IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム –

2020年6月18日
コロナ社

編著:天雨徹、共著:田中立二、大谷哲夫

IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム –の写真

変電所自動化システムの通信規格IEC 61850を理解し、スマートグリッドの実現へ。

著者情報①

中部電力パワーグリッド株式会社

天雨徹氏

技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。東京都市大学非常勤講師。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」。1962年愛知県生まれ。中部電力パワーグリッド株式会社にて電力ネットワーク系の技術戦略・開発業務に従事すると同時に大学客員准教授として学生の卒業論文、修士論文、学会発表の指導・助言を行っている。中部電力(株)工務研修所で技術系社員約3000人を対象に社員研修を実施、新入社員研修(20~25歳)、専門技術研修(25~30歳)、新任管理職研修(30~40歳)など社内の技術力向上に貢献。2012年電気学会学術振興賞、優秀技術報告賞受賞。電気学会上級会員。技術士(電気電子部門)。他に他社企業研修・講演なども自主開催。企業、学生を対象に幅広く活動している。一般社団法人日本ほめる達人協会「ほめ達!」研修特別認定講師。

著書:
『電気工学ハンドブック第 7 版』第 19 編 保護リレーと監視制御装置、 3 章 監視制御と監視制御装置の執筆を担当、(電気学会[オーム社] )(2013-9)
『保護制御システムサージ対策』(電気協同研究会)(保護制御システムのサージ対策技術専門委員会 WG1編集委員として執筆に参画)(2002-1)
『変電所に見るオープン分散制御技術 (特集 電力系統への適用進むオープン分散技術の現状と将来)』、 OHM 87(9)、 38-43、 [オーム社](2000-9)共著(天雨、佐藤)(2000-9) 『下位系変電所総合ディジタル監視制御システムの開発』、(電気現場技術[電気情報社])共著(天雨、田上)(1997-8)

関連サイト:
「天雨徹の『めざせ!年間映画鑑賞100本勝負』-せっかく観たなら感じたことを残そう-」
「いつも心は晴れ男!天雨徹のブログ 『バリの兄貴 語録』」

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著者情報②

国立研究開発法人産業技術総合研究所 客員研究員

田中立二氏

国立研究開発法人産業技術総合研究所 客員研究員、早稲田大学 招聘研究員、一般財団法人電力中央研究所 客員研究員として、スマートグリッド関係の国際標準化に従事。 1971年 早稲田大学理工学部数学科卒業、同年 ㈱東芝 重電技術研究所。2002年~2017年 ㈱東芝 電力・社会システム社。電力・産業分野の制御システムの高度化の研究・開発、および電力システム・通信の国際標準化に従事。2017年 東芝退職 現在に至る。

株式会社東芝在職中、制御用計算機システム・組込機器システムのOS、言語・コンパイラー、データベース、通信ネットワーク、AI適用故障診断、三次元グラフィック適用ロボットプログラム生成・レーザー加工機などの製品化に従事。送配電系統情報モデル、保護リレー装置組込型ネットワークコンピューティングシステム(Java/Web Server/Agent)、IEC 61850適用変電所自動化システム・保護リレー装置、プロセスバス、広域イーサネット適用送電線電流差動保護リレー・広域保護システム・系統安定化システムなどの試作・製品化に従事。
また、IEC 61850の規格化に関しては1999年よりIEC TC57 WG10にて規格作成・審議にかかわり、送電線電流差動保護、系統安定化システム、変電設備診断、BAP (Basic Application Profile)、E-Mobility (EV Smart Charging)、可変速揚水発電などについてのIEC 61850の拡張を行った。

表彰:
2002年 電機工業技術功績者表彰 会長賞「イントラネットを用いた電力系統保護システムの開発」
2008年 電気学会 電気規格調査会 功績賞「IEC TC57における標準化活動」
2016年 電気学会 論文賞「IP系汎用・標準技術を用いた広域系統監視・保護制御システムの開発と検証」

著書:
[1] オブジェクト指向データベース標準:ODMG-93(共訳)、共立出版、1995
[2] オブジェクト指向とエージェント 基礎と応用(共著)、オーム社、2001
[3] 国際標準に基づくエネルギーサービス構築の必須知識 ―電気事業者・需要家のための―(共著)、オーム社、2016
[4] IEC 61850 を適用した電力ネットワーク ―スマートグリッドを支える変電所自動化システム―(共著)、コロナ社、2020
論文、学会発表など(国内のみ海外は省略):

関連サイト:
科学技術振興機構 J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)

著者情報③

一般財団法人電力中央研究所システム技術研究所
通信システム領域リーダー・副研究参事

大谷哲夫氏

1994年、慶應義塾大学大学院計算機科学専攻修士課程修了。同年、財団法人電力中央研究所入所。2000〜2003年、在職のまま慶應義塾大学大学院開放環境科学専攻後期博士課程在籍。現在は、一般財団法人電力中央研究所システム技術研究所通信システム領域リーダー、副研究参事。博士(工学)。技術士(情報工学部門)。電気学会上級会員。IEC 61850の制定を担当するIEC TC 57 WG 10およびWG 17エキスパート。

受賞:
2002年 電気学会優秀論文発表賞「需要地系統の運用制御に対するモバイルエージェント技術の適性評価」
2005年 電気学会優秀論文発表賞「需要地系統の事故区間分離に関する運用管理システムの性能評価」
2005年 電気学会電気学術振興賞論文賞「次世代配電系統監視制御用モバイルエージェントの構成とQoS制御方式」
2010年 電気学会電子・情報・システム部門大会企画賞「情報・通信を中心としたスマートグリッド関連の国際標準化と海外動向」
2014年 電気学会電子・情報・システム部門大会企画賞「電力システムの監視制御用規格 (IEC 61850) の現状と適用事例」
2019年 電気学会電気学術振興賞論文賞「初期設定作業を省力化した変電所設備保全センサネットワーク」

関連サイト:
電力中央研究所 システム技術研究所 通信システム領域
電力中央研究所 イノベーション創発センター 研究員紹介

著者コメント:
私がIEC 61850の研究を本格的に開始したのは2009年でした。それ以来、本書の編著者である天雨様や共著者である田中様をはじめ、大変多くの方々にご支援いただきながら、IEC 61850適用方法の研究や国際標準化活動に携わってきました。そして、国内の実運用システム構築に研究成果のIEC 61850適用方法が活用され、配電自動化システムの時限順送方式を実現する論理ノード提案がIEC文書に掲載されるなど、これまでの活動が実を結んできています。現在は、熱エネルギーシステムや電気自動車充放電に関するIEC 61850の国際標準化活動に携わっており、IEC 61850がより包括的なエネルギー関連システムの国際標準となるよう、尽力する所存です。

解説/内容

変電所自動化システムのための通信規格IEC 61850を理解するためその全容を網羅。必要項目と具体例を体系的にまとめた解説書。学生から専門技術者まで、変電所自動化システムをはじめスマートグリッドに携わる方必携の一冊。

本書のコンセプトと構成/目次等

第1章では、電力ネットワークを取り巻く環境の変化として、太陽光発電の大量導入、スマートグリッド、国際標準、電力ネットワークの現状と課題について述べる。

第2章では、変電所保護制御システムの国際標準であるIEC 61850 の目的・対象・適用範囲などの概要、および論理ノード・通信サービス・エンジニアリングツール・試験仕様などの規格体系について解説する。また、変電所保護制御に必要な装置・機器の情報をモデル化したIEC 61850 の論理ノードと、それを用いた変電所保護制御システムの構成について解説する。

第3章では、変電所の計測・監視・制御・保護に必要とされるIEC 61850 の通信サービスについて解説する。また、CT/VT 瞬時値・遮断器トリップ指令の高速伝送のためのプロセスバス、および送電線電流差動保護・シンクロフェーザ適用系統観測・変電所―制御所間通信などの広域通信のためのIEC 61850 拡張標準と、これらに関係した電力システムのセキュリティ標準IEC 62351 について解説する。

第4章では、保護制御ユニットの構成を、ハードウェア、実装される保護制御機能、ソフトウェアの三つの側面から解説する。あわせて、IED の設定作業を行う際に利用するエンジニアリングツールについても説明する。

第5章では、IEC 61850 のクライアントとなるSCADA について述べる。SCADA は、変電所監視制御システムにおいても適用される。具体的には、一般的なSCADA の機能と構成について述べた後、変電所監視制御システムに適用するSCADA について説明する。

第6章では、 配電用変電所が有する保護制御機能(抜粋) を対象に、IEC 61850 を適用した場合のケーススタディを述べる。ケーススタディでは、主回路構成・保護制御機能・対応する論理ノード・IEDの仕様を想定した上で、システムの設計・試験・メンテナンスの具体例を示す。

第7章では、電力ネットワークに関する保護制御システムの今後を、IEC 61850 に関連する観点から考察する。具体的には、汎用性を確保するためのアプローチ、分散型電源・配電自動化・風力発電といった広域性の確保、エンジニアリングツールの標準化など標準化範囲の拡大に着目する。また、電力会社とメーカの役割分担やデータ活用についても考察する。

著者インタビュー

本書が変電所自動化システム設計者のみならず、これら電力ネットワークについて関心をもっておられる方々にとって、少しでも役に立つものとなれば望外の喜びです。