欧米先進事例に学ぶデジタル時代の電力イノベーション戦略

発行年月日:2017年11月10日
発行所:毎日新聞出版

著者:アビームコンサルティング、ガスエネルギー新聞

欧米先進事例に学ぶデジタル時代の電力イノベーション戦略の写真

本書は市場動向予測をもとに、欧米の先進ビジネス事例を多数紹介している一冊です。電力ビジネスの基礎知識とイノベーション戦略、新規ビジネスの狙い目分野が解説されています。

著者インタビュー

著者情報

山本英夫

アビームコンサルティング株式会社

ディレクター 山本英夫氏

大手都市ガス会社のエネルギーソリューション営業部門を経て、2001年、アビームコンサルティングに入社。エネルギー供給企業とエネルギー需要家の接点を専門領域として、新規イノベーションビジネスモデル、新規事業計画、営業戦略等の策定支援を多数実施。エネルギー需要家に対してもエネルギーマネジメント改善コンサルティング等のプロジェクトを多数実施している。

Q1.本書を書いたきっかけは?

2016年に電力小売自由化がスタートして約2年が経過し、国内の電力市場環境は価格面のみで競争する「価格競争」のステージから、様々な付加価値サービスと一緒に提供する「サービス競争」のステージに移行しつつあります。

その一方、既にエネルギー自由化が進展している欧米のエネルギー市場では、再生可能エネルギー、蓄電池等の分散型エネルギー資源の普及拡大や、デジタル技術の発達により、「価格競争」「サービス競争」のステージから、新たなビジネスモデルの構築による競争である「イノベーション競争」のステージへ移行しています。そのため、既に国内のいくつかのエネルギー事業者様においては将来の「イノベーション競争」への移行を想定し、新たなビジネスモデル構築に向けた検討をスタートされています。

弊社では普段より複数のエネルギー事業者様と継続的な意見交換をさせていただいておりますが、その議論の中で今後の新しいビジネスモデル構築の検討において各社共通の課題があると認識していました。それは、「欧米における先進的なビジネスモデルの話はよく聞くが、日本との市場背景の違いが理解できないため、どの程度国内で活用できるのか判断できない。」であるとか、「日本のエネルギー業界の情報は断片的で体系的に理解することが難しい。そのため、社内の関係部門間でも理解レベルが異なり、共通の課題認識で議論するのが難しい。」など、そもそもの議論の基礎になる情報が一元的に整理されていないことが原因となっていました。

今回本書を出版した理由は、この課題の解決がひとつの大きな目的となっています。つまり、従来個別に点在している国内のエネルギー市場動向に関する情報を体系化するととともに、海外の先進的なビジネスモデルについて市場背景を含めて一元的に整理することで、今後新たなビジネスモデルを構築する関係者の方々が全体像を効率的に把握できるようにすることを目的として本書の出版を企画しました。

Q2.本書で特に伝えたいことは?

既にエネルギー自由化が進展する欧米においては、「自由化」、「再エネ」、「デジタル技術」の3つの要素が基点となり、新たなビジネスモデルが創出され、エネルギー市場構造が大きく、かつ急速に変わりつつあります。

今後国内のエネルギー市場においても、欧米市場と同様に「自由化の進展」、「再生可能エネルギーの導入拡大」、および「デジタル技術普及」の3つの要因が基点となりエネルギー市場が急速に変化することが予想されます。

本書では、海外エネルギー市場の市場環境の変遷や先進事例に基づき、日本の市場においてもこれらの3つの要因が影響を与えることによって市場が変遷していく理由や、またその結果として新しいビジネスチャンスが創出される領域について俯瞰的に解説しています。そのため、本書をお読みいただくことにより短時間で今後の国内のエネルギー業界の動向や今後ビジネスチャンスが創出される事業領域についてご理解いただけると自負しています。

Q3.今後の電力業界について

今後、国内の電力業界において想定される「イノベーション競争」において電力小売事業者が生き残っていくためには、エネルギー市場において新しいビジネスモデルを構築し、展開できる人材の育成と確保が重要となると思っています。

従来、国内の電力および都市ガス業界は人材の流動性が低く、エネルギー市場に新規参入する異業種の事業者の方々からも「エネルギー業界は外部から理解しにくい。」との声もよくお聞きします。 しかし、今後エネルギー市場において新しいビジネスモデルを構築していくには、特にデジタル技術やITの知見のある異業種の方々や若い世代の方々にエネルギー業界に対して関心を持っていただき、異業種のビジネスモデルに関するアイデアや発想を活用することが重要になると思っています。

そのような視点からも、本書はエネルギー業界の方にとってだけでなく、IT業界等の異業種の方にとっても、今後のエネルギー市場を網羅的に理解できるよう工夫しています。今後、本書がきっかけとなり、エネルギー業界における人材の流動性の向上および異業種からエネルギー業界に参入する人材の増加が促進され、国内のエネルギー業界にとって画期的かつ有益な新ビジネスモデルが数多く創出されることを期待しています。