エネルギーデジタル化の最前線 第7回

2022年05月12日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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「モノからコトへ」と人の関心が移っていると言われて機会が増えてきている。 家電やスマートメーターから集まってくる膨大なデータは、 コト消費社会においてどのような役割と担うのでしょうか?

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

モノ(手段)からコト(成果)へ

自動車メーカーや家電メーカーは、エネルギー利用情報を自社のビジネスモデルに活用していくだろう。モノの利用回数が本当に正確にわかるようになれば、製品(モノ)を売るのではなく、使う回数(成果)に応じて課金することが可能になるからだ。

これまで企業は、ひとつの製品をひとりのユーザーに販売してきた。これからは、ひとつの製品を順々に複数のユーザーに使用してもらう形のビジネスモデルも展開できるようになる。

現在のカーシェアリングサービスを思い出してほしい。利用者は車(モノ)を所有するよりも、乗りたいときに乗れる経験(コト)に魅力を感じている。書籍の業界でもこうした「使った分だけ」のビジネスモデルが展開されている。アマゾンのキンドルでは、読者が読んだページ数に応じて、私にお金を受け取る仕組みなどが導入されている。

家庭やオフィス内のエネルギー利用情報を活用すれば、家電や電気自動車を使用頻度ごとに課金するサービスも考えられる。メーカーとエネルギー企業が協業することで、コト(成果)を販売する新しいビジネスモデルをつくっていける。

新たな収益源の必要性

1.自由化による競争激化

2016年4月からの電力小売り全面自由化、2017年4月からのガス小売り全面自由化により、電気・ガスの小売り販売競争は激化している。例えば、電気の小売りビジネスでは、600社近い企業が新規参入している。各社の積極的なCM展開やPR合戦によって、家庭や企業が電力会社やガス会社を乗り換える「切り替え率」は徐々に増加している。

2.利益の低減

競争激化は、利益率の低下につながる。シェア獲得のため、利益率を度外視した競争も見受けられる。特にビルや学校、病院などの電力を多く利用する高圧・特高施設では、値引き合戦がし烈だ。エネルギー企業間の競争激化は、これまでの常識では考えられない料金プランも生み出す。例えば、電気代を定額制にする料金プランだ。海外では、一定使用量まで定額制という電力料金プランがでてきている。日本でも今後同様の料金プランがでてきてもおかしくない。定額制は、顧客にとっては非常に魅力的であるが、エネルギー企業にとっては、利益の圧迫につながる。

3.顧客自体の減少

太陽光発電などの分散発電の増加も無視できない。電気を購入する消費者の減少が進んでいる。特に2019年以降、FIT(固定価格買取制度)が終了する家庭が出現している。FITが終了する家庭は、卒FIT(FITからの卒業)家庭と呼ばれている。卒FIT家庭は、2020年代で200万世帯以上になる見込みだ。卒FIT家庭の一部は、電力会社から電気を購入する代わりに発電した電気を蓄電池に溜めて自宅で利用する。つまり、以前は電力会社から電気を購入してくれていた顧客が顧客でなくなってしまう。競争の激化による利益率の低下に加えて、顧客自体の減少も進んでいる。

このように、エネルギービジネスは、これまで通り電気やガスを売っているだけでは年々利益が出にくくなりつつある。来年、再来年の会社の状況のみを心配するのであれば、現状維持でよいかもしれない。

しかし、大切な社会インフラを担っている会社だからこそ、10年、20年後もゆるぎない収益をあげなくてはいけない。競争の激化の影響で年々利益率が下がる電気やガスの販売だけに頼り、収益を増やそうと戦略を練っても打ち手に限りがある。

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