リユース業界の脱炭素化と大手、中小企業のGX事例

2024年01月27日

株式会社AMBヒトラボ

山口桃子

リユース業界の脱炭素化と大手、中小企業のGX事例の写真

年々、市場規模が拡大しているリユース業界、その規模は3兆円に。脱炭素に直接ビジネスで貢献することが可能な点でも注目をされています。今回は、大手・中小リユース企業のGX事例についてご紹介します。

脱炭素化にビジネスで直接貢献するリユース業

リユース業とは、中古品に代表される古物を売買・交換することで再利用を促すビジネスのことです。

以前はリサイクルショップという表現もありましたが、循環型社会形成推進基本法(2000年制定)において、「リデュース」、「リユース」、「リサイクル」の3Rの考え方が導入されました。リサイクルはペットボトルやガラス等の再資源化を指し、リユースが再使用、再利用を指す、と整理されてからは、こうした中古品の売買を行う企業は、リユース企業と呼ばれるようになっています。

リユース業界の市場規模は2022年時点で約3兆円となり、年々右肩上がりの成長を見せています。これはSDGsやESGといった世界的潮流と、モノの循環というサーキュラーエコノミー(循環型社会)が注目されていることが背景にあり、モノ循環を通じて脱炭素社会の実現に、直接ビジネスで貢献できるということもマーケットの成長を押し上げている要因になっています。

今回は、そのようなリユース企業のGX事例についてご紹介していきます。

リユース企業のGX事例

メルカリ、スマホなどのリユースで年間約1.6万トンのCO2排出量を削減

2013年に誕生したフリマアプリの「メルカリ」は、個人間でのモノの売買・交換を一気に加速させました。

2023年5月、「メルカリ」でスマートフォン、PC等の情報通信機器をリユースすることにより見込まれる環境削減貢献量として、年間で約1.6万トンのCO2排出量を回避できると算出したことを発表しました。これは一度使用された製品がリユースされず、廃棄処理される場合と比べて25%のCO2削減となっています。

これは環境省「デジタル技術を活用した脱炭素型2Rビジネスの効果実証事業」を通じて、利用者約2.6万人からの、「メルカリで取引されリユースされることによって、その商品の使用年数がどれだけ伸ばすことができた」か、というアンケートをもとに算出したものです。アンケート結果から、リユースした場合の平均使用年数は、新品から使用し続けてそのまま廃棄する場合と比較して、スマートフォンは平均3.1年、タブレットは3.4年、PCは3.8年伸びたということです。

日本の電気製品や電子機器の廃棄物は、年間約257万トンを排出し、1人当たり約20kgにも及んでおり、日本の排出量は世界4位となっています(国連の 「The Global E-waste Moniter 2020」による)。

出典:メルカリ

ブックオフ、CO2削減貢献量をHPに明示、リユースの先のリサイクルも手掛ける

国内外に800店舗を展開するブックオフ社では、HPに年間のCO2削減貢献量やその算出方法を公表。以下の図は、本、CD、DVD、ゲームソフト、服(衣類)といった主要商材の国内リユース事業を通じて年間にどれだけCO2削減に貢献したかという指標で、その総量は、約46万tにのぼります。詳細な内訳データをみると、衣料品の比重が高くなっています。こうしたデータからも直接的にビジネスとして脱炭素化に貢献できているかが理解できます。

出典:ブックオフ

リユース企業といえども、国内店舗では消費しきれず売れ残ってしまう商品もあります。同社では、国内店舗で売れ残ったしまった商品について、マレーシアのリユースショップ「Jalan Jalan Japan」などで販売を行い、さらにモノの寿命を伸ばす取り組みを行っています。こうした取り組みは海外事業として成長しており、海外事業全体の店舗数は29店舗(2024年1月時点)となっています。

また、国内店舗で売り切れなかった古本を古紙として、CD・DVDは再生プラスチックとしてよみがえらせるリサイクルの取り組みも行っており、資源の有効活用に繋げています。

リネットジャパン、異業種との連携強化で脱炭素に貢献

愛知県を本社に構え、リユース・リサイクル事業を展開するリネットジャパンは、異業種との連携を強化しています。例えば、豊田通商・イオン・ドンキホーテ等と連携して「でんき・でんちで動くおもちゃ」の回収・循環の実証実験を開始(2023年7月)しています。実証実験を通じて回収した玩具メーカー毎のリサイクル率やCO2削減量等の算出、およびデータの可視化にも取り組むということです。

出典:リネットジャパンリサイクル、豊田通商のプレスリリース

他には、パナソニックと連携して、同社の公式ショッピングサイトで購入いただいた方向けに、買い替え時に不用になった古い掃除機などの小型家電を無料回収する施策を実施(2023年12月発表)。さらに回収した家電製品の材料を用いたリサイクル品の製造や、地域・学校への寄贈による社会貢献活動など、サーキュラーエコノミーの実現や消費者の意識醸成に繋がる草の根活動にも取り組んでいます。

日本システムケア、再エネでリユースPCの製品化に取り組む

2023年11月、IT機器のリユースや保守サービスを行う日本システムケアは、本社ビルを含む全国12ヵ所の拠点で使用する電力の全量について、再生可能エネルギー由来の電力に順次切り替えることを発表しました。

リユースPCの製品化に掛かるデータ消去や機能検査、クリーニング等の作業で利用する全電力をこうした電力に代えることで、温室効果ガス低排出のリユースPCを提供できるようになります。これは当製品を使用する企業や自治体といった顧客側にもメリットが出てきます。

また、同社は拠点で使用する電力をトラッキング付FIT非化石証書が付帯された実質再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることで、年間CO2排出を2023年3月期比15.6%減することを目指しています。

出典:日本システムケア

まとめ

リネットジャパンや日本システムケアの事例は、異業種の脱炭素へ先進的に取り組む企業と連携することで、リユース企業が持っているノウハウやネットワークが活かされ、さらに社会的な貢献範囲が広がっていく好事例といえるでしょう。

これまでモノが循環することで社会や環境へどのくらいインパクトがあるのかを示すためのロジックやデータが多くなかったため、メルカリやブックオフなどの事例は、リユース企業の脱炭素社会へ貢献度が明確に数値で示せるようになったという点でも画期的な取り組みといえるでしょう。成長を続けるリユースマーケットの広がりとともに、廃棄物を減らし、モノを循環する購買行動が社会的に当たり前となり、脱炭素社会が実現していくことを期待します。

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株式会社AMBヒトラボ

山口桃子

リユース産業を代表とする「モノ」のセカンダリー市場が急拡大中する一方、「ヒト」に対する課題が顕在化しています。AMBヒトラボは専門性を持つ人材が必要な一方で、継続的に人材を育てることが困難でるといった課題に、リユース業界に特化した経営アドバイザリー、採用コンサルティングで支援を行っています。リユース業界特化の求人サイト「Re:転職」を運営。

企業・団体名 株式会社AMBヒトラボ
所在地 東京都 港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル603-2
電話番号 08073008586
メールアドレス yamaguchi@retenshoku.jp
会社HP https://ambhitolabo.jp/
サービス・メディア等 https://retenshoku.jp/
https://twitter.com/Retenshoku

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