EUの電力自由化

電力自由化とは

地域独占などの規制を緩和することで、既存の電力会社以外の参入を促進し、企業や個人の選択肢を増やすための一連の改革のことです。また、電力自由の市場化とも呼ばれることもあります。

電力自由化の歴史

EUの加盟国は、域内市場統合白書(1985年)と単一欧州議定書(1987年)に基づき、人・モノ・サービス・資本の移動が自由な単一市場を完成させることを目指しており、電気もその一つと位置づけられています。

EUの電力自由化は、1989年にイギリスで国営電力会社の構造改革が実施されて以降、1991年にイギリスで小売の全面自由化、1994年にはスペインでも大口の部分自由化が決まるなど、徐々に広まりを見せるようになりました。

EUの電力自由化

欧州連合(EU)は、独特な経済的及び政治的協力関係を持つ民主主義国家の集まりです。EU加盟国はみな主権国家ですが、その主権の一部を他の機構に譲るという、世界で他に類を見ない仕組みに基づく共同体を作っています。2017年度において、28カ国加盟しており、その人口は5億人を超えています。

EU加盟国は、EU議会で承認を受けた指令に従って国内法制を整備する義務を有しています。電気事業分野では1996年2003年および2009年に域内電力市場に関する指令が公布されており、1996年の指令では小売部分自由化義務(2000年2,000万kWh以上、2003年900万kWh以上)および送電部門の独立性確保が課さられました。

また2009年のEU電力指令では、送電部門のさらなる中立性・独立性強化とともに、独立規制機関および送電部門の広域的協調を担う組織である欧州エネルギー規制機関調整庁(ACER)および欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)が設立され、各国でことなる取引制度や技術的規制の集約化を目指すことになりました。

EU指導の下加盟国が順次自由化を実施しており、他国と経済的に対抗のため市場の統合を目指し、電力もその繋がりの1つとして自由化を進められてきています。

電力自由化EUの現状

EUの中でも比較的早い段階で電力の自由化に踏み切ったイギリスは、1990年に国営電力会社を民営化し、3社の発電会社と、1社の送電会社に分割しました。さらに、各地区の配電所も民営化し、1999年には家庭向けの小売も全面自由化しました。

イギリスの場合、電力自由化以前にガス市場も自由化されていたので、電力とガスの販売をセットにしているケースが多くなっています。また料金プランが多様化して、消費者が選びにくいという状況を打開するために石炭生産国・消費国が発達していることも特徴です。

2001年EU再生可能エネルギー電力指令などを通じた再生可能エネルギー発電の導入促進が2000年代中頃からスペインやドイツ、2015年頃からはイタリアなどで進展をみせ、寒波等の自然条件によるものの卸電力市場は供給過剰気味になっています。

このためマイナスの卸電力価格が形成されるなど、卸電力価格の低迷や火力発電の稼働率悪化により、特に火力発電事業の収益性が悪化する傾向にあります。EUでは電力会社の収益構造が大きく変わりつつあり、新しいビジネスモデルの構築が模索されているところです。

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