仮想発電所システムの構築技術

発行年月日:2019年6月22日
発行所:オーム社

執筆者:蜷川 忠三

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本書は、これから確実に普及していく仮想発電所システム(VPP: Virtual Power Plant)について、一からわかりやすく解説した入門書です。

著書内容

著者情報

岐阜大学

スマートグリッド電力制御工学共同研究講座特任教授 蜷川忠三(にながわちゅうぞう)氏

1978年名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。同年三菱重工業株式会社入社。1986年University of Washington 大学院にてコンピュータサイエンスを研究。1998年日本冷凍空調工業会パッケージエアコン技術委員長。2007年三菱重工業株式会社技監博士(工学)。2012年岐阜大学工学部電気電子工学科教授。2018年より現職。

日本政府は,ディジタル技術を中心とするイノベーションによってクロスセクターで知を融合させ,新たな価値を創出し,社会課題を解決する人間中心の社会「Society 5.0」を提唱している.ここで,IoT を活用する仮想発電所(VPP: Virtual Power Plant)はそのさきがけとして注目されている.(略)

本書は,ビル空調の制御ネットワークを専門とする産業界出身のエンジニアが,大学で本格的な仮想発電所システムシミュレータを構築し,空調リソースアグリゲーションの理論と実践を説くわが国初の専門書である.

詳しくは本書を読んでほしいが,デマンドレスポンスとして,最もポテンシャルの大きい需要分野が空調であり,今後期待される機器が蓄電池である.仮想発電所システムを運用するアグリゲータは,空調設備に対して,デマンドレスポンス対象時間帯における空調負荷と電力消費量を予測し,室内温度設定の変更による電力消費量の変化量(制御量)を算出する.

ここで,空調機器はいわゆる熱的慣性をもつ電力負荷であり,自動デマンドレスポンスシステムと連携することによって,これまでの省エネルギー推進にとどまらず,再生可能エネルギー電源の普及支援という新たな社会的付加価値を有する.

一方,その実装にはさまざまな課題がある.例えば,空調機の消費電力特性は複雑で確率的に変動し,簡単に予測できない.これに,ディープラーニングによる予測手法を開発し,精度の高い高速デマンドレスポンス制御方式を提案できるのは,実際の空調機制御方式を知悉している著者ならではであろう.

また,こういった身近な空調の制御を社会が広く受け入れるためには,ビルの居住者の快適性を損なわないことが大前提である.実際,空調電力を短時間下げても,快適性に大きな影響を与えないことが本書で示されている.

現在,デマンドレスポンスは普及の初期段階,仮想発電所システムは実証段階で,事業化が視野に入ってきた.今後は,国際標準仕様の通信規約で系統運用者,アグリゲータ,制御機器を双方向で結び,相互運用性を確保し,確実な制御効果を上げていくことが求められる.

このような情勢のなか,本書がリソースアグリゲーションのバイブルになることは間違いない.

(発刊の辞 浅野浩志氏より)

このような方におすすめ

電力ビジネス,電力関連技術に携わる方々

主要目次

第1部 概要編

第1章 スマートグリッド

第2章 電力系統の需給バランス

第3章 仮想発電所システム

第4章 仮想発電所の構成要素

第2部 構築技術編

第5章 仮想発電所の蓄電池制御

第6章 仮想発電所の需要家設備制御

第7章 仮想発電所の性能

第8章 仮想発電所の通信構築

第9章 仮想発電所の展望