサーバサービスAWS(Amazon Web Servicesの略)の活用を選択したことは特徴的だ。藤田氏は「セキュリティなどの面を考慮しつつ、将来的な他社とのシームレスなシステム連携を見据えて活用に踏み切った」と語る。

具体的には、クラウドサーバ(AWS)のシステムと社内運用サーバシステムによって保存する情報の切り分けを実施。クラウドへ保存するデータは必要最小限にし、バックアップはすべて既存システム側に保存している。「既存のシステムや仕組みと新しい仕組みを馴染ませることによって、手間やコストを抑えながらもセキュリティなどのリスクヘッジができた。製品の設計・開発から設置、アフターフォローまでを一気通貫で行っている当社のノウハウがシステム構築にも活かされた。」(藤田氏談)。

今後の展望

IoT化への取り組みから2年。エネファームからエコジョーズへと自社製品での横展開が実現した。

IoTという最先端技術による遠隔でのきめ細かい見守りを進めつつ、これからも従来の「訪問」という現場対応の絶対的な安心感も継続して残し、利用者の心をつかむサービスを展開していく。特に今後は、他社の製品やサービスとの連携を強化していくことで新しい付加価値の創出を目指している。

すでにプロジェクトも進んでおり、積水ハウス株式会社が開発する高層マンションでの、NTT西日本と連携したシステムの導入が具体化している。「マンションに入居されているお客様から取得した機器の利用データを分析し、入居者の省エネ行動をサポートする取り組みを行っている。NTT西日本とは、自宅のテレビを通じて情報を伝える部分でシステム連携している。クラウドサービスの活用事例をもっていたことで、素早く実現することができた。

今後は、家電メーカー、自動車メーカー、IT企業、通信会社など様々な企業との連携を増やしていきたい。何より、当社は、現場に作業員が訪問できるネットワークを持っている。ガス会社としてこれまで蓄積してきた強みを活かし、様々な可能性を模索していきたい。」(藤田氏談)。

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