エネルギーデジタル化の最前線 第10回

2022年08月17日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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今回よりエネルギーデータを活用した先進的な取り組みをしている企業を紹介していきたい。第1社目は、東京電力パワーグリッド株式会社が60%、インフォメティス株式会社が40%を出資して2018年に設立したエナジーゲートウェイ(東京都港区)だ。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

コンセプトは「データを紡いで世界を繋ぐ」

エナジーゲートウェイは、東京電力パワーグリッド株式会社から60%、インフォメティス株式会社から40%の出資を受けて、2018年2月に設立された新会社である。主な事業は「IoTプラットフォームサービスの提供」として、具体的には各種電力センサーの販売、システム企画・開発、情報処理・提供サービスを手掛ける。

出資元の東京電力パワーグリッド株式会社は、2026年の電力託送外事業の売上として1,000億円を見込んでいる。2016年の時点で同事業の売上規模は400億円、これを倍増以上にする必要がある。そこで2017年4月に託送外事業を専門とする事業開発室を設立し、検討を進めた。

託送外事業の中でも、特に家庭内のIoT事業への注力に方向性を定め、当時業務提携を結んでいたインフォメティス株式会社とエナジーゲートウェイの設立に至った。東京電力パワーグリッド株式会社は、送配電ネットワークを活用した電力の供給等を主な事業とするため、電力事業においては公平中立という立場に位置づけられる。

子会社のエナジーゲートウェイもその流れを受け、「制限なく、広くさまざまな事業者と一緒にやらせていただき、社会基盤となることを目指す。データを紡いで世界を繋ぐことをコンセプトとする。」(林代表取締役社長)と自社を位置づけている。

「機器分離技術」を強みとするインフォメティス製の電力センサーを提供

もう一つの出資元であるインフォメティス株式会社は、もともとソニーでAIBOや人工知能技術を研究していた只野太郎氏(現インフォメティス株式会社代表取締役社長)が中心となって2013年に設立した会社だ。

2016年11月に東京電力エナジーパートナーとの業務提携を発表、IoTプラットフォーム構築に関する共同実証実験に参加している。

同社が開発した電力センサーは、分電盤内部に取り付けることで電力・電流を計測する。データは家庭のインターネットを介してクラウドへ送信。クラウド上にある機器分離の分析エンジンが、居住者が、どの家電を、いつ、どのくらい使ったかを見える化する。

最大の特徴は、9種類(2019年1月現在)の家電の動作状況をこの電力センサー1台で情報収集できることだ。家電の動作状況を知らせるセンサーは他社でも事例が複数あるが、情報を取得するためには、家電にセンサー対応機能がついていることが前提のものや家電のメーカーが異なると接続ができないという課題を抱える製品が多かった。

対して、インフォメティスの電力センサーは、独自のAIを使った分離技術を活用し、メーカーや型式によらずエアコンならエアコンと識別することができる。識別スキルは年式も超えることが可能であり、20年前の家電であっても最新の家電であっても対応する、まさに「家庭の中のすべての家電の動作状況を見える化」できる。

また、分電盤内部に電力センサーを設置するため、見た目をシンプルに仕上げることができ、既設住宅への導入もスムーズできるという施工面でのメリットもある。これらの強みを持った電力センサーを主軸に、エナジーゲートウェイはサービス展開している。

機器分離技術とオートラベリングを実現した経緯

エナジーゲートウェイの林氏によると、インフォメティス株式会社にて行った電力センサー開発についての技術的なハードルは、機器分離技術とオートラベリング(波形がどの家電のものであるかを抽出する技術)だという。機器分離アルゴリズムでは、時々刻々と変化する主幹の電流波形とマッチする電流波形の組み合わせを見つけ出すことで、家電の稼働状況を判定することができる。機械学習を使って、いわば因数分解のように個別の家電の波形に分解していくという仕組みだ。

加えて、難易度が高いオートラベリングを手掛けた理由は、家電の動作状況を知るために、家庭内の家電ひとつひとつすべてを登録する作業を、利用者に依頼することは難しいという点にある。

たとえいくつかの家電を登録しても、完全に登録されていないのであればデータの精度が上がらない。すなわちサービスとして品質を担保できなくなってしまう。そのためにもオートラベリングは必須の技術であり、苦労して実現にこぎつけたという。

エナジーゲートウェイでは、時間帯別で家電の使用状況がわかるサービスアプリ「うちワケ」を販売している。「うちワケ」は、家電の使用状況のトップランキングも表示できるほか、過去のデータも週単位、月単位で見ることができる。これによって、例えば今月は前月と比較して使いすぎている、具体的にはどの家電を使いすぎているという状況を見ることができる。また、太陽光発電での電力販売量と電力会社からの電気の購入量が見えるようになっていることに加えて、蓄電池の蓄電状況にも対応していく方針だ。

BtoBtoC事業を展開

エナジーゲートウェイのビジネス上の立ち位置はBtoBtoCの最初のBに該当する。居住者にサービスを提供している事業者(住宅事業者やセキュリティ事業者、損害保険事業者、医療介護、リソースアグリゲーター等)が事業を展開するうえで有用なデータを提供する、あくまで、事業者とのパートナーシップをもとにサービスを提供する立ち位置だ。「我々自身がフロントにでるのではなく、基盤の役割となることを想定している」と林氏は同社のポジションを語る。

電力データを活用し、エネルギーマネジメント、セキュリティや見守りサービス、医療介護、機器診断、ホームオートメーション、リソース制御、コミュニケーション活性など、幅広いサービス展開を想定している。具体的には、介護の現場でケアマネージャーがケアプランを作成する際に、要介護者の家電利用の動きのデータを参考にするといった用途が考えられる。その他には、家電の稼働率を見ることができるので、居住者がデマンドレスポンスに協力した際に想定される電力量の算出に用いることができる。これまでは大きくデマンドが下がったところは可視化されたとしても、各家庭が実際にどのように運用を変えたかは具体的にはわかっていなかった。

「サービス事業者にはセンサーを導入することで、これを使って何ができるかをワークショップや対話を重ねながら共に作り上げていくのが当社の営業スタイル。」と林氏は述べている。

提携先企業での多様なサービス展開

エナジーゲートウェイの提携先企業によるサービスの例として、東京電力エナジーパートナー株式会社では、「TEPCOスマートホーム遠くても安心プラン」を提供している。電力センサーを活用し、遠く離れて暮らす高齢者などの生活を見守るサービスだ。

その他、大和リビングマネジメント株式会社、大東建託株式会社、セコム株式会社、パナソニック株式会社、京セラ株式会社等の大手企業と実証事業に取り組んでいる。大和リビングマネジメントと大東建託株式会社では賃貸住宅向けに電力センサーを設置、居住者への見える化サービスの提供を開始している。

東京電力パワーグリッド株式会社と京セラ株式会社は、経済産業省のVPP構築実証事業での取り組みの一部にエナジーゲートウェイのIoTプラットフォームを採用している。

3段階での成長戦略

エナジーゲートウェイは自社の成長ステップとして、①個別サービスとしての普及、②プラットフォーム化、③社会基盤化の3段階を想定している。

①の「個別サービスとしての普及」は、実証実験などを通じて利用する事業者を増やし、規模を追うことを指す。このフェーズでは、利用者一人一人から個人情報の扱いに関する同意取得が必須となることがハードルになりうる。この点について林氏は、「いざ家電の利用状況がすべて見える化できるというと、データを細かく取得されることに対して懸念を持たれる利用者も少なくない。利用者の心配に寄り添い、データ取得やデータ加工・利用について地道にパーミッション(同意)を取っていく。」と語る。

②の「プラットフォーム化」においては、電力センサーの設置件数として具体的に100万件規模を目指す。この100万という数字は、ビッグデータとしての利用価値を生み出すために必要な母数として、またIoTが当たり前のものとして生活の中に溶け込んでいる世界における設置数の目安として、設定している。

③の「社会基盤化」のフェーズでは、得られたビッグデータを活用しながら、マーケティングやリコール検知、配送効率化など社会性の高いサービスを創出し、幅広く共通して使われる状態を目指す。

「我々の思いもよらない分野での使い道を広げていきたい。領域に制限を設けず、いろいろな方とパートナーシップを結んでいきたい」と林氏はオープンスタンスで臨むことを強調する。

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