環境価値取引の法務と実務
発売日:2023年11月20日
出版社:エネルギーフォーラム
非化石価値、ゼロエミ価値(CO2ゼロエミッション価値)、環境表示価値―― GX推進法をはじめとする温対法、高度化法、省エネ法などの関連法令や、RE100などの活用方法を体系的に解説。
著者情報
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
2006年に京都大学、2008年に同大法科大学院を卒業し、2009年に弁護士登録。2010年に森・濱田松本法律事務所に入所。2014年10月から2016年6月まで電力広域的運営推進機関(準備組合時代を含む)に出向。出向後は、エネルギー(電力・ガス)分野、特に環境価値取引をひとつの専門分野として、弁護士業務に従事し、発電事業者、小売電気事業者、需要家などを問わず、さまざまな事業者に対してアドバイスを行っている。また、危機管理・コンプライアンス分野の専門性も高く、エネルギー関連企業を問わず、多数の実績を有する。
解説
「環境価値」あるいは「環境価値取引」とはいっても、その背景には、さまざまな法令・制度などが存在し、また、それらが複雑に関係しており、その内容を理解することは、容易ではありません。 そのため、本書の執筆陣でもある森・濱田松本法律事務所に所属する有志の弁護士において、2021年に環境価値勉強会を立ち上げ、環境価値に対する法的あるいは制度的な分析・検討を進めてきました。その集大成が本書となります。 本書においては、環境価値取引の内容や、その背景にある法令・制度などを一気通貫に解説することを目指し、本書をお読みいただければ、環境価値取引の全体像を理解することができる内容となるように努めました。 また、環境価値取引を巡る最新の議論状況をカバーするため、できる限り、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)をはじめとする直近の法令や、ガイドラインの改正などについてもフォローするとともに、コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)などの実務的な取り組みについても解説するよう心がけています。 もっとも、環境価値取引に関連する法令や制度などについては、頻繁にその変更が行われており、現在も国の審議会などで議論中の論点も多くあります。そのため、本書は、執筆時でのスクリーンショットでの議論状況を整理したものとご理解いただければと思います。 今後、日本において、2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素電源を導入していくことが不可欠と考えられます。そのためには、より一層、環境価値取引が活性化していくことが重要です。本書が環境価値取引に取り組もうとしている関係者の一助となり、日本におけるカーボンニュートラルの実現に少しでも貢献できるのであれば幸いです。
本書の内容
- はじめに
- 1 環境価値取引が注目される背景 1.1 環境価値とは何か 1.2 環境問題に対する国際社会の動向 1.3 エネルギー分野で求められる取り組み
- 2 環境価値に関する諸法令の考え方 2.1 環境価値と諸法令 2.2 高度化法と非化石価値 2.3 温対法とゼロエミ価値 2.4 ゼロエミ価値と省エネ法
- 3 環境価値の種類 3.1 非化石証書 【コラム】FIT制度とFIP制度について 3.2 J-クレジット 3.3 グリーン電力証書 3.4 各証書等の類似点・相違点 【コラム】炭素の価格付け=カーボンプライシングとは
- 4 コーポレートPPA 4.1 コーポレートPPAとは 4.2 コーポレートPPAに関連する電気事業法の整理 4.3 コーポレートPPAの種類 4.4 オンサイトPPA 【コラム】計量法について 4.5 オフサイトPPA 4.6 バーチャルPPA
- 5 環境価値の活用方法 5.1 環境価値の活用 5.2 需要家における環境価値の活用 【コラム】RE100の参加要件 【コラム】炭素国境調整措置(CBAM)における証書やクレジットの活用可能性について 【コラム】GHGプロトコル「Scope2ガイダンス」 5.3 小売電気事業者による環境価値の活用
- 6 カーボンニュートラルに向けた新たな取り組み――GXリーグ 6.1 GXリーグの概要 6.2 GX-ETSについて 【コラム】GX推進法について
- おわりに
- 著者紹介
著者インタビュー
2020年10月、菅義偉前首相が2050年までに日本におけるカーボンニュートラルを目指すことを宣言して以降、日本における環境意識が大きく変化したように思われる。そして、それ以降、日本国内において、国や関係団体、企業などのカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが活発化し、それを実現するための手段として、環境価値取引が注目され始めている。 しかし、「環境価値」あるいは「環境価値取引」とはいっても、その背景にはさまざまな法令・制度などが存在し、また、それらが複雑に関係している。そのため、環境価値の内容を理解することは容易ではない一方、これまで環境価値取引の全体像を解説する書籍はなく、法令や審議会の解説資料などを読み解くしかなかったのが実情と思われる。 そこで筆者は、所属する森・濱田松本法律事務所の有志の弁護士を集め、勉強会を開催し、環境価値取引に関する理解を深めてきた。その集大成を書籍化したものが本書である。 本書においては、環境価値取引の内容やその背景にある法令・制度などを簡潔に整理し、環境価値取引を巡る最新の議論状況をカバーするため、できる限り、GX推進法をはじめとする直近の法令やガイドラインの改正などについてもフォローしている。また、コーポレートPPA(電力販売契約)などの実務的な取り組みについても解説し、この一冊で環境価値取引の全体像を理解することができる内容とした。そのため、現在、環境価値取引に取り組んでいる関係各位、あるいは環境価値取引に関心を持ち、今後取り組んでいこうとしている皆様には是非お読みただきたいと考えている。 もっとも、環境価値取引に関連する法令や制度などについては、頻繁にその変更が行われており、例えば、都市ガスのカーボンニュートラル化など現在も国の審議会などで議論中の論点も多い。そのため、本書は、現時点の議論状況を整理したものであって、今後も環境価値取引に関する法令や制度などの動向をフォローし続けることは必要不可欠である。筆者としても、さまざまな機会を見つけ、環境価値取引の最新状況を発信し続けたいと考えている。 今後、日本において2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギ-などをはじめとする脱炭素電源を導入していくことが不可欠であり、今後、より一層、環境価値取引が活性化していくことが重要である。本書が環境価値取引に取り組もうとしている関係者の一助となれば非常に幸いである。