トランプ・リスク――米国第一主義と地球温暖化

発行年月日:2017年10月11日
発行所:エネルギーフォーラム

執筆者:有馬純

トランプ・リスク――米国第一主義と地球温暖化の写真

本書は、トランプ政権の内外のエネルギー・環境政策の動きとその背景、更にその影響について、わかりやすく、かつ冷静に解説された一冊です。エネルギー・環境問題は、地球レベルの課題であると同時に、各国の国益とも密接に絡んでおり、複雑な問題を多角的に捉えるヒントが散りばめられています。

著者インタビュー

有馬純の顔写真

東京大学公共政策大学院教授

有馬純氏

1959年生まれ。1982年に東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。IEA(国際エネルギー機関)、資源エネルギー庁などを経て、2015年8月より東京大学公共政策大学院教授、現職。主な著書に『精神論抜きの地球温暖化対策――パリ協定とその後』(エネルギーフォーラム)など

2015年12月、困難な交渉を経てパリ協定が合意されました。すべての国が参加する枠組みがようやく出来上がったわけですが、皮肉なことに翌年11月のパリ協定発効の直後に「パリ協定キャンセル」を標榜するドナルド・トランプ氏が米国大統領に当選しました。これが米国内のエネルギー・環境政策、更には地球温暖化防止を目指す国際的取り組みにどのような影響を与えるかを考察できればと思い、本書を執筆しました。

トランプ政権後に打ち出された政策を見ると、米国内エネルギー生産の拡大、エネルギーコストの低下に大きく軸足を置いており、オバマ政権時代の地球温暖化対策は次々に廃止・縮小されています。そしてG7サミットにおける主要国首脳からの働きかけにもかかわらず、今年6月にはパリ協定離脱を表明しました。

本書では、トランプ政権の内外のエネルギー・環境政策の動きとその背景、更にその影響について、できるだけわかりやすく、かつ冷静な解説を試みました。

地球温暖化問題は、すべての主要排出国が削減努力に取り組まなければ解決できません。世界2位の排出国である米国が地球温暖化対策に背を向けることは、さまざまな影響をもたらすことになるでしょう。同時に、米国は世界有数のエネルギー輸出大国に変貌しつつあります。同盟国であり、主要貿易相手国である日本にとって、エネルギー・環境面で「トランプのアメリカ」とどう向き合っていくかが問われています。

政権発足後、半年以上になりますが、トランプ大統領と与党である共和党との関係も盤石ではなく、政権運営が安定軌道に入ったとは言い難い状況です。しかし、エネルギー・環境政策に関する限り、トランプ大統領と共和党の方向性は完全に一致しており、少なくとも2020年までは、基本的な方向性は変わらないでしょう。

エネルギー・環境問題は、地球レベルの課題であると同時に、各国の国益とも密接に絡んでいます。本書を通じて、この複雑な問題を多角的に捉えるヒントを見つけていただければ幸いです。