電子請求書で「コスト削減+生産性向上+環境保全」を一気に実現

執筆者:一般社団法人エコマート

https://www.ecomart.or.jp/

本連載は書籍『エネルギー自由化は「金のなる木」70の金言+α』(2018年5月発行)より、コラム記事を再構成して掲載しています。

当たり前を疑ってみる

皆さんの会社では、紙の請求書を発行・送付していますか?受け取る請求書も紙ですか? 日本全国に約400万社の法人がありますが、大半の方の答えは「YES」と答えるのではないでしょうか。そして、日常業務として以下のことをしているでしょう。

  1. 請求書をPCや端末画面で作成してプリンターから紙に印刷
  2. 相手先の宛名書された自社封筒に封入
  3. 送付(郵送またはメール便など)
  4. 受け取った請求書入り封筒を開封して内容確認
  5. 承認・決裁手続き(回覧や押印)
  6. 会計システムに請求情報を手入力して支払準備

これらには3つの点で「もったいない」が存在しています。1つめは、コスト面です。紙代、プリント(トナー)代、郵送費(切手代)はもちろんのこと、モノやコトのお金以外にヒトが動けば人件費がかかります。

2つめは、作業効率や生産性。手作業が多かったり、紙が介在することで請求情報を会計システムに入力し直す必要があったりで、良いとは言えません。

3つめは、環境保全(エコロジー)の面です。紙を大量に使うことで原料となる木の伐採、請求書の輸送のために燃料消費、請求書の保管のために場所の確保など、環境破壊や資源の浪費につながっています。

この3つの「もったいない」を解決するために、このコラムでは、

  1. 当たり前だと思っていることを疑ってみる
  2. 解決策(=電子請求書)は既にあると知る
  3. 一緒に取り組めば、一気に世の中は変わる

ということをお伝えしたいと思います。

企業間の請求書の電子化だけが遅れている

企業間の請求書についての話をする前に、まずは個人向けの請求書・領収書をみてみましょう。携帯料金やクレジットカードの明細、電気・ガスの料金については、皆さんの中でもすでに電子による受取をされている方は多いのではないでしょうか。

最近はパソコンではなく、スマホのアプリで管理する方法もあります。いわゆる電子化やFinTech(フィンテック)化が進んでいると実感できます。個人の場合、銀行口座からの自動引き落としが多いことも、電子化の後押しになっています。

企業間取引はどうでしょうか?会計データの管理に目を向けると、今やほとんどの企業において、販売管理システムや会計システムを導入することによって、電子化がなされています。小規模な事業所でも、パソコン用の会計ソフトやクラウド型ソリューションを使ってデータ管理そのものは電子化が進んできています。

しかし、問題はそれらのシステムの前後にある「請求書」の電子化だけが取り残されて、紙のままであることです。請求側は、販売管理システムから「紙の請求書」を出力。

支払い側は、取引先から受け取った「紙の請求書」の情報を会計システムに手入力。上でも述べたように、一連の請求業務の中に紙が混在することで、請求側は請求書の印刷や郵送にコストが掛かったり、支払い側は会計システムへの入力時に転記ミスが生じたりと、無駄なコストやリスクが生じているのです。

請求書が紙で残っている理由

なぜこのようなことが起こってしまっているのでしょうか?請求書の電子化の妨げとなっている理由は大きく分けて2つあると考えられます。

①電子化するためのシステム導入に時間とコストが掛かる

自社で請求書の電子化を検討する際には、現状の請求業務に合わせたシステム開発から導入するまでに、膨大な時間とコストが掛かります。大手企業においては、独自でシステムを開発したり、初期費用を掛けて請求書システムを導入したりする事例がありますが、中小企業がそこまでのコストを掛けて請求業務の改革を行うケースは少ないのが現状です。

②発行を電子化しても受取側にメリットがない

昨今、大手企業をはじめとした一部企業において、請求書「発行」業務の電子化が進みつつあります。発行を電子化することにより、今まで印刷や郵送に掛かっていたコストや時間を削減することができ、電子化による効果が見えやすいからです。

しかし、請求書を受け取る側の立場になって考えてみると、電子発行をする企業が複数存在することによって、発行側に合わせて別々のID・パスワードを取得・管理し、ばらばらの形式で受け取ることになります。

それでは発行側のみが便利になる「一方通行的な電子化」にとどまり、受取側にとってのメリットを感じることができません。どちらかといえば、受取側にとっては手間が増えることがほとんどであるため、現状の郵送による紙の請求書を好むことが多いのです。

つまり、たとえコストを掛けて1社が電子化しても、取引先にはメリットがないため、なかなか普及には至らないのです。

みんなで請求書を電子化する

そこで、みんなが電子化に取り組めるよう、こうした普及の妨げとなっている課題を解決して、請求書の電子化を「みんなで一緒に」普及させるために、2015年1月に一般社団法人エコマートが発足しました。

企業間の請求書のやりとりを、当社団が推奨する「電子請求書プラットフォーム」(サービス名:BtoBプラットフォーム 請求書、株式会社インフォマート)の上で行い発行・受取の双方を電子化することによって、大幅なコスト削減と生産性向上をもたらすとともに、ペーパーレスによる地球環境の保全に貢献することを使命としています。

全国の法人が共通で使える「電子請求書プラットフォーム」の認知を高め、利用企業を増やすことで、すべての請求行為を電子化することを目指しています。

電子請求書プラットフォームが優れている点は、ひとつのIDで請求書の発行にも受取にも活用できることが挙げられます。請求書の一括発行ができることはもちろん、取引先へ電子による請求書発行依頼をすることで、自社宛に来る請求書の一元管理も可能となります。

同じIDで請求書の受取も発行も活用できるということは、従来の発行側の「一方的な電子化」ではなく、請求書のやりとりを行うすべての取引先と電子的につながることができるようになります。

また、本プラットフォームは、販売管理システムや会計システム、その他請求に関係するあらゆる仕組みや機関と連携することが可能です。すでに自社で導入しているシステムの間に本プラットフォームが入ることで、既存システムをより効果的に活用することができます。

この仕組みを普及させることで、電子請求書のやりとりは業界を超え、新しい取引先とも簡単につながり、「電子請求の輪」がどんどん広がると考えています。

電子請求書プラットフォームの3つのメリット

「電子請求書プラットフォーム」を導入することで、企業にとって大きく3つのメリットがあります。

①大幅なコストと時間の削減、生産性向上

紙の請求書がなくなることで、従来手作業で行っていた請求書の発行・受取に関する無駄な時間と手間を極小化できて、人件費を大幅に削減することになります。郵送代も一切かからなくなります。

効率化や時間短縮の面でも有利です。気づいた時にプラットフォーム上で誤りのある請求書を差し戻し、数分後には正式な請求書が取引先に届きます。また、請求書の発行・受取後に発生する入金確認についても、自動で消込を行い過不足があった場合にはプラットフォーム上で社内や取引先に素早く連絡・督促することが可能です。月次決算の早期化を実現することができます。

プレミアムフライデーなど、働き方改革が進む中で、企業内でいかに生産性を上げて、創造的なことに費やす時間を捻出するかが、大きな課題となっています。請求書の電子化がその解決策であることは間違いありません。

②紙の請求書を保管するスペースがいらない

電子請求書プラットファームでは、新たにソフトをインストールする必要もなく、インターネット環境さえあればアクセスでき、すぐに取引先とのやりとりを開始することができます。

さらに、やりとりした請求データは、「電子帳簿保存法」の適用条件を満たしており、税務署への申請が必要のない保存形態です。自動的にプラットフォーム上に保存されるため、そのまま国税関係書類として機能します。

現在、請求書は7年間の保存が法律により義務付けられており、膨大な量の請求書を保管するため、社内で無駄なスペースをとっている企業も少なくありません。これらを電子に変えることで、社内スペースの有効活用につながります。

③今までの社内ルールのまま、内部統制も強化

電子請求書プラットフォームは、今までの社内ルールを活かしたまま利用することができます。「紙への押印・回送・承認」と同じ意味をもつ作業を、すべてプラットフォーム上で行うことができます。

むしろ、今まで曖昧にしていたルールや管理の見直しに活用し、社内で統一した権限をもたせることで、不正やミスの防止にもつながります。また、紙の場合、卓上に置いたままにしておくと誰かに情報を見られる危険も伴いますが、電子化することでその心配もなくなります。このように、電子化はあらゆるリスク回避し、内部統制の強化にもつながります。

ペーパーレスはエコ

「エコマート」の「エコ」は、「エコロジー」の意味です。名前にもなっている「エコロジー」の面でも、請求書の電子化はオフィスのペーパーレス化を推し進め、社会と環境へ貢献していると自負しています。エコ関連の活動として、以下を行っています。

①ペーパーレスの実績をエコ指数として可視化

エコマートでは、会員企業が削減に貢献した紙の請求書枚数を、「杉の木伐採阻止数」「杉の木によるCO2吸収量」に換算し、が発表していきます。これらの数値は、「エコアクション21」等の環境貢献活動の指標としてご活用いただけます。

②赤城自然園で絶滅危惧種の保護

群馬県にある赤城自然園にある絶滅危惧種の植物(3種)の保護活動を2017年4月から開始しました。エコマート会員は自社のCSR活動の一環として、サイトへのバナー貼り付けや環境貢献証明証(楯入り)で広めることができます。

請求書の電子化は、既に実現されていますし、大きなコストや労力の掛かるものではありません。また、ただの業務改革ではなく、コスト削減や生産性の向上、環境保全を通じたCSR活動にもつながる取り組みです。読者の皆様にも請求書の電子化を身近なものに感じていただけると幸いです。

執筆者:一般社団法人エコマート

https://www.ecomart.or.jp/